【姉さんはママさん】

※白金 将さんのブログ「白金家の座談会」の、姉萌え短編小説集「L sis2」1作品目。
2012年9/10以降に、ブログ内にてアップしていく内容について、寄稿してもらいました。
→「全国姉萌え同盟に寄せてに戻る」「全国姉萌え同盟TOPへ戻る
→「小説〜ストーリー一覧へ戻る
 恥ずかしい話ではあるが、自分はスナック好きである。
 食べる方ではなく、施設として存在する方のスナックだ。
 仕事で疲れた自分を癒そうと、今日も俺はとある店に入る。
「……」
「いらっしゃい……フフッ」
 やけに艶かしい声出すじゃないか、と思った矢先、俺の足が止まった。
 ろくに店の名前も見ていないからうかつだったが、今更遅い。
「ここに来るなんて珍しいわね。一杯やってく?」
「……」
 この店のママさんは、俺の姉さんなのだ。
 最近会ってなかったから忘れていたものの、スナックに勤めている。
 流石に出るのも失礼なので、今日はここに決めた。
 俺は席に座り、姉さんの方を見る。
「浮かない顔ね。私じゃダメだった?」
「別にいいよ。ジントニック頼む」
「分かったわ」
 姉さんは髪の毛が昔から赤っぽくて、それが今でも続いているのだ。
 腰まで伸びる髪は赤くて、白っぽいドレスによく映える。
 いつしか、「赤毛のママさん」と愛称が付いたらしいが。
「はい。代金はそんなに取らないわ」
「高い所は行かないよ」
「ぼったくりしてみる?」
「勘弁」
 5万円くらいしか持っていないから、一杯1万円とかをやられるとたまらん。
 だが、姉さんはそういう事には否定的らしいからとりあえず安心。
「最近どうですか? 『赤毛のママさん』」
「姉さんでいいわよ。……お客さんとは上手くやっていけてるわ」
「俺とは大違いだな」
「営業と水だから違うわよ」
 席料は1000円。だけど、いくらいてもいいのがここの特徴だ。
 姉さんの笑顔を久しぶりにじっくりと見たい気持ちもある。しばらくここにいるか。
「商品買ってくれなくてな。どうしたらいいんだか」
「無理に勧める必要はないじゃない。いらない物はいくら言われてもいらないもの」
「……心に刺さるなそれ」
「フフフ」
 俺は最近一人暮らしを始めたが、姉さんの様子はどうなんだろう。
「最近どうだ? 警察の厄介とかになってたりするかい?」
「冗談も上手いわね。せめて自衛隊とかにしなさい」
「そこまで規模でかくなるのか」
「……最近は一人暮らし始めて、この辺りに家はあるわ。今夜来る?」
 姉さんは俺の方を見て、まるで逆ナンするかのように言った。
 他のお客さんはいないかと店内を見るが、誰もいない。
「店空けて大丈夫なのか?」
「今日は早く閉める日なのよ。いくら私でも夜ずっとこれは疲れるわ」
「……だが席料があるしな。まぁ一時間はここにいるよ」



 ジントニックがなくなった頃、ちょうど一時間が経とうとしていた。
 店も閉店時間になり、着替えた姉さんと一緒に俺は繁華街へ出る。
 姉さんはピンクのシャツに白い上着を着ていた。
 下の方はホットパンツに黒タイツと、一定層に受けがいい感じだ。
「何か飲みたい酒はあるかしら?」
「ジントニックだけで十分。他はあまり好きじゃない」
 俺がそう言うと、姉さんはくすくすと笑った。
 不思議に思って姉さんの方を見ると、姉さんはこう言う。
「大人になったのね。子供の頃はあんなに無邪気だったのに」
「いろいろ社会で学んだんだよ」
「子供の頃に戻りたいわね……あの頃は、ずっと一緒だったわ」
 姉さんの目は遠い所を眺めていた。
 気がつくと、もう既に姉さんの家に着いている。



 姉さんの家の中はとても綺麗だった。
 棚からビンを取り出しながら、俺は持って来たお菓子をテーブルに置く。
「私の好きなもの、覚えててくれたのね」
「忘れるわけ無いだろ」
 姉さんはポッキーを口にしながら楽しそうに笑った。
 しかし、姉さんも見ない間に大分綺麗になったものだな。
「彼女出来たの?」
「いねぇよ」
「私も彼氏はいないのよね」
 姉さんは俺の方を見ながら、ジントニックを口に運ぶ。
 何だか姉さんが酔ってきたのか。少し口調がおかしいぞ。
「今日は泊まってく?」
「……遠慮しとくy」
「いいのよ? 別に私と一緒に寝たって」
 まずい。姉さんの目が徐々におかしくなってきている。
 これでは大変な事になってしまう。何としてでもそれは止めないと。
「寝るだけだぞ」
「フフ。そう言ってくれて嬉しいわ」
 寝るだけならいいんだよな。寝るだけなら。



 とは言ったものの、やはり自分の姉だった。
 寝るだけだったはずなのに、何故か下着姿になっている。何故だ。何故。
「……」
「……ぁ」
 姉の可愛い声が隣から聞こえてくる。
 流石にこのままだと眠れないのか、俺は姉さんに背中を向けた。
 すると今度は姉さんが背中に抱きついてくる。
「……」
「んっ……」
 何だか余計に寝れなくなってしまった。



 朝、俺が目を覚ますと姉さんは朝食を作っていた。
「おはよう」
「おはよう、姉さん」
 今日は平日だから会社に出勤しなければいけない。
 姉さんともっといたい気持ちがあるが、お預けだ。
「夜になったら、またあそこに来る?」
「考えとく」
「それとも、あなたの家に引越しちゃおうかしら?」
 家に来るのか? ……嬉しいけれど、姉さんが前にいるから素直になれん。
 意地悪そうに笑う目が、俺の頭の中でどんと居座ってしまう。はぁ。

【姉さんはママさん】

※白金 将さんのブログ「白金家の座談会」の、姉萌え短編小説集「L sis2」1作品目。
2012年9/10以降に、ブログ内にてアップしていく内容について、寄稿してもらいました。
→「全国姉萌え同盟に寄せてに戻る」「全国姉萌え同盟TOPへ戻る
→「小説〜ストーリー一覧へ戻る

TOPへ戻る