  | 
      光一 
       
      「なんでだろうねえ?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「なにがですかぁ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「普通、学校帰りに女子がだよ、 
       
      息を切らせて走って来て………… 
       
      『こういちくん!!』なんて言ってきたらさ」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「『好きです、付き合って下さい♪』 
       
      なんて思うのは妄想ですよぉ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「これまでも妄想で片付けるのかね、君!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「だって、マスターですよ、相手?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「いや、普通だったら告白のシーンだろ!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「だって、現に告白されたわけじゃないですよねぇ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「まあ、あの時はそうだった…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「女子が走って追いかけて来てくれた、 
       
      これだけでも良かった思い出じゃないですかぁ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「実質的な利益が伴っていないじゃないか。 
       
      あの娘は学校でもトップクラスの美少女だったのに」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「どうしたんですか?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「マスターが今から20年以上前、学校帰りに、 
       
      学校でもトップクラスの美少女に追いかけられたんだって」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「へー」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「あ、念を押すと、美少女が追いかけてきたって、 
       
      マスターの妄想じゃなくて事実らしいよ」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「あ、そうなんだ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「そこは付け加えるべき情報だったかね!? 
       
      さり気に傷つけてるよ、私を!」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「マスターとしては、告白を期待していたんだって」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「で、結果はどうだったの?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「『マイトガイン』ってアニメを見て、 
       
      視聴率を上げるのに貢献して! 
       
      って言われたんだって」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「あー………… 
       
      あれ、専用の機械が設置された家しか、 
       
      カウントされないから意味ないけどね」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「その美少女が、そのアニメに出て来る主人公の事、 
       
      好きで好きで仕方なかったんだってさ」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「あー、なるほど。 
       
      息を切らして追いかけてきた美少女。 
       
      呼び止められて告白を期待したのに、 
       
      知った事実は相手が『アニオタ』だった事だと。 
       
      それで二重にショックだったという思い出だと」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「君たちの会話は、私の心をえぐっていると、 
       
      そろそろ気が付いた方が良い」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「そもそもそんな美少女が、 
       
      わざわざマスターを走って追いかけて来て、 
       
      告白するわけないじゃないですかぁ♪」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「笑顔で!?」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「まだ声をかけてもらえる対象だっただけ、 
       
      マシだったと思うべきではないですか?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「えっ、私ってそんなレベルなの!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「当時のマスターから既に、 
       
      そう言ったオタク臭が漂ってたんじゃないですかぁ?」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「だったら走って追いかけてきた理由も、 
       
      突然アニメの話をされた事も、 
       
      まあ、うなづける話ですね」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「君達、私の心を深くえぐってるよ?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「まあ、私達が言いたい事は要するに、 
       
      マスターは当時からそういった………… 
       
      普通の人ではないオーラがあったという事ですよ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「それ、絶対ほめ言葉ではないよね!?」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「当時の女子からも見抜かれていたんですね」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「何を!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「いや、だから、オタク的な要素を?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「私のどこがオタクかね!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「オタクでない一般人が、 
       
      果たしてコミケに行ったりするものですか? 
       
      というか、自分をオタクって認めてましたよね?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ぐっ…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「あっ、今、目を逸らしましたね?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「君達、私の思い出と現在をいじって、 
       
      追い詰めて楽しいかね?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「別に追い詰めてるわけじゃないくて、 
       
      マスターが勝手に袋小路に入ってるだけですよ」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「まあ、そんな思い出話なんて、 
       
      20何年も前の事なんですから、忘れちゃいましょうよ」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「そうそう。モテ期なんて妄想の産物ですよぉ♪」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「君達、私に対する言葉かけが、 
       
      最近妙にキツくなってないかね?」 |