|
鳴島
「あっ!!」 |
|
光一
「やあ、綾香君。
おは…………」 |
|
鳴島
「わいせつ物だー!!」 |
|
光一
「おはようと爽やかに挨拶……
しようとした私の気持ちは、
一体どこへ持って行けばいいのかね?」 |
|
鳴島
「さあ〜♪」 |
|
光一
「ともあれ。
いきなり人を指して
『わいせつ物だー!!』
とは何事かね?」 |
|
鳴島
「んぅ〜…………
不服ですかぁ?」 |
|
光一
「不服…………以前にだなあ。
人間として扱っていただきたい」 |
|
鳴島
「んぅ〜…………」 |
|
光一
「綾香君?」 |
|
鳴島
「あっ!!」 |
|
光一
「……………………」 |
|
鳴島
「はんざいしゃー!!」 |
|
光一
「何でひらがなで
犯罪者……ですか?」 |
|
鳴島
「ほえ?
だってマスターの日記によればぁ……」 |
|
光一
「よれば何かね?」 |
|
鳴島
「屋外でフリチンしたなんて……
マスターって変態、犯罪者!!」 |
|
光一
「コラ。
誤解を招くようなことを!!」 |
|
鳴島
「だってぇ、
屋外でフリチンしたのはぁ
事実なんですよねぇ?」 |
|
光一
「お、女の子が
『フリチン』なんて連呼しない!」 |
|
鳴島
「あ、そっかぁ♪」 |
|
光一
「わかってくれた?」 |
|
鳴島
「フリチンって全裸ですからぁ、
下半身露出……が正確ですねぇ♪」 |
|
光一
「今問われているのは、
そこではないのだが……」 |
|
鳴島
「良かったですねぇ♪
目撃者いなくって!」 |
|
光一
「確かに…………
屋外で下半身を露出したのは事実。
だがしかし…………」 |
|
鳴島
「大丈夫ですよぉ♪
現行犯じゃなきゃ逮捕されません」 |
|
光一
「じゃなくて!!」 |
|
鳴島
「ほぇ?
じゃあ、
下半身露出しなかったんですかぁ?」 |
|
光一
「下半身露出……も、
女の子が連呼するのはどうよ?」 |
|
鳴島
「はいはい。
で、何ですかぁ?」 |
|
光一
「確かに露出はしたが、
あれは結果であって、
犯罪ではない!!
正当防衛に当たるものだ!!」 |
|
鳴島
「屋外で下半身露出……
『猥褻物陳列罪』ですねぇ。
そこに正当防衛なんて
成立するものですかぁ?」 |
|
光一
「これはいわゆる…………
『カルネアデスの舟板』なのだ!」 |
|
鳴島
「かるねあです?」 |
|
光一
「これは古代ギリシアの話になるのだが……
『海に投げ出された漂流者が、
一人しかつかまれない舟板を
奪い合う状況になったとき、
自分の命を守るため
他者を犠牲にしても罪に問われない』
という……まあ、
刑法での緊急避難の解釈。
これがまさに適用できるのだ!!」 |
|
鳴島
「ちんぷんかんぷん」 |
|
光一
「状況を追えば分かる!!
1、私はトイレに入った。
2、用を足すため、ズボン等を脱いだ。
3、そこにスズメバチ襲来!!
4、生命の危機に接し、そのまま逃走。
5、よって、下半身露出のまま屋外へ。
6、だから不可抗力であり……」 |
|
鳴島
「あ、わかりましたぁ♪」 |
|
光一
「わかった?
つまり、
不可抗力とも言うべき状況が……」 |
|
鳴島
「ズボンはかないで外になんて……」 |
|
光一
「そう。
それぐらい緊急の……」 |
|
鳴島
「マスターって、
うっかりさんだったんですねぇ♪
もしくは慌てんぼう?」 |
|
光一
「わかった!!
君は何一つわかってない!!」 |
|
鳴島
「お気になさらず♪
誰でもあわててうっかりミス
なんてありますからぁ♪
マスターも可愛いトコありますねぇ♪」 |
|
光一
「ちがーう!!
可愛いじゃねー!!」 |
|
鳴島
「はいはい♪
私だってぇ、
慌ててパンツはき忘れ……
くらいありますからぁ♪」 |
|
光一
「一緒にするなー!!」 |
|
鳴島
「気にしなくてもOK♪
私も気にしませんからぁ♪」 |
|
光一
「だから、全然違う!!
で、
パンツ忘れたのは気にしろ!」 |