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光一
「あぁ……眠い……」 |
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鳴島
「マスター、
おはようございますぅ♪」 |
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光一
「おはよう、綾香君」 |
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鳴島
「おやぁ?
眠たそうですねぇ」 |
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光一
「うーん…………
このところどうにも疲れがとれなくてね」 |
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鳴島
「じゃあ、
たまにはお店休まれてはぁ?」 |
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光一
「いや、なかなかそういうわけにも」 |
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鳴島
「私は仕事休めると嬉しい!」 |
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光一
「って、
単に君が休みたいだけかね」 |
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鳴島
「あ、いやいやいや。
マスターの身体を思っての事ですよぉ」 |
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光一
「……………………
嘘がつけないのが、君の美徳かねえ」 |
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鳴島
「お!?
美しいとか誉められた♪
まぁ、肌も瑞々しい美女ですからぁ」 |
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光一
「誰も容姿のことなんて言ってない」 |
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鳴島
「いやいや、
心が美しいから、外見も♪」 |
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光一
「そのずうずうしさは…………
美徳でもあり、欠点でもあるね」 |
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鳴島
「むぅ、ずうずうしいだなんて。
失礼しちゃうなあ」 |
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光一
「少しは謙虚さというものを持ちたまえ」 |
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鳴島
「マスターよりは…………
まだ私の方がぁ…………」 |
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光一
「ちょっと聞き捨てならんね。
私は君のようなずうずうしさは持ってないぞ」 |
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鳴島
「そぉーかなぁ…………」 |
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光一
「私はいちいち、
自分の長所だなんだと、
人に披歴などせんよ」 |
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鳴島
「私だってぇ、
自分が美女だとか、
スタイル良いとか…………
いちいち人に言いませんよぉ」 |
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光一
「……………………
思いっきり言ってるではないかね」 |
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鳴島
「いつ?」 |
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光一
「いや……自分の長所披歴しないと言いつつ、
さらりと流すように言ったでしょ?
ものすごい自然体で言っていたよ」 |
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鳴島
「うー…………」 |
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光一
「君ももう少し謙虚さを学びたまえ。
そうすれば、周りの評価もきっと上がるだろう。
元の素材は良いわけだからね」 |
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鳴島
「はぁーい」 |
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光一
「さーて…………
今日も眠いが仕事を頑張るかねえ」 |
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鳴島
「でも、マスター?」 |
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光一
「ん? なんだね?」 |
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鳴島
「さっき『謙虚さを学べ』だの
『君は世界三大美人級』だの
『君はずうずうしい』だのと……
『元の素材は良い美人』だの
色々言われていましたけどぉ」 |
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光一
「…………何かひっかかるが、
うむ、言っていたね」 |
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鳴島
「それって、
マスターにも一因ありますよぉ」 |
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光一
「なんで、私が!?」 |
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鳴島
「だってぇ…………
マスター今日の日記でぇ
『自分の頑張る姿に感銘を』とかぁ、
『自分の姿勢が人に伝わる』とかぁ……
御自分の姿勢がいかに素晴らしいか
連呼しまくっていますよねぇ?」 |
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光一
「む!?」 |
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鳴島
「私に色々言われていましたけどぉ、
マスター自身にも
謙虚さって足りないと思いますぅ」 |
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光一
「いや、待て!!
私は現実問題として、
事実はそうだろうということを、
ただ粛々と言っているだけではないかね」 |
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鳴島
「とか言っている割にはぁ、
『なんで、そんな自分に
全国の女性からメールが来ない?』
なんてことを、
ぬけぬけと言ってますよねぇ?」 |
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光一
「いや、頑張る男の姿に
メロメロになっちゃう人ってのも……
いるんじゃない?」 |
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鳴島
「まぁ、百万歩譲ってですよぉ、
私が謙虚でないとして……」 |
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光一
「そこまで譲らなくても、
君は充分ずうずうしいよ」 |
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鳴島
「でもそれってですよぉ、
マスターの日記の言を借りれば
『教員の背中を見て
生徒が動くわけではないのか』
ってこの言を…………」 |
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鳴島
「『マスターの背中を見て、
綾香がこうなったんだ』
と読み替えることもできますよねぇ♪」 |
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光一
「ちょっと待て!!
つまりアレか?
君がずうずうしいのは、
雇い主の私がずうずうしいからとでも?」 |
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鳴島
「え? そうじゃないですかぁ?
マスターのそういう姿勢に、
私が単に感化されただけでぇ、
私は被害者なんじゃないかと?
私は被害者なんじゃないかと?」 |
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光一
「2度も言わなくていい!!
そーいうのを人のせいにしない!
君の性格形成に、私は絡んでいないぞ!
別に君の親とかではないんだから」 |
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鳴島
「いや、まあ良かったじゃないですかぁ♪
『自分の姿勢が他人に伝わってる?』
って疑問に感じていたようですしね。
私にはちゃんと伝わっていましたねぇ♪」 |
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光一
「そんな点が伝わっているって言われても、
まったく嬉しくないわ!!」 |