秤にかけたら……
大学二年生時
さて、
世の中には
『秤にかける』
という言葉が存在します。
人間が生きていれば当然のごとくに、
『優先事項』
というものが存在します。
やるべきことなどが2つ以上ある場合、
どちらが重要か『秤にかけて』、
それで優先順位をつけるわけですね。
例えば、
@彼女が東京の神楽坂まで来てほしいと言ってきた
Aその日、先客として友人が来ることになっていた。
とすれば、それを『秤にかけて』、
彼女を優先したのは私です。
ええ、昔昔のお話ですが……
さて、この秤にかけるという行為は、
結構日常的にも見られますが、
私も経験『させられた』ことがありました。
正確には私たち……ですが……
さて、
それは私が大学二年生の3月でした。
当時サークルで親しくしていた友人Sと、
その3月で卒業される先輩との3人で、
飲み会をやろうじゃないかという話になりました。
先輩が、
「卒業する前に君らとゆっくり飲みながら話をしたい」
という希望を出したので。
当然、私にとっても親友Sにとっても、
非常に重要度の高い
イベントであったことは言うまでもありません。
なんせ、
お世話になった先輩が、
「私たちと卒業前に話したい」
ということで設けた酒飲みの機会なのですから……
その飲むと決めた日の夜、
私と先輩はあらかじめ決めていた飲み屋に行きました。
しかし……
光一「さっきから連絡してるんですけど、
携帯がつながらないんですよ」
先輩「しょうがねえ、先に飲もうぜ」
親友Sが携帯にも出ず、
当然指定先の店にも来ないので、
私と先輩は二人で飲み始めました。
それが夜6時半ごろだったと思います。
先輩と私で話しながら飲んでいました。
その間も、親友Sの携帯がつながらなかったのです。
飲み始めてから1時間半ほどが経過しました。
先輩「Sはまだ来ねーのか?」
光一「さっきから携帯つながらないんですよねえ」
と、時折Sに対する愚痴が漏れつつも、
我々は酒を飲み続けていました。
そこそこに酔い始めたそのとき、私の携帯に着信音。
親友Sからでした。
光一「おい、S君。
どうしたの?
さっきから携帯つながらないし、
もう私と先輩飲み始めているよ?」
親友S『あー、光一君。ゴメン!!
いやー、今パチスロやってるんだけどさー、
すっげースロットが回ってんのよ!!
(すんごい興奮して早口でした)
めっさ当たりまくってて、
それで携帯出れなくてさあ。
つーか、今も当たってんの!!
(すごい大声で……)
だから、先輩に遅れるって言っておいて』
ツーツーツー
光一「……というようなことを言ってましたが」
先輩「アイツに全部おごらせようぜ」
と先輩が大層ご立腹の様子。
それからさらに30分ほどして、
親友Sは私と先輩が飲んでいる店にやってきました。
当然、
以前から約束していたにもかかわらず、
連絡もせずにスロットにはまって2時間も遅刻したのです。
私と先輩が怒っていないわけがない。
先輩「おい、お前さあ、
前から約束してんのに、
なんでスロットなんかやってんだよ!!」
先輩がそういうと、
親友Sは頭をかきながら、
親友S「あー、すんません。
最初3000円で終わらせるつもりだったんで、
すぐに終わると思ったんですよ。
そうしたら、すっげー当たりがきまして、
7万も当たったんですよ、結局!!
おかげで思ったより時間かかりまして」
その直後、
親友Sは頼んだジョッキを飲み干すと、
そのまますぐに突っ伏して寝てしまいました。
(何をしに来たんだお前は……)
私と先輩の愚痴が飛び交っていたのは言うまでもないです。
そうして、ここに
親友Sの「秤」
が判明したわけで。
@卒業する恩もある先輩との飲み会
Aパチスロでのスロットゲーム
を『秤にかけた』結果、
彼の中では、
パチスロ
が優先されたようです。