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光一
「私はね、常日頃思うのだよ。
料理はシンプル・イズ・ベスト!
であると…………」 |
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鳴島
「ふむふむ」 |
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光一
「例えばね、
ホットケーキは焼くだけのスタイル。
これが最も完成された姿なんだ……。
フルーツやヨーグルト、ジュースなんて、
絶対に入れてはならない」 |
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鳴島
「素人の浅知恵は危険ですからねぇ♪」 |
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光一
「そうだ!!
ポテトにケチャップ単純じゃん!
これは間違っている。
単純ゆえ、究極に完成しているのだ!」 |
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鳴島
「ですねぇ♪」 |
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光一
「なのに、
ケチャップ・ソース、みりんにコショウ。
挙句は卵黄まで加えた調味料を作り、
それをかけるなど、言語道断!!」 |
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鳴島
「すごくマズそう…………」 |
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光一
「よって、
料理はレシピを守ること!
素人がレールを外れるなど、
まさに愚考であり愚行と言えよう!」 |
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鳴島
「よく分かりますぅ♪
マスターのお料理講座……
心に迫るものがありましたぁ」 |
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光一
「お、珍しい!
私の話にきっちり耳を傾けてくれるとは」 |
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鳴島
「いやぁ〜、
マスターのお言葉……
ものすごい魂がこもっていましたぁ」 |
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光一
「ふ…………
それもそのはずだ。
私はこの喫茶店のマスターだぞ!
料理にこだわりのある男だぞ!
話も自然と熱くなり、
また経験に基づくというもの……」 |
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鳴島
「うんうん♪」 |
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光一
「いいかね、綾香君。
料理はレシピが重要。
次に経験からくる腕だ。
そこに材料・愛情が続くのだよ」 |
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鳴島
「そうですねぇ♪
マスターの失敗談からして、
まさしくその通り!!」 |
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光一
「…………ん?」 |
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鳴島
「さっきまでの失敗談……
全部マスターの失敗談ですもんねぇ♪」 |
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光一
「!?
な、何を証拠に言うのかね!」 |
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鳴島
「コレ…………」 |
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光一
「ああっ!
人の部屋から勝手に持ち出して!」 |
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鳴島
「マスターの日記に、
そのままの失敗談がありましたねぇ♪」 |
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光一
「むぅぅぅぅ…………」 |
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鳴島
「なんと言いますかぁ……」 |
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光一
「な、何だね!!
言いたいことがあるなら、
はっきり言ってみてはどうかね!」 |
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鳴島
「いいんですかぁ?」 |
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光一
「目の前で、
何か言いたそうな顔されると、
こっちが気持ち悪い」 |
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鳴島
「じゃあ……言いますけどぉ、
怒らないでくださいよぉ」 |
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光一
「うむ。
約束しよう」 |
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鳴島
「では…………
お言葉に甘えまして」 |
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光一
「うむ!」 |
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鳴島
「にゃはははは!!!」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「ポテトにかける調味料自作?
ケチャップとソースだけならまだしも、
みりんと卵黄ですかぁ!?
うにゃははははは!!」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「挙句、ホットケーキに、
フルーツ、ヨーグルトにジュース!?
そんなの混ぜて焼くなんて……
ぷぷぷぷぷぷ!!」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「そんな失敗を、
10数回も!?
もうこれはアレですね!!」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「結論!!
マスターは大バカさんですぅ!
にゃはははははは〜!」 |
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光一
「……………………
言いたい事は以上かね?」 |
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鳴島
「は〜い♪
あ〜、すっきりしたですぅ。
まったくもう、
人を笑い死にさせるつもりですかぁ?」 |
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光一
「さて…………
私からも綾香君に言うことがある」 |
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鳴島
「あ、あれ!?
もしかして怒ってる?
マスター、怒ってますかぁ?」 |
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光一
「いいや、全然。
これっぽちも怒ってないよ♪」 |
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鳴島
「ふ〜、そうですかぁ。
よかったぁ♪」 |
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光一
「で、話なんだけど……。
綾香君…………
今月、減給ね♪」 |
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鳴島
「ふぇ!?」 |
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光一
「げ・ん・きゅ・う♪」 |
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鳴島
「ややや、やっぱり、
怒ってるぅ!?
マスター怒ってますぅ?」 |
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光一
「いやぁ、
だから全然怒ってないよぉ?」 |
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鳴島
「だって…………
減給って言いました?
言いましたよねぇ?」 |
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光一
「うん。
言ったよ♪」 |
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鳴島
「怒ってますかぁ?」 |
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光一
「全然♪」 |
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鳴島
「じゃあ…………
何で減給ですかぁ?
何が悪かったんですかぁ?」 |
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光一
「そうだねえ…………
しいて言えば」 |
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鳴島
「言えばぁ?」 |
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光一
「こうして勤務中に、
私と無駄話しているような、
そんな勤務態度かねぇ?」 |
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鳴島
「やっぱり怒ってる!?」 |