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光一
「あれ?
って、おお、綾香君。おはよう。
あれー…………どこにやったかな?」 |
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鳴島
「マスター?
何かお探しですかぁ?」 |
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光一
「あー、うん。
財布どこやったかなって……」 |
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鳴島
「あちゃ…………
財布なくされたんですかぁ?」 |
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光一
「うーん…………
といっても、あるとしたら
自分の部屋か、店のバックヤードに……」 |
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鳴島
「!」 |
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光一
「あれー…………
このバックヤードにないってことは、
やっぱり部屋かな?」 |
10分後
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光一
「うーん…………
やっぱり部屋にないなあ……
とすると、店のバックヤードとしか」 |
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鳴島
「まだ見つからないんですかぁ?」 |
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光一
「うーん…………そうなんだよ。
あー、バックヤードにもないなあ。
また部屋見てくるわ」 |
10分後
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光一
「やっぱり部屋にはないなあ。
どこいったんだろ?」 |
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鳴島
「マスター、マスター!」 |
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光一
「ん?
何?」 |
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鳴島
「探し物はこれですかぁ?」 |
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光一
「おお、それだよ、それ!
よかったー……財布見つかって」 |
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鳴島
「よかったよかった。
で、マスター何かないんですかぁ?
お礼とか?
強いて言えば現金?」 |
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光一
「そういうのはストレートに言わないの。
まあ、いいや。見つけてくれたし。
うい。1割の2000円」 |
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鳴島
「うふふー。
やったやったぁ♪」 |
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光一
「それにしても、どこにあったの?
私の財布」 |
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鳴島
「あー、実はですねぇ…………」 |
<以下、回想>
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鳴島
「るんるん。お掃除お掃除♪」 |
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鳴島
「ん?
何かモップに突っかかった気が……」 |
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鳴島
「うぁ!?
財布……誰のだろ……
お、中身そこそこ入ってますねぇ……」 |
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鳴島
「とりあえず、私が預かっておきますかぁ」 |
ドタドタドタ!!
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鳴島
「ほえ? マスターかな?」 |
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光一
「あれ?
って、おお、綾香君。おはよう。
あれー…………どこにやったかな?」 |
<以上、回想終わり>
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鳴島
「てなわけでぇ、
バックヤード掃除中に財布を拾いましてぇ、
そこにマスターが『財布財布』って来たので、
マスターのかなぁ……と」 |
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光一
「ということは君は、
最初に私が入ってきた時点で、
財布を持っていたのかね?」 |
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鳴島
「平たく言えばそうですねぇ」 |
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光一
「で、その後何度も
部屋とバックヤードを往復している
私を見ていたのに、
声をかけなかったの?」 |
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鳴島
「なんとなくぅー♪」 |
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光一
「なんとなくではないわぁ!!
見つけていたなら、
さっさと言いなさい!」 |
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鳴島
「ふにゃ!?
そ、そんな怒んなくても……」 |
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光一
「そうやってね、
人の探し物をひそかに持っていて、
その人が探し回っているのを見て
それでほくそ笑むのは、
私の上司だけで充分だよ!!」 |
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鳴島
「あー、
学校でも同じことされたんですかぁ?」 |
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光一
「同じこと……ってことは、
君は私が財布見つからず焦ってるの尻目に、
楽しんでいたって事?」 |
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鳴島
「あ!?」 |
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光一
「あー、もう怒ったもんね。
さっきの2000円返しなさい!!」 |
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鳴島
「イヤですよぉ!!
それに、私が見つけてあげた事実に
変わりはないじゃないですかぁ!」 |
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光一
「なら、さっさと困っている人に返しなさい。
ほら、2000円返す!!」 |
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鳴島
「うー……2000円とられた上に、
怒られたぁ…………」 |
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光一
「人聞きの悪いことを言わない!!
君が悪いんではないかね!」 |
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鳴島
「ぶーぶー!!!」 |
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光一
「ぶーぶー……じゃないよ、まったく」 |