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光一
「うーん…………」 |
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鳴島
「マスター
おはようございますぅ♪」 |
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光一
「ああ、おはよう。
今日は遅刻しなかったようだね」 |
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鳴島
「あ、当たり前じゃないですかぁ!!
人を遅刻魔みたいに言わないで下さい」 |
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光一
「そう言いながら、先日は実に
6時間ほどの大遅刻
をやらかしてくれたではないかね?」 |
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鳴島
「まぁ、そういう日もありますよぉ」 |
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光一
「……11時からのランチタイム……
そうして、3時からのティータイム。
実に忙しい時間を
たったの1人で切り盛りしてしまったよ」 |
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鳴島
「はは…………」 |
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光一
「まったく、やれやれ」 |
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鳴島
「あれ?
何を見てらっしゃるんですかぁ?」 |
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光一
「店の帳簿だけど?」 |
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鳴島
「私の給料は大丈夫ですかぁ!?」 |
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光一
「真っ先に聞くのが自分の給料かね。
…………問題なく払えますよ」 |
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鳴島
「あ、それなら良かったぁ♪」 |
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光一
「で、帳簿を見ていて思ったのよ」 |
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鳴島
「はい?」 |
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光一
「綾香君はウチでね、
月当たり22日働いているわけ」 |
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鳴島
「そうですねぇ」 |
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光一
「それで、基本給は22万円。
残業含めて23〜24万円だ」 |
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鳴島
「ですねぇ♪」 |
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光一
「来月からカットしていい?」 |
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鳴島
「な!?
なんでですかぁ!?」 |
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光一
「先日のこともあって色々。
計算していたらさ……
月平均の遅刻時間数が……
22時間くらい…………」 |
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鳴島
「あれぇ?
そんなにぃ? またまたぁ♪」 |
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光一
「そこから計算するとだね……
1日平均10時間勤務で、
1割の時間を遅刻しているので……
給料を1割下げても良いのではないかな?」 |
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鳴島
「いやですよぉ!!
給料下がるなんてイヤですよぉ!」 |
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光一
「だって、実際1割の時間が遅刻だし……」 |
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鳴島
「そ、それはこう考えてみては?」 |
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光一
「どう考えるのかね?」 |
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鳴島
「私はシエスタの時間を使わずに、
ずっと働いているわけで……
シエスタ分を遅刻していると!」 |
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光一
「……昼休みを含めて、
1日1時間の休憩は与えているがね」 |
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鳴島
「でもでも、
お昼寝とかしてないです!」 |
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光一
「当たり前だ!! そもそも、
シエスタなんて日本にない!」 |
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鳴島
「日本人は働きすぎなんですよぉ。
シエスタの時間を導入して、
ゆっくり休みながら働くべきですぅ」 |
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光一
「確かに日本人は働きすぎだし、
どう考えても労働時間を短縮すべき。
でも、シエスタ導入しているスペイン人とかが
まったく働いていないわけではない!!」 |
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鳴島
「な〜んで、日本にはシエスタがないですかぁ。
いや、むしろこのカフェには…………
マスターがケチだから?
マスターのケチンボ」 |
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光一
「シエスタがあるスペインは
日中が暑いの! 仕事にならないの!
しかも住居構造上夜間は寝にくいので、
昼間に眠るの!!
日本とは気候が全然違うだけだし、
全然スペイン人が働かないわけじゃない」 |
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鳴島
「はぁ〜い…………。
じゃあ、給料は今まで通りでよいですよぉ。
昇給はあきらめますぅ」 |
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光一
「まったく……ようやくわかったかね」 |
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鳴島
「じゃあ、仕事始めまぁ〜す♪」 |
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光一
「はいはい」 |
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鳴島
「ふんふふん♪」 |
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光一
「…………ん?」 |
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鳴島
「きょ〜うも綺麗に拭き掃除♪」 |
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光一
「ああっ!!!!」 |
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鳴島
「うあっ!?
何ですか!?」 |
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光一
「昇給をあきらめるもなにも、
減給するって話だったじゃないか!!」 |
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鳴島
「あれ!?
そうでしたっけ!?」 |
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光一
「危ない……あやうく会話の流れで
だまされるところだった…………」 |
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鳴島
「あー…………」 |
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光一
「恐ろしい…………
飼い犬に手をかまれるというか、
恩を仇で返されるとはこのことか……」 |
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鳴島
「う、人聞きの悪い…………
マスターのお弟子さんほどじゃないですよぉ」 |
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光一
「そもそも先日さ、君が大遅刻した時
…………気付いたんだけど……」 |
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鳴島
「私がいないと店が動かないでしょ♪」 |
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光一
「君に基本給22万払っているけど……
私1人で切り盛りできるなあと。
君雇う必然性が……うーん……」 |
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鳴島
「あにゃっ!?
あうっ!?」 |