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鳴島
「マースタ♪」 |
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光一
「おお、綾香君。
おはよう」 |
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鳴島
「近日中にマスターが、
亡くなられるという話はぁ、
どうなっているんですかぁ?」 |
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光一
「……………………
………………は!?」 |
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鳴島
「あれ?」 |
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光一
「いや、
今君さ、何て言ったの?」 |
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鳴島
「いや、近日中にマスターが
亡くなるとかどーとか?」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「いきなりマスターがポックリ逝って、
このカフェが潰れると
私の給料はどうなるですかぁ?」 |
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光一
「いや、その場合は
当然給料も無くなるんじゃないの?」 |
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鳴島
「うわ!?
亡くなる前に、せめて……
6か月分の給料を用意しておいてください。
それで、しばらく食いつなぎますから」 |
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光一
「だから、何で私が死ぬ話前提!!」 |
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鳴島
「んぅ?
そんな話が出ていますよねぇ?
備えあれば憂いなし」 |
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光一
「出ているも何も、
聞いたこともないぞ!!」 |
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鳴島
「あれ?」 |
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光一
「確かに私はよく体調崩すし、
健康体とはいえないが……とはいえ、
死ぬほどの状態でもないのだが?」 |
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鳴島
「あれれ?」 |
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光一
「そもそも、失礼な!!
なんで、私の死ぬだのと言った話を……」 |
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鳴島
「だってぇ、
私にも生活あるもん」 |
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光一
「まあ、それ以前の話でだ……」 |
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鳴島
「はぃ?」 |
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光一
「綾香君、頭出して」 |
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鳴島
「なんでですかぁ?」 |
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光一
「いいから、いいから」 |
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鳴島
「もしかしてぇ…………
普段頑張って働いている私を
良い子良い子してくれるですかぁ?」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「みぎゃぁぁぁ!!
地味に地味に痛いですぅ!!」 |
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光一
「君さ、一番最初に……
『亡くなられるという話はぁ』って、
…………思いっっっきり
良い笑顔で言いやがったねぇ!」 |
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鳴島
「みぎぃぃぃぃ!!
こめかみグリグリは
地味に痛いですよぉぉ!!」 |
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光一
「ったく……とんでもない娘だ」 |
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鳴島
「うぅ……痛かったぁ……」 |
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光一
「少しは反省しなさい!」 |
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鳴島
「はぁ〜い…………」 |
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光一
「というか…………
25歳の女が……」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「もとい、20歳の女が…………
『良い子良い子してくれるですかぁ?』
って、頭差し出してくるか?
ものすごく……アホな娘みたいだぞ?」 |
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鳴島
「アホじゃないもん!
幾つになっても誉められたいもん」 |
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光一
「まあ、いいや。
で、私が死ぬだのどーだのって話。
どこから出ているのかね?」 |
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鳴島
「え?
マスター自身で言ってませんでしたかぁ?」 |
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光一
「は?
私自身で?」 |
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鳴島
「今日の日記で…………
『頭痛がずーっと続く』
『肝臓に異常値』
『居眠り運転』とかとか……」 |
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光一
「いや、確かにそれらは事実だが……
別に死ぬとは一言も…………
ショックを受けたのも事実だが」 |
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鳴島
「職場のK先生に至ってはぁ、
『さよなら会開かなきゃ♪』
って張り切られていましたねぇ♪」 |
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光一
「あれは完全にK先生の暴言!
私は死にません! 僕は死にません!」 |
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鳴島
「じゃあ、その往年の名台詞通り……
道に飛び出して、
トラックにはねられるかどうか……
マスターの運命を試してみては?」 |
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光一
「セリフは確かに被ったが……
何であのドラマの再現を、
自分自身の身でやらねばならんのかね!
あれ、本当にやったら死ぬって!」 |
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鳴島
「それで死なないくらいの運があれば、
マスターも長生きするのではぁ?」 |
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光一
「…………君さ?」 |
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鳴島
「はい?」 |
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光一
「私に
莫大な保険金とか…………
……かけてないよね?」 |
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鳴島
「あはは♪
まっさかぁ〜♪
…………ドガン!!」 |
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光一
「何? 何さ今の音!?
今心の中で、君は何を私に当てた!」 |
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鳴島
「では、仕事に戻りますぅ♪」 |
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光一
「うぉぃ!!
ちょっと待てえぃ!!」 |