4/10(月)
正しい認識ですよう

鳴島

まあ、当然と言えば当然ですよねぇ
光一

む、何がかね?
鳴島

今日のマスターの日記にある、

彼女さんの認識ですよう
光一

ああ…………

社会に出た際に、

男からのセクハラや犯罪に

とにかく気をつけろと言ったのに、

彼女が素直に頷いたことかね?
鳴島

それはもちろんですけどぉ……

それだけじゃなくてぇ……
光一

はて?

他に何かあったかね?
鳴島

そこが何より強調されていたのでは?
光一

ん?

他の何よりも強調されていた点?
鳴島

マスターが『男に気をつけろ……』

と言ったときに、彼女さんが頷いたのって、

『マスターがあまりにエッチなので、

男は全員そうだと知ったから、気をつけます!』

という受け取り方でしたよねぇ♪
光一

あ、あれはっ!?

あれは……私の彼女の誤解だ!!

認識の間違いだっ!!
鳴島

何を言ってるんですかぁ……

マスターが普段、あんまりにもエッチだから、

彼女さんの男に対する認識が、

そういうものに変わったってことですよねぇ?

だったら、マスターがエッチな点が、

最も強調されている点じゃないですかぁ
光一

それは、おかしい!

それは違うぞ!!
鳴島

では、どう違うんですかぁ?
光一

まず第一に、

健全な成人が性欲を持つのは、

これは生物学的構造に基づく、

自然の摂理だろう?
鳴島

まあ、それはそうかもしれませんねぇ?

で、それを根拠に、

『人間は全てエッチだ』

とでもおっしゃるつもりで?
光一

まあ、待ちたまえ。

そして、人間が他の動物と違うのは、

性欲をコントロールできる

理性を持っていることだ
鳴島

ふむふむ。

人間は理性を持った動物ゆえに、

自然の摂理から外れることも可能だと
光一

そうだ。それゆえにまた、

他の動物が生存のために性欲を持つのと違い、

快楽や愛のために、それを持つこともできる
鳴島

まあ、そうですねぇ。

…………で?
光一

それはつまり、

自分の快楽のためなら、

暴走する可能性もあるということだ
鳴島

性犯罪者とかがそうですかねぇ……
光一

そういうことになるな。

セクハラ・性犯罪はまさにその典型であろう。

こんなことは人間しか行わない
鳴島

確かに…………。

こんな不要なことで他人を苦しめて、

自分だけ良い思いをする……

そんなのは人間だけですねぇ
光一

しかしまた、

愛と快楽の混合する中で、

互いに性欲を解消することもあるだろう?
鳴島

うーん……確かに
光一

これが恋人や夫婦間での性欲のあり方だな。

この場合、互いの同意で行う性行為は、

別に犯罪でも何でもない。

その点で、犯罪者たちとは異なる
鳴島

まあ、そうですねぇ
光一

問題は、

『男に気をつけろ』

と、私が彼女に注意したケースと、

『光一さんはエッチ』

だと彼女が指摘した、私のケース。

この2つは、それゆえに異なるわけだ
鳴島

わかるような、わからないような……?
光一

つまり、私がエッチだという表現は、

『愛情ゆえの』『互いの合意』という点で、

すでに犯罪のそれとは異なる。

だが、『男に気をつけろ』という際のそれは、

完全に犯罪である。

この2つの違いを認識した上で、

『光一さんがエッチだから、

他の男性もそうなはずなので、

だから気をつけます……』

とくれば、すでに違いは明白ではないか?
鳴島

つまりぃ…………

『マスターの彼女へのエッチは犯罪ではない』

『他の男性からのそれは犯罪』

だから……彼女さんが、

『マスターがエッチ』という際のそれと、

『他の男性もだからエッチなんでしょうね』

という際のそれでは、

『エッチ』が含むニュアンスが違うと?
光一

そういうことだ!

それゆえに、彼女は私を下敷きに

男のあり方を考えつつも、

しかし、私と他の男を峻別しているゆえに、

私がエッチなのを強調しているように見えても、

実は重大なニュアンスとして捉えていない。

重大なのは『他の男の性欲』であって、

強調され問題化されているのは他の男なのだ
鳴島

あ、なるほど♪

よく、わかりました!

つまり、彼女さんの中ではマスターは特別なので、

強調しているようで強調していない。

そういうことですねぇ
光一

ふう……ようやく分かってくれたか
鳴島

そうですねぇ…………
光一

ん?

何か含みがあるような?
鳴島

だったら、最初から……

『彼女の中では、自分は恋人だから、

互いに愛情を持って付き合ってるので

エッチでもOKなんだ』

『他の男は一時の快楽のためだけに、

接近してくるから、危ないんだ』

と言えば済んだ話じゃないですかぁ
光一

あ…………
鳴島

わざわざここまで、

理論武装する意味はあったので?
光一

う…………
鳴島

簡潔に言える話なのに、

細かく言わなければならない……

そういう場合って大体、

自分がやましい場合ですよねぇ?
光一

うるさいうるさい!!
鳴島

彼女さんの言う『光一さんのエッチ!』

が…………

『いい加減にしてください!』

にならないよう、

ちゃんと加減したほうが良いですよう
光一

だ、黙れ黙れ!!

そ、そんなのは分かっている!
鳴島

別にマスターが悪い人なわけではないのに、

変に理屈臭いから、

悪い人みたいに見えるんですよねぇ。

墓穴を掘らないよう、注意してください♪
光一

ぬぅぅぅぅ…………

言われ放題だね……
鳴島

おや?

マスターと彼女さんのために言ってるんですけど。

ちゃんと人の忠告は聞いたほうが良いですよう
光一

分かっている!
鳴島

分かったなら、返事は『はい』です!
光一

ッ…………はい!!

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