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鳴島
「マスター、ただいま戻りましたぁ!」 |
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光一
「おかえり。お疲れ様。
まだ売ってた?」 |
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鳴島
「はい。足りない材料は全部揃いましたよぉ」 |
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光一
「おお、ありがとう」 |
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鳴島
「じゃあ、ホールの仕事戻りまーす!」 |
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光一
「ん……あ、綾香君ちょっと待って」 |
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鳴島
「なんですかぁ?」 |
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光一
「領収書は?」 |
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鳴島
「え? お釣りは袋の中にありますよねぇ。
一緒にありませんかぁ?」 |
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光一
「ないんだけど…………」 |
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鳴島
「…………あれ?」 |
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光一
「綾香君……領収書切ってもらうの忘れた?」 |
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鳴島
「そんなはずはぁ……あれぇ?
あれ? どうだったかなぁ……」 |
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光一
「おーい……ほんの20分かそこら前の事だろ。
切ってもらったの? どうなの?」 |
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鳴島
「あれー……記憶があいまい……
領収書もらうの忘れていたかもですねぇ」 |
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光一
「おいおい……しっかりしてくれよ。
肝心なところで間が抜けているんだから、君は」 |
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鳴島
「私、マヌケじゃないもん!」 |
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光一
「これをマヌケと呼ばずにどう呼べと……」 |
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鳴島
「忘れっぽいだけだもん……」 |
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光一
「そんな低次元で言い換えてどうするかね」 |
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鳴島
「マスターだってマヌケなところあるクセにぃ」 |
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光一
「何の話かね?」 |
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鳴島
「取引先で必要なソフトを事務所に忘れてくるわ。
取りに戻る途中で雨に降られてズブ濡れ……
挙句、事務所のカードキーを取引先に忘れるわ……
マスターの場合、マヌケとタイミングの悪さ……
両方ある時点で私以上じゃないですかぁ」 |
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光一
「そんな1年も前の話を蒸し返さないでくれたまえ!
というか、私はそんなミスはまず滅多にしないし、
しょっちゅうミスだらけの君に言われたくないわ!」 |
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鳴島
「ま、まるで私がバカみたいな言い方!?」 |
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光一
「いや、だってバカだろ事実として。
というか、ミスをしておきながら、
謝罪もせずに雇用主を批判するとは何事かね!」 |
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鳴島
「むぎゅぅぅぅん…………」 |
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光一
「まったく……やれやれ。
…………って、あれ?」 |
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鳴島
「まだ何かぁ?」 |
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光一
「私、卵買ってきてって言ったよね?」 |
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鳴島
「買ってきてあるじゃないですかぁ♪」 |
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光一
「確かに……卵は入っているな……」 |
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鳴島
「じゃあ、問題ないですよねぇ?」 |
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光一
「綾香君、何で卵買いに行ってもらったかわかる?」 |
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鳴島
「セットメニューの卵焼き作るからですねぇ♪」 |
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光一
「卵焼き作るのにさ、卵を使うよね」 |
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鳴島
「使いますねぇ♪」 |
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光一
「君は…………
うずらの卵で卵焼きを焼けと?」 |
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鳴島
「うずらの卵!?」 |
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光一
「ほれ、よく見てみ。
どう見てもこのサイズはうずらの卵……」 |
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鳴島
「斬新な卵焼きになりますね、マスター!」 |
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光一
「どこまでマヌケなのかね……君は……
斬新なって……これでセットメニュー出したら、
メニュー表記と違うでしょうがぁ!!」 |
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鳴島
「ひゃぅん!!」 |
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光一
「たく……さっさと買いなおしてきなさい!!
領収書も忘れずに!!」 |
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鳴島
「えー……また買いに行くんですかぁ……
マスターの鬼!!」 |
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光一
「鬼って…………
いいから、買いに行ってくる!」 |
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鳴島
「はぁーい…………」 |
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光一
「まったくやれやれ…………
肝心なところでマヌケというか何というか……」 |
20分後…………
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光一
「お、もう戻ってきたの?
思ったより早いね」 |
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鳴島
「財布忘れていましたぁ…………」 |
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光一
「……………………」 |