|
光一
「う〜ん、目が疲れるなあ…………」 |
|
鳴島
「どうしましたぁ?」 |
|
光一
「いやぁ、よく足もとが見えなくてねぇ……」 |
|
鳴島
「そういえばそんな時に使う有名ことわざ
ありませんでしたっけぇ?」 |
|
光一
「有名なことわざ?
足もとがよく見えない時に?」 |
|
鳴島
「ほらぁ、あれですよぉ♪」 |
暗くてお靴が分からないわ
どうだ、明るくなったろう?
|
|
鳴島
「かつてのお金持ちはぁ、
暗くてよく見えない時は
お札を燃やして明かりにしたんですよねぇ?」 |
|
光一
「ことわざじゃないし……風刺画だし……
第一お札燃やしたら、警察に捕まるの知ってる?」 |
|
鳴島
「お札燃やすなんてもったいないことしませんよぉ。
……お給料も安いのにぃ……」 |
|
光一
「今、雇用主であるボクに対して、
ちょっと挑戦しなかったかね?」 |
|
鳴島
「気のせいじゃないですかぁ?」 |
|
光一
「というか、あの戦時成金のセリフね、
小中高と出るたびに流行ったねえ……」 |
|
鳴島
「その位、お金持ってみたいですよねぇ♪」 |
|
光一
「小さい頃、『お札のプールで泳ぎたいなあ』とか、
私も憧れたね……大金に!!」 |
|
鳴島
「私のお給料じゃあムリですけどねぇ……」 |
|
光一
「君、今の雇用関係に不満があるの?」 |
|
鳴島
「不満? そんな事言いましたっけぇ?」 |
|
光一
「まあ、私もそんなお金なんて無いけど……」 |
|
鳴島
「というかぁ、あの有名な『どうだ、明るくなったろう?』
ってお札……100円札燃やしてますけどぉ、
今の価値でいくらぐらいなんですかねぇ?
…………1万円くらい?
うぉぉぉ、1万円でも十分もったいない……」 |
|
光一
「大正時代の100円は、
大体今の価値で50万円くらいだけど」 |
|
鳴島
「私の給料の倍くらいじゃないですかぁ!?」 |
|
光一
「私の収入よりも遥かに上だよ……」 |
|
鳴島
「足もとがよく見えないのに、
燃やすお札も無いとはぁ…………
マスター可哀想にぃ…………」 |
|
光一
「どういう同情だね!?
第一よく見えないって、別に暗いからじゃないし。
そもそも、お札を誰が燃やすか!?」 |
|
鳴島
「あー、老眼で目が見えないんでしたっけぇ?」 |
|
光一
「老眼じゃない!!
そんな歳でも無い!!
まだ20代に羽が生えた程度の、つまるところ……
30歳という、限りない20代の30代だ!」 |
|
鳴島
「何で回りくどい言い方してるんですかぁ。
30歳って普通に言えば良いのにぃ」 |
|
光一
「ともあれ、老眼などでは全然ないわ!」 |
|
鳴島
「じゃなければ、目が邪心で汚れてるんですかぁ?
贈物の"むらすずめ"を"むらむすめ"って呼んで、
若い女の子が自宅に届けてもらえる♪って……」 |
|
光一
「震災直前に、ももこさんから
岡山銘菓"むらすずめ"を贈ってもらったんだけど、
あの当時は深夜残業続きで、
目がものすごい疲れてたんだよ!!
だから文字を見誤って、妄想が膨らんだだけだ!」 |
|
鳴島
「目が疲れた以前の問題ではぁ……
どうやったら"女の子を配達してもらえる"って思いますかぁ?」 |
|
光一
「ボクは大歓迎なんだけど。
若い女の子、自宅に来るの大歓迎しますよ?」 |
|
鳴島
「奥さんに三行半突きつけられても知りませんよぉ?」 |
|
光一
「そういえば君…………
三行半なんて難しい言葉、よく知ってたね?」 |
|
鳴島
「知ってますよぉ、それくらい!!」 |
|
清香
「何騒いでるんですか?」 |
|
鳴島
「マスターがもうろくしたというかぁ……
老眼? 目が悪いせいかね、
若い女の子を宅配してもらえると思ったらしくてぇ」 |
|
清香
「?? え?
話がいまいち見えないんだけど?」 |
|
鳴島
「岡山から"むらすずめ"ってお菓子贈ってもらったのを、
"むらむすめ"って思って…………
若い女の子を食べられると思ったんだってぇ」 |
|
光一
「ものすごい誤解を招く言い方!?
いや、届く物が"むらすずめ"だとは知っていたからね!
そういう妄想が働いた事は否定しないけど」 |
|
清香
「若い女の子を宅配?
デリバリーヘルスって事じゃないの?」 |
|
鳴島
「なんでそんな冷静なのよぉ!?」 |
|
光一
「いや、君達?
私の話を聞いてるかね?」 |
|
清香
「マスター。
奥さんがいるトコにヘルス嬢なんて呼んだら、
離婚の原因になりかねませんよ?」 |
|
光一
「だから私は呼んでない!」 |