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光一
「うーん、今日も朝は寒いなあ」 |
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鳴島
「あ……………………」 |
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光一
「おはよう。綾香君にしては朝早いではないか。
感心感心」 |
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鳴島
「お、おっはー…………」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「おっはー」 |
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光一
「頭、どうかしたのかい?」 |
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鳴島
「ち、ち、違いますよー!!」 |
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光一
「というか、この挙動不審といい……」 |
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鳴島
「きょ、挙動不審?
ど、どっこがですかぁ!」 |
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光一
「いや、普段の君ならば『おっはー』なんて私が言ってみろ?
『マスター、古いですよぉー!!』って言うし」 |
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鳴島
「そそ、そんな。尊敬するマスターに……
そんにゃ失礼なことなんて言いませんよぉー」 |
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光一
「そもそも、普段だったら私に対して
『尊敬するマスター』なんて言わないだろ?」 |
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鳴島
「ふ、ふわわわぁぁぁ…………」 |
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光一
「……………………
…………何をしでかしたのかね?」 |
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鳴島
「な、な、何もしていません!!」 |
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光一
「本当かねえ?
非常に怪しいのだが…………」 |
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鳴島
「本当に何もやってないのですぅ!!」 |
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光一
「ふーん…………というかだね」 |
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鳴島
「何ですかぁ?」 |
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光一
「そこをどいてくれないかね?
厨房に行けないではないか」 |
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鳴島
「いいんじゃないですかぁ。
たまには厨房に入らなくてもぉ」 |
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光一
「厨房に入らないと、仕事できないんだけど」 |
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鳴島
「男子厨房に入らずって言葉もありますよぉ」 |
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光一
「何時の時代の人間だね、君は。
というか、喫茶店のマスターが厨房入らなくて、
どうやって仕事するのかね?」 |
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鳴島
「あ、じゃあ今日は私が調理をしますのでぇ、
マスターはホールを担当してください!!」 |
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光一
「ウェイトレスがホールをやらないで、
調理を担当って…………
ウェイトレスの必要性がない店になるではないか」 |
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鳴島
「た、たまには役を交換するのも楽しいかもですよぉ?」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「どうしましたかぁ?」 |
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光一
「厨房でどういう不始末をしたのかね?」 |
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鳴島
「厨房で不始末ぅ!?
な、何のことだか分かりませんよぉ!!」 |
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光一
「そこをどきたまえ」 |
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鳴島
「いーやーでーすぅ!!」 |
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光一
「意味の分からない娘だねえ、君は。
仕事にならないから、さっさとどきなさい」 |
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鳴島
「仕事なんてどうでもいいですぅ!!
マスターはさっさとここを離れるですぅ!!」 |
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光一
「ほら、君はさっさとホールへ行って、掃除とかしてきなさい。
私は仕込みをしなくてはいけないの」 |
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鳴島
「じゃあ、今日は店はお休みですよぉ」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「あっ!!」 |
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鳴島
「えっ!?
…………って、あーーっ!!」 |
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光一
「どれ……厨房に何が……
って、あー!!!!」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「綾香君!! 厨房で何をしていたのかね!?
あー、お皿が何枚割れているんだね、これは!?
あ、ワインが2本も空けてある!!」 |
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鳴島
「閉店後の店内で、
ワインが私を呼んでいたんですもん」 |
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光一
「君、閉店後の店でワインを2本も空けた挙句、
酔っ払ってお皿とか割ったなー!!」 |
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鳴島
「お酒が私を呼んでいたんですぅ!!」 |
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光一
「何で君が逆ギレしているのかね!?
反省をしたまえ、反省を!!」 |
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鳴島
「マスターだって自分がやった失敗を、
心からは反省していないですよねぇ?」 |
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光一
「それとこれとは話が別で、今は君の話だろうが!!
まったく……店の備品を隠れて飲んでいたばかりか、
器物まで壊して……これは減給というか、
今月の君の給料から引かせてもらうからね!」 |
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鳴島
「にゃっ!?」 |
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光一
「あー、あー……まったく、開店前に手間を増やして……
……ほら、綾香君も突っ立っていないで、ホウキとかを……」 |
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鳴島
「やむを得ませんねぇ…………」 |
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光一
「まったくだよ、解雇も当然なのに、
減給で済ませるだけでもありがたく……」 |
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鳴島
「これは……こうするしか……」 |
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光一
「ほら、綾香君。さっさとホウキを……
…………さっきから後ろで何をブツクサ言ってるのかね?」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「まったく、さっさとホウキを持ってきた……」 |
ヒュ…………
ブシャアァァ
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