前準備
さて、教育実習=仕事と考えていただければ、当然その準備も入念にすることになります。
考えればわかることですが、授業を受けている生徒からすれば、「実習生だろうと教員だろうと授業を行う人間である」という観点は変わらないわけです。
また、教職員にしてみても、「限られた授業日数の中の数週間分を実習生に任せる」ということになるのです。
そうであれば、実習をさせてもらう身としては十分すぎるほどの準備をしても、全く足りないことになります。
さて、前準備というのは何を指して前準備かということをはっきりさせておきましょう。
前準備とは、「教育実習開始前までに済ませておくべき準備事項」として定義しておきます。
これを十分に済ませていないと、実習の際に自分が困るのはもちろんのこと、教職員・生徒・他の実習生に多大な迷惑をかけることとなります。
さて、それでは事前の準備としては何があるのかをまずは列挙してみましょう。
- 通勤手段・時間帯の確認
- 学校側との事前打ち合わせ
- 実習校の要項確認
- 授業準備
おそらく事前準備段階としては、上記の4項目に含まれるものが該当すると思われます。
1、通勤手段・時間帯の確認(遅刻など、どのような場合でも論外である)
これは、社会人としてほぼ常識の確認事項です。
実習校には恐らく午前8時ごろまでに到着しているように言われると思います。他の教職員と同じように登校するわけですから。
そうした場合、「実習校」への通勤手段は何が最適かという問題があります。
実習先によっては、車での通勤を許されない場合もあります。とすると、電車と徒歩で何分かかるか? バスでは? 自転車では? 雨の日はどうする? どの時間に出発するのが妥当か?
全て事前に把握しておくことが必要です。そのような把握をしていないがために、遅刻するなどといったことは認められません。実習生はまだ「大学生」という身分です。大学生は遅刻も平気でする方が多いでしょう。バイトでも時間にルーズな方はいませんか?
しかし、実習現場は「学校」という教育機関です。生徒の範たることを常に求められる教職員は、当然そのような把握不足での遅刻など論外です。これは、就職をすればどのような企業であろうと同じことですが。
であれば、「実習=仕事」であることは、大学生である実習生も、社会人としての扱いを受けることです。把握不足での遅刻など論外です。実習前にきっちり確認をしておきましょう。
「私は大学生なんだ」などという「甘え」は持たないでください。実習生は「あくまで社会人」です。
2、学校側との事前打ち合わせ(社会人は仕事の先読みをして行動しなくてはいけない)
これは、学校側でも「実習生オリエンテーション」などを組んで、「心構え・日程などなど」の説明をしてくれるとは思います。
しかし、それは実習生全体への共通事項の説明です。
実習生はそれぞれ「社会科」「国語科」などなどの分類に属し、それぞれの教科・学年を受け持つこととなります。
とすると、自分の担当するクラスの教員、担当する教科の教員と入念な打ち合わせをする必要があります。
つまり、私の場合を例に挙げれば、
1、私は「高等学校」で「日本史」を「1年生」に教える。担当するクラスは1年●組である。
2、それぞれの担当してくださる教員は「●●教諭」と「△△教諭」である。
3、日程を見ると、実習開始の前週までは「中間考査」、実習の最後の週に「文化祭」がある。
4、そうすると、その間で実習をするのだから、「中間考査」に関する質問、「文化祭」に関する質問をしなければならない。
5、さて、私は教科では「日本史」を教える。
6、どの教科書と資料に基づいて、この学校は授業をするのか?
7、私はどこからどこまでを範囲として教えることになるか?
8、一クラスあたり、何回授業を行うか?
9、指導要領の作成は、どのような形式で行うか?
まあ、その他も色々質問すべき点が出てきます。
要するに社会人というものは、「自分が担当する仕事はこれである、では、それには何が必要か?」それを自分で考え実行する必要があります。その過程で出る質問を職場の方にしなくてはいけません。それが実習生の場合は受け持ちの担当教員です。
社会人は自分で判断し行動することが求められるのです。誰も、何も言わなければ自分の手伝いをしてくれません。また、何も考えを持っていなければ、他の人も手伝いようがありませんし、何も考えていない人は最低の人間とみなされます。常に先を考えて行動しなくてはいけない。それは自分の作業であり、状況を見て考える。そうして、行動をしなくては事態は悪化していく一方です。単なる「歯車」であることは許されません。しかも、自分のミスは他人を否応なしに巻き込みます。
実習で何が必要となるか、何をするべきかを担当教員と話し合う必要があります。そうでないと、何をしていいのか分からないでしょう? しかし、話し合いをするためには、こちらも心構えとして「自分は何を行うべき人間なのか?」ということを考えておく必要があるのです。
それは、社会人として仕事をする際のマナーでもあります。
このようなことをわざわざ書くのは、「自分は大学生だし」といった考えを持つ実習生があまりにも多いこと。また、自分の行動に無責任な大学生が、その感覚で社会に入ってくることへの裏返しなのです。そうでなければ、このような常識をくどくど並べはしません。
3、実習校の要項確認(企業にもあるように、学校にもそれぞれルールがある)
さて、それぞれの学校ごとに、学校の方針などがあります。これは、進学校、専門校などなどで違うでしょう。
教員になる以上は、生徒と違い、その学校の方針に遵守する必要があります。
そのため、その学校は「どういう気質であり、どういう方向性の学校なのか?」ということを、事前に把握する必要があります。
おそらく、オリエンテーションなどの機会に、学校側の方針は示されているはずです。
学校の要項は、自分が思っている以上に厳しいものかもしれませんよ。
4、授業準備(仕事<授業>の準備もしない人間は、社会人<実習生>の資格がない)
さて、担当教員との入念な話し合いも行った。教科書や資料も手に入れた。
そこまで来たならば、担当する範囲の入念な授業準備が必要でしょう。
実習生の場合は特に、最大の仕事は「授業」です。他にも色々やりますが、実習を控えた人が一番気にするのもこの点でしょう。
「仕事」は優先順位をつけて処理しなくてはいけません。ならば、もっとも準備すべきは授業であることは明白ですね。
私は、「高等学校2種免許」を「地理歴史科」で持っています。
つまり、教育実習時には「世界史・日本史・地理」のいずれかを授業として行ったわけです。
人によっては「私は世界史を大学で勉強している。実習は世界史でやりたい。教員になってからも!!」
そういう方もいるでしょうが、免許が「地理歴史科」である以上、教員として採用された際は、「上記の3つ全ての授業」を行うことになるでしょう。実習の際も、希望の科目で授業ができるとは限りません。
私は西洋史学を専門に大学で勉強していました。高校時代にも世界史を受けていました。
しかし、学校側の都合により、「日本史」の実習をすることとなりました。
私は、一度も日本史にタッチしたことがありませんでした。
それゆえに、余計に入念な勉強が必要になりました。
教科書と資料を何度も読み返し、さらには参考書を何冊も買って勉強しました。
その上で、「授業を受ける生徒たちに、わかりやすく的確に教えるためにどうするか?」と悩むことになりました。
そうです。私は「受験」のために勉強をしているわけではありません。「生徒に教えるために勉強している」のです。そこを常に念頭においてください。
そうであれば、単に勉強するだけでは済まされません。その情報をいかに相手に伝えるのか?
しかも、そこには制限時間もあり、様々な個性を持ったたくさんの生徒を相手にするという点では家庭教師や塾講師とも異なる。
そのため、何回も授業ノートを作成し、デモンストレーションもしました。
これは、教育実習が始まる前の話です。
実習が始まってからは、その事前の積み重ねが非常に自分の助けとなりました。
しかし、それでもまだまだ私の考えは「机上の空論」だった部分もあったのです。
実際に、生徒を前に授業をすると、全く現実は違うものであると認識せざるをえなくなります。
それだからこそ、十分な事前準備を実習前に済ませておかないと、実習は苦しいものとなるはずです。
次回からは、実習が始まってからの話をアップしていきます。
コンテンツ |
●教育実習に関して |
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