  | 
      鳴島 
       
      「なんと言いますか、こー」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「なんだね?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「先日このサイトが10周年を迎えたわけですが、 
       
      こんなサイトをやっている時点でアレですが」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「アレってなんだね!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「マスター……よく警察に捕まりませんねぇ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「どういう意味だね!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「いや…………何を考えて、 
       
      夜遅くに外をトポトポ歩いてるんですかぁ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「別に夜、外を歩いたっていいだろう」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「いや、別にそれは構わないんですけどぉ」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「三十路をとうに超えた男性が、 
       
      リラックマの全身着ぐるみで出歩くのは……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「ちょっとさすがに恥ずかしいと思いません?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「恥ずかしいに決まっているじゃないか」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「じゃあなんで、そんな奇行に出たんですかぁ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「奇行!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「奇行以外の何物だって言うんですかぁ?」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「夜……暗がりの中から………… 
       
      リラックマの着ぐるみが歩いてきたら、 
       
      私だったらすぐに逃げますけどね」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「私は視線を合わせないようにするか、 
       
      110番するだけですかねぇ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「なんで不審人物扱いされなきゃならんのだ!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「なんでって……聞く事ですか、それ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「何を着て外を歩いたって自由だろ。 
       
      別に裸で歩いてたわけじゃないのだし」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「まあ、服装の自由は自由でしょうけど」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「そういう全身着ぐるみは、 
       
      小さい子供がしていたら、 
       
      『ああ、可愛い♪』で済むものなんですよぉ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「その発言は、 
       
      大人は着ぐるみで外を歩いてはいけない…… 
       
      と、言っているように聞こえるんだが」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「で、なんでそんな奇行に出ました?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「奇行って…………」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「そんな恥ずかしい事をするのに、 
       
      何らかの理由があるはずですよね? 
       
      普通ならそんな奇行はしないかと」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「なんか、これらの質問にさあ、 
       
      私を貶めようとする何かがあるの?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「…………………… 
       
      まっさかー。単なる疑問質問ですよぉ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「…………まあ、いいや。 
       
      なんで私達夫婦がリラックマの全身着ぐるみで、 
       
      夜の街を歩いていたか?」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「なんでですか?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「その日はハロウィンでね」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「あっ…………まさか、 
       
      その格好で近隣の家々を回って、 
       
      『トリック・オア・トリート』なんて、 
       
      そんな子供のまねごとを…………」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「三十路になってからあえて挑戦したと?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「なんか君達の物言いに、 
       
      どう感じとっても悪意を覚えるんだけどね?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「で、お菓子をねだるために、 
       
      そんな格好で夜、外を歩いてたんですかぁ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「違う。そもそも近所に、 
       
      そんな親しい間柄の家庭がいない」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「あ、あー…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「なんていうか……その、 
       
      マスターも寂しい人なんですねぇ、すいません。 
       
      年賀状も元旦に1通しか着ていない、 
       
      そんなマスターでしたのに…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「何? その変な同情? 
       
      かえって傷つくんだけど…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「で、近所に交流関係も無い、 
       
      非常に孤独で寂しいマスターが、 
       
      何を狂ってそんな格好で歩いてたんです?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「事実を言われているようで、 
       
      非常に胸、えぐられる気分だよ?」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「で、結局なんでそんな格好してたんですか?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「近所の店で『ハロウィン・イベント』やっててね、 
       
      『コスプレして行けば、パスタ全品500円』 
       
      となっていたから、それで」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「あー、なるほど」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ただ、店に行ったのが遅すぎて………… 
       
      『パスタ今日、全部売り切れてしまって』 
       
      って言われちゃった…………。 
       
      うん、パスタ以外の料理を通常の料金で食べたよ」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「うわぁ…………」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「…………そもそもコスプレなら、 
       
      別にリラックマの全身着ぐるみなんて、 
       
      そんな恥ずかしい格好でなくても良かったのでは?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「そうですよぉ。 
       
      魔女の帽子とか、カボチャの帽子とか…… 
       
      そんなのだけでもいいのではぁ?」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「そもそも、パスタ全品500円で食べれたとして、 
       
      そのリラックマの着ぐるみ………… 
       
      おいくらでしたか? 夫婦2組分で」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「…………その、7000円ほど」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「値引きされる分を遥かに上回ってません?」 | 
    
    
        | 
      清香 
       
      「その後、特に着る目的も無いですよね、 
       
      その……全身着ぐるみ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「う……ぐっ…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「ほら、だからマスターには、 
       
      ハロウィンなんてリア充のイベントは、 
       
      縁遠いものだったんですよぉ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「リア充から縁遠いとか言うな!」 |