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光一
「おはよう、綾香君」 |
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鳴島
「はあ」 |
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光一
「人がおはようと言ったのに、
『はあ』
とは何かね?
君は挨拶も返せないのかね!?」 |
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鳴島
「あ、表情間違えました。
おはよですぅ」 |
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光一
「……………………
挨拶しようという気持ちが
カケラも感じられないのだが」 |
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鳴島
「それはぁ…………
仕方がありません。
自覚のないマスターには、
これで十分ですぅ」 |
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光一
「何の話かね?」 |
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鳴島
「今日のマスターの日記ですよう」 |
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光一
「私の日記?」 |
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鳴島
「ですよう」 |
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光一
「ビジネスホテルが、
宿泊する大人を
大人として信用していない……
という内容だが……」 |
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鳴島
「ですねぇ」 |
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光一
「それでどうして、
私が君に散々言われねばならん?」 |
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鳴島
「もう…………
本当に自覚がないですねぇ」 |
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光一
「自覚も何も…………
今日の日記のどこにも、
私が責められる要素は無いではないか」 |
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鳴島
「はあ…………」 |
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光一
「すまんが、
日本人に分かるように、
君の態度を説明してくれんかね?」 |
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鳴島
「やれやれですねぇ……」 |
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光一
「……………………
あんまり聞き分けが悪いと、
君の雇用主は
女の子もグーで殴ります」 |
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鳴島
「わ、わかりましたよう!!」 |
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光一
「で、私に自覚がないとは?」 |
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鳴島
「マスターの日記の内容をかいつまむと、
『1、ビジネスホテルは大人しか泊まらない』
『2、大人は良識がある』
『3、そこでトイレの便器にある注意書き』
『4、ホースで便器に水をかける』
『5、便器で足を伸ばして眠る』
『6、上記の事をしないように』
『7、どこの大人がやるんだ?』
『8、バカにしているのか?』
という内容ですよねぇ?」 |
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光一
「ま、そうだな。
最近の大人は
子供過ぎるということかね?
まったく…………」 |
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鳴島
「お!!
な〜んだ……
自覚あるんですねぇ♪」 |
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光一
「はあ?」 |
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鳴島
「あれぇ?
違うんですかぁ?」 |
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光一
「何が?」 |
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鳴島
「マスター御自分で、
『最近の大人は
子供過ぎるということかね?』
って言ったじゃないですかぁ?」 |
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光一
「……………………
何が言いたいのかね?」 |
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鳴島
「ズバリ!!
マスターは年は大人でも、
中身は子供!!
だから当然ッ!!
信用されてないんですよぉ♪
って言おうと…………」 |
ゴン!!
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鳴島
「むみゃぁ!?」 |
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光一
「人の話は最後まで聞こう。
私は、
『最近の大人は
子供過ぎるということかね?』
の後に、
『まったく……そんな大人は少数だ』
って言おうとしたんだ!!」 |
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鳴島
「グーで頭叩かなくたって
良いじゃないですかぁ!
おバカになったら
一体どうするんですかぁ?」 |
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光一
「安心したまえ。
それ以上バカになることはない。
ゼロより下がるわけがないだろ?
0点より下はないんだよ、綾香君」 |
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鳴島
「マスターひどぃ…………」 |
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光一
「私は年も中身も大人だ。
まったく……名誉毀損だよ、君」 |
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鳴島
「うぐぅぅぅ……頭痛い……
女の子思いっきり殴るなんて……
マスターのバカァ!!
オタンコナス!!
変態! スケベ!
セクハラ店長!!
とにかく、バカバカバカ!
アホー!!!!
死んじゃえー!!
マスターのお母さんデーベソ!
マスターなんて地獄行きですぅ!」 |
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光一
「……………………
さっきの君の発言ではないが……
子供だという自覚がないのは、
むしろ君のほうだろ……」 |