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光一
「うーん」 |
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鳴島
「どうしましたぁ?」 |
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光一
「私って……カッコいいだろうか?」 |
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鳴島
「はぁ?」 |
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光一
「いや、『はぁ?』じゃなくて」 |
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鳴島
「なんなんですかぁ、いきなり」 |
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光一
「私、昨年6月頃からヒゲを生やしていたじゃない」 |
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鳴島
「あー、そんな事もありましたねぇ」 |
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光一
「あの時の私、どうよ?」 |
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鳴島
「はぁ?
ヒゲを生やした30代男性かと」 |
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光一
「そんな客観的事実を聞いているんじゃないよ。
私が、イケていたかどうかという事だ」 |
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鳴島
「……………………
人間、外見よりも中身ですよぉ」 |
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清香
「お姉ちゃんが珍しく、まともな事を言った」 |
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光一
「何、その遠まわしな言い方?」 |
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鳴島
「何でまた、私達に、
そんな無意味な問いかけをしますかぁ?」 |
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光一
「無意味!?」 |
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清香
「マスターは、ヒゲを生やしていた時に、
適当な呼び名を付けられなかった事に、
恐らく不満を持っていたんだよ」 |
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鳴島
「はぁ…………仲間内から、
ダンディー坂野とか、山田ルイ53世とか……
消えかけている芸人を呼び名にされたのが、
何か、しゃくに触りましたかぁ?」 |
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光一
「しゃくに障るに決まっているだろうが!」 |
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鳴島
「じゃあ、なんて呼ばれたかったんですかぁ」 |
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光一
「いや、特にこう……というのは無かったが、
こう……私のカッコよさを存分に表す、
そんな表現で呼んでほしかったな」 |
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鳴島
「マスター、毎日ちゃんと鏡、見てますかぁ?」 |
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光一
「どういう意味だね?」 |
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鳴島
「ほら、ちゃんと自分を客観視しないと」 |
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光一
「私がカッコよくないとでも言うのかね!?」 |
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清香
「何でそんな両極端なんですか」 |
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鳴島
「そうそう、ハンサムでもなければ、
ブサイクでもない…………
そんな感じで良いじゃないですかぁ」 |
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光一
「何? 私を凡夫扱いするつもりかね?」 |
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鳴島
「凡夫って…………」 |
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清香
「良いじゃないですか、普通。
普通が一番ですよ」 |
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光一
「イヤだ、イヤだ!
もっともっと高い評価が欲しい」 |
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鳴島
「お菓子を欲しがる子供ですかぁ…………」 |
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清香
「最初にお姉ちゃんが言ったように、
人間、外見よりも中身ですよ」 |
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光一
「じゃあ君達、
滅茶苦茶ハンサムな男と、
滅茶苦茶ブサイクな男と…………
両方同時に現れたら、
どちらに心ひかれるかね?」 |
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鳴島
「ハンサムな人ですよぉ、当たり前ですぅ♪」 |
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光一
「ほら、本音が出た!!」 |
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鳴島
「その上で、性格が良い事が条件ですねぇ」 |
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光一
「ハンサムかつ性格が良いだと…………」 |
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清香
「まあ、外見が良くて、中身も良ければ、
それが一番いいですかね」 |
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光一
「じゃあ、凡夫扱いされる私じゃ、ダメじゃん!
中身が素敵になっても、
ハンサム野郎に負けるってことでしょ?」 |
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鳴島
「それは……しょうがないですよぉ♪」 |
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清香
「ネコがいくら強くても、
ライオンと同じ土俵に立ったら、
勝負にならないのと同じですね」 |
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鳴島
「そんな意味の無い試合をしたって、
張り合いようがないじゃないですかぁ」 |
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光一
「くそっ……私はハンサムには勝てないというのか!?」 |
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清香
「中身をその分、鍛えればいいじゃないですか」 |
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光一
「くそっ……せっかく威厳を付けるために、
ヒゲを生やして毎日整えていたのに」 |
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鳴島
「外見は、どうにもなりませんからねぇ」 |
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清香
「そうそう、外見だけは生まれもったものですから」 |
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光一
「ん?
なんか私、励まされてないよね?
なんか、陥れられている感じがするけど」 |
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鳴島
「気のせい気のせい♪」 |
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清香
「そう、気のせいですよ」 |
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光一
「凡夫扱いされた上で……気のせいとは思えんのだが」 |