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光一
「ふー…………」 |
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鳴島
「おー、マスター。
お元気ですかぁ?」 |
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光一
「君は相変わらず何も考えて無さそうでいいねえ」 |
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鳴島
「にゃっ!?」 |
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光一
「はぁー…………」 |
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鳴島
「そんなにため息ばかりついていると、
幸せが逃げていきますよぉ」 |
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光一
「いやぁ……それは分かっているんだけどねえ。
はあ…………」 |
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鳴島
「朝から何でそんな景気の悪い」 |
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光一
「あー…………
道端に100万円でいいから落ちてないかなあ」 |
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鳴島
「マスターこそ、
どこに堕ちているんですかぁ……」 |
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光一
「お金だよ、おかねー。
あー……お金があればなあ…………」 |
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鳴島
「昔からお金が無いとは言ってますけど、
何でそんな深刻になってるんですかぁ」 |
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光一
「お金をためるために、節約の毎日だよ」 |
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鳴島
「それは良いことじゃないですかぁ」 |
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光一
「もちろん、そうだねえ。
健康のためにウォーキングも欠かさないし」 |
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鳴島
「以前のマスターには無かった、
良い傾向じゃないですかぁ」 |
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光一
「ただねえ、私の住んでいるエリアはね、
お金持ちが結構多く住んでいるエリアでねえ」 |
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鳴島
「はぁ?」 |
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光一
「飲食店が多いんだ。それも良いランクの」 |
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鳴島
「はぁ…………?」 |
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光一
「1食5000円前後はするだろう店が、
毎日毎日満車状態で…………
ウォーキングの度に見ているとねえ。
なんというか、見せつけられている感がねえ」 |
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鳴島
「あー…………」 |
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光一
「すぐ近くにジムもあるんだけど……
そこも毎日たくさん人が通っているのね。
まあ、健康志向って事だよねえ」 |
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鳴島
「そうでしょうねぇ」 |
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光一
「一番安いプランですら、月1万円以上だよ?
そこにポンポン人が来て…………
私だって使いたいけどねえ……
お金が無いから、普通にウォーキングですよ」 |
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鳴島
「なんていうか……病んでます?」 |
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光一
「近くのダンススクールからは、
小さい子供たちが着飾ったママ達と出てきて……
親の年齢なんて私と大して変わらないだろうに。
かたやダンスを楽しみ着飾って、
かたや服も買わずに、値札を見る日々で……」 |
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鳴島
「あー…………」 |
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光一
「ウォーキングの度に道端を見ているけど……
どこにお金落ちているのかなあ?」 |
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鳴島
「おーい、帰ってこーい」 |
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光一
「引っ越して、彼女と一緒に住み始め
早1ヶ月半……帰宅すれば笑顔で『おかえり』のある日々」 |
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鳴島
「良いじゃないですかぁ♪」 |
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光一
「そうだねえ。
君なんて未だに独り暮らしの部屋でさみしく
セルフ『ただいま・おかえり』やってるんでしょ?」 |
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鳴島
「私はそんな痛い人じゃないですぅ!!
確かに独り暮らしですけどぉ!!」 |
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光一
「そんな新生活だけど…………
いつの間にか会社では
『光一さん、生活大変らしいよ?』
『光一君、可哀想だからジュースぐらいあげるか?』
『光一さん、強く生きてね』
という声が聞かれるようになってきたね」 |
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鳴島
「うっわぁぁぁ…………」 |
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光一
「世の中色々あっても…………
結局金がモノを言うんだよなあー」 |
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鳴島
「そんな身もフタもない事を!?」 |
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光一
「はぁー…………
2億円くらい手に入ったら…………
まずは奨学金を全額返還して、
実家をリフォームして将来的に永続して住めるようにし、
5000万円は投資信託で老後の資金を稼いで……」 |
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鳴島
「マスター、妄想から帰ってきてくださーい」 |
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光一
「はっ……あー、ついつい本音が漏れたね」 |
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鳴島
「まったく、しっかりしてくださいよぉ。
痛々しくて見ていられないですよぉ」 |
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光一
「そうだそうだ。現実を見なくてはね!」 |
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鳴島
「そうそう。
そのイキですよぉ!!」 |
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光一
「やはり将来に向けていらない支出は切らないと。
まずは手近なところだねえ。
もっと仕分けできるところがあるハズ!」 |
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鳴島
「意外と節約しているようで、
無駄に使っているものもありますからねぇ」 |
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光一
「まずは君の給料かねえ?」 |
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鳴島
「……………………」 |
ブン!
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鳴島
「そこは無駄な支出じゃないだろぉ?」 |