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光一
「ゴホンゴホン」 |
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鳴島
「おつかいから戻りましたぁ―」 |
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光一
「うん、どうも……ゴホゴホ」 |
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鳴島
「うぇ……風邪ですかぁ?」 |
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光一
「いや、落ち着いているときはセキも出ないのだが、
風邪というよりも気管支炎というか…………」 |
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鳴島
「風邪と違うんですかぁ?」 |
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光一
「風邪と気管支炎は、医学的には全く違うものだよ。
似ているようで、病理の部位が違うもの」 |
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鳴島
「またどうして気管支炎だと思うんですかぁ?」 |
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光一
「気管支炎は風邪と違って、
ノドの相当深部が炎症したりするんだよ。
大体、私の普段かかる風邪と言えば、鼻水とノドの痛みだ」 |
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鳴島
「でもぉ、それってマスターの感覚的な部分もあるしぃ、
ちゃんとお医者さんに診てもらったらいかがですぅ?」 |
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光一
「診てもらってきたよ、先週」 |
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鳴島
「それでまだ治ってないんですかぁ?」 |
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光一
「4日分薬を出すから、飲めば治るって言われた」 |
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鳴島
「で、治ってないんですかぁ?」 |
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光一
「うん。それで治らないならアレルギーだろうって……
いやいや、気管支炎じゃないのかなあ」 |
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鳴島
「また何でそう思うんですかぁ?」 |
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光一
「嫁が同じような症状を、私より前に訴えていて……
別の病院で気管支炎だと診断されているから。
血液検査まで受けて。そのお医者さんは、
『旦那さんも罹っている可能性ありますね』って言ってたらしい」 |
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鳴島
「あー……なるほどぉ…………」 |
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光一
「ちなみに私が行った医者は…………
あれは驚きの初体験だったわ。
2時間半待ちで3分の診療時間だった。
それならまだしも……人の顔は見ない、話は聞かない。
医者からされた質問に答えようとしているのに、
こちらが言い終わらない内に次の質問だったり……
何度も話を遮られたぞ…………」 |
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鳴島
「ふぅ〜ん、そんな医者もいるんですかねぇ」 |
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光一
「まあ、某巨大ショッピングモール内だから、
患者も沢山来るんだろうけどねえ…………
医者にコミュニケーション取ってもらえなかったのって、
ホント、人生初体験だよ。結構医者に行く事多いけど」 |
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清香
「そんな感じだと、医者の事が信用できないですねえ」 |
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光一
「医者って患者に信頼されないと……
治療も効果を上げられない気がするんだけどねえ……
あんな感じの医者ってありなんだろうか?」 |
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鳴島
「まあ、ずっと話しこんでいたり、無駄話だけでもあれですがぁ、
ちゃんと話を聞いてくれる方が安心はしますよねぇ」 |
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光一
「病院によっては無駄話が無駄話ではなかったりするが、
さすがに患者の話を全く聞かない医者には、もう行かないなあ。
事実、医者の言った通りに薬飲んでも治ってないし」 |
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鳴島
「なんにせよ、コミュニケーションは大事ですよねぇ」 |
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光一
「まあ、全く話をしない状態だと……
相手の事も分からないし、信頼はできないよね」 |
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鳴島
「その点では私はオールクリアーですねぇ♪」 |
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清香
「確かにお姉ちゃんはよく話するよね」 |
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鳴島
「人と話すの大好きだもん♪」 |
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光一
「まあ、私自身は人と話すのは不得手な方だが……」 |
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清香
「私もそんなに得意ではないですね」 |
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鳴島
「清香は得意そうな気がするけど……」 |
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清香
「うーん、心を開いていないように見えるというか、
なんだか微妙な感じになってしまうみたいだね」 |
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光一
「その点、綾香君は表裏もないし……
まあ、信用はできるよね、確かに」 |
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鳴島
「おお、久々に私がほめられている!!」 |
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光一
「信用はあるんだけど、
あくまで信頼ではないからね?」 |
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鳴島
「ほぇ? ほとんど同じ意味じゃないんですかぁ?」 |
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光一
「綾香君の言う事は裏表ないので、信用するけどね。
そこから先……じゃあ色々任せるという信頼にならないね」 |
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鳴島
「ふえっ!?」 |
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光一
「まあ、信用はコミュニケーションが大きいけど。
信頼はどっちかというと…………」 |
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清香
「はい? なんですか?」 |
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光一
「仕事が出来るから頼りたいって意味合いになるかなあ?
まあ、普通は信用できるから仕事を任せて、
そこから信頼性に結びついていくんだが……」 |
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鳴島
「……………………ぁー」 |
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清香
「……………………?」 |
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光一
「君達姉妹は、ホント2人足して2で割ったら……
多分理想的な人物像になるのにねえ」 |
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鳴島
「どういう意味ですかぁ!?」 |
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清香
「それは私にお姉ちゃんのような……
巨乳が備わっていない事への
婉曲的な非難ですか!?」 |
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光一
「清香君のそれは完全な誤解です!!
今している話はスタイルの話じゃなくて……」 |
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鳴島
「じゃあ、私に清香のような若さが無いから?
2人足して割れば……22歳!!
……それが理想って事ですかぁ!?」 |
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光一
「だからそういうのじゃなくて…………」 |
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鳴島
「じゃあ、なんですかぁ!?」 |
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清香
「お姉ちゃんと分け合う部分で……
オッパイ以外に何かあるんですか!?」 |
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光一
「いや、まずは落ち着いて、ちゃんと話を……」 |
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鳴島
「私に足りないのは若さですかぁ!?
女子高の制服着れば良いんですかぁ!?」 |
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清香
「私に胸が足りないとすれば……パッドですか?
胸に詰め物すれば良いですか?」 |
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光一
「……………………
私も君たちとのコミュニケーションが足りていないのが実感できたよ」 |