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光一
「ふぅ……久々に雪が降ったりと、
今週は寒いなあ…………
厨房は寒そうで入るのが憂う…………」 |
ブン!!
ドムッ…………
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鳴島
「あっ…………」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「い、生きていますかぁ?」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「まず、このフライパンを綺麗に洗って……
片づけて…………」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「後は昼頃に『遅刻しましたぁー』
って店に出てくれば……うん。
そこで倒れているマスターを見つけて通報。
私は犯人ではないと…………」 |
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光一
「ぉぉ…………」 |
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鳴島
「生きている!?」 |
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光一
「ぅぐぅー……厨房に入るなり……
何かで殴られたような…………」 |
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鳴島
「マスター、
どうかなさったんですかぁ!?」 |
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光一
「綾香君かね?
うーん……厨房に入るなり……
何かで殴られたようなんだが……」 |
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鳴島
「私は今来たところなんですがぁ、
誰ともすれ違いませんでしたよぉ」 |
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光一
「うーん…………
うわぁ……後頭部から血が……」 |
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鳴島
「大変ですぅ―!!
救急箱取ってきますねぇ」 |
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光一
「うん。頼むよ」 |
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光一
「……………………」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「救急箱お持ちしま!?」 |
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光一
「おかしい…………」 |
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鳴島
「ど、どうなさいましたぁ?」 |
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光一
「このフライパンだけ、乾いていない……
全部火で水を飛ばしてあるのに……」 |
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鳴島
「まさか、犯人はフライパンでマスターの頭を!」 |
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光一
「うーん、そんな気がするねえ……
ところで、綾香君」 |
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鳴島
「なんでしょうかぁ?」 |
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光一
「特にどうのってわけじゃないんだけどね、
何で店に来たばかりなのに、
エプロンが濡れているのかね?」 |
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鳴島
「あ、雨が降っていたんですよぉ!!」 |
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光一
「あー、雨か」 |
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鳴島
「そうそう」 |
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光一
「うちの店では、
更衣室の中に雨が降るのかね。
それは根本的な対策が必要だねえ」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「…………………で?」 |
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鳴島
「事故なんですよぉ!!
フライパンでイチローの打法を真似していたら、
たまたまマスターが入ってきたんですよぉ!!」 |
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光一
「ほー」 |
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鳴島
「マスターが厨房に来さえしなければぁ、
事故なんか起きなかったんですよぉ!!
事故は自分と相手の両方がいないと起きないんですよぉ。
つまり、マスターも悪いんですぅ!!」 |
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光一
「なるほどなるほど。
私も悪かったと……
厨房を開けたら、君がフライパンを振り回している。
それを想定して行動するべきだったと」 |
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鳴島
「そうそう。そういうことですよぉ♪」 |
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光一
「なーんだ、それなら互いに悪いという事で、
きっちりおさまりがつくね♪」 |
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鳴島
「ですよねぇー♪」 |
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光一
「んなわけあるかー!!
100%君が悪いわー!!」 |
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鳴島
「みぎゃぁぁぁぁぁ!!」 |
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光一
「自分から事故を引き起こしておいて、
謝ろうとするならともかく、
逃走し、そして事件を隠滅しようとは……」 |
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鳴島
「また頭グリグリされたぁー!!
痛いですよぉー!!」 |
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光一
「フライパンでぶん殴られて、気を失っていた
私に比べたら遥かにマシだろうが!!」 |
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鳴島
「だってぇ、
マスターが厨房に来るから悪いんだもん!」 |
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光一
「まーだ、言うかね、君は!!
職場に出てこないマスターって何だ!?
というか、厨房でフライパンを振り回している君が悪い」 |
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鳴島
「ぶーぶー…………」 |
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光一
「三十路にもなろうかという女の態度とは思えんな。
そういえば、化粧水やらウェディング関係の雑誌を置いておいたのに、
読もうともしなかったくらいだから、自覚はないのか。
お客さんの白髭さんからのせっかくの差し入れを…………」 |
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鳴島
「まだ三十路じゃないもん!!
しかもそれはセクハラですぅ!!」 |
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光一
「不平を言っているヒマがあるなら、
することがあるのではないかね?」 |
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鳴島
「ふぁーい…………」 |
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光一
「そうそう。素直に謝るべきなのだよ」 |
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鳴島
「記憶ごとしっかり消しておけば……」 |
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光一
「ん、何か言ったかね?」 |
ブン!!
グシャッ…………
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