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光一
「うーん、しっかしヒマだねえ……」 |
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鳴島
「マスターマスター」 |
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光一
「ん? 何だね?」 |
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鳴島
「ほい」 |
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光一
「???
何だねこれは?」 |
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鳴島
「は?」 |
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鳴島
「モップですけど……知りません?
床とか掃除するのに使いますよ?」 |
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光一
「いや、そんな事は知ってる。
何でこれを私に渡してきたのかね?」 |
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鳴島
「私に渡し…………
"わたし"に"わたし"って……ギャグか何かですかぁ?
それはちょっと若い人には通用しないかとぉ……」 |
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光一
「そんなギャグ意識したこともないわ!
そうじゃなくて、どうして私にモップを?」 |
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鳴島
「それはヒマそうだったからですけどぉ♪」 |
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光一
「何のために君を雇ってるのかね!?
掃除は君の仕事でしょうが!」 |
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鳴島
「だってぇ……ヒマそうですしぃ……」 |
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光一
「そうしたら君だってヒマではないかね?」 |
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鳴島
「そりゃあ……お客さん来ないんですもん」 |
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光一
「震災後、今度はイベントとか消費活動……
急に自粛の動きが広がったよねえ。
飲み屋さんなんて多くが閑古鳥だし、
観光地なんて人いないもんねえ……」 |
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清香
「このままだと、震災の二次災害みたいな形で、
お店とか潰れて失業者増えそうですよねえ……」 |
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光一
「被害が少ないとか無い地域は、
お金を普通に使うのが一番だと思うんだけどねえ」 |
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清香
「梅祭りも桜祭りも、夏の花火大会も中止ですもんねえ」 |
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光一
「1年間も自粛ムードになったら、
それこそ経済干上がっちゃうぞ…………
そういや青森の弘前では桜祭りやるらしいよ。
色々議論はあったらしいけど、
私はその方がいいと思うなあ…………」 |
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鳴島
「そうですねぇ♪
はい、そういうわけでマスター。
モップ貸してあげるので、掃除しましょうねぇ♪」 |
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光一
「だから何で私が!?」 |
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鳴島
「だってぇ…………奥様が仕事行く中、
夕方に奥様が帰って来るまで寝腐って……
そんなヒマヒマしてると……愛想尽かされますよぉ?」 |
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光一
「毎日夕方まで寝てたわけじゃないわ!!
昼間部屋中掃除したり、情報収集に歩き回ったり、
むしろ動いていた日の方が多いからね!」 |
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鳴島
「まぁ、でも夕方まで寝腐ってた日もあるんですよねぇ?」 |
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光一
「まあ……あるけどね…………
学生時代以来の日々だったねえ♪」 |
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鳴島
「休日家にいて、何もすることが無くてぇ、
居場所が無いお父さんみたい……」 |
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光一
「はい!?」 |
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鳴島
「今の30歳の内からそんなんだとぉ、
40代50代となるにつれてぇ、
自宅に居場所なくなっちゃいますよぉ?」 |
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光一
「いや、休日ぐらいいいじゃん。
存分に寝てもさー」 |
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鳴島
「娘さんが生まれたらぁ、
『何でパパ、寝てばっかりなの?』って言われたり、
『パパ、邪魔だからどっか行ってよー』とか……
家庭内で孤立しかねませんよぉ?」 |
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光一
「何でそんなリアルな未来予想図なの?」 |
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清香
「娘さん?
マスター、娘さん生まれる予定あるんですかぁ?」 |
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光一
「清香君もそこで勘違いしてこないで。
まだ生まれてないから。
というか、まだ嫁のお腹にいないから」 |
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鳴島
「そんなわけですからぁ、
奥様に愛想尽かされないようにぃ、
仕事しましょうねえ、マスター♪」 |
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光一
「だからモップ押しつけてくるな!
それにその寝ていたどうのってのは、
震災後2週間、自宅待機していた時であって、
今は仕事しているわ! ヒマだけど…………」 |
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鳴島
「そういうヒマな時に身体鍛えたり、
色々した方がいいんじゃないですかぁ?」 |
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光一
「それぐらいは分かってるよ」 |
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鳴島
「そうして段々自堕落に拍車がかかると、
50代の頃には典型的な…………」 |
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鳴島
「典型的なメタボのオッサンになりますよぉ?」 |
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光一
「何でそんな未来が確定的なんだよ!?」 |
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清香
「あー……娘に嫌われる典型例ですねえ……」 |
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光一
「いや、だからね。ならないから!」 |
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鳴島
「20年先の姿なんですからぁ、
ならないとは言い切れないんじゃあ……」 |
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光一
「いや、言い切れるから!
ならないからね!!」 |
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鳴島
「じゃあ、そうならないためにも♪
今からキリキリ働きましょう!!
ほら、モップを貸しますからぁ♪」 |
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光一
「君……なんだかんだと、
自分が仕事をさぼる口実を作ってない?」 |