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鳴島
「いつもは金曜日の日付変更時に更新なのに、
今日は木曜日の夜に更新という、
ちょっと変わった日なのですよぅ」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「木曜の仕事上がり後、急きょ更新して、
これからマスターはお嫁さんと実家へ戻りますぅ」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「金曜からは、マスターの両親を伴って、
お嫁さんの実家に行き、
親御さん同士の対面を行ってきますのでぇ、
今日は異例の木曜日夜更新なのですぅー♪」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「あ、マスター。
お疲れ様ですぅ。こんばんわー」 |
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光一
「綾香君? さっきから明後日の方向に
何をブツブツ言っているのかね?」 |
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鳴島
「え? 私何か言ってましたかぁ?」 |
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光一
「……まあいいけど…………
『こんばんわ』で始まるのは珍しいねえ。
何年ぶりだろ…………」 |
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鳴島
「そんなわけでぇ、今日はもう仕事終わり―♪
ふんふんふ〜ん♪」 |
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光一
「うむ。お疲れさまでした」 |
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鳴島
「およぉ?」 |
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光一
「どうしたかね?」 |
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鳴島
「マスター、テーブルの上に何か置いてありますよぉ。
お客様の忘れものですかねぇ?」 |
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光一
「うん? どれだね?」 |
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鳴島
「ほらぁ、この箱ですよぉ……
なんだろぉ? ちょっと開けてみますねぇ」 |
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光一
「あ、綾香君。ちょい待ちたま…………」 |
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鳴島
「入れ歯?
あとは……洗浄剤?」 |
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光一
「……………………」 |
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鳴島
「お客様の中の、おじいさんが忘れて行ったんですかねぇ?
今頃困ってるかもぉ…………」 |
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光一
「綾香君?」 |
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鳴島
「というわけでマスター、
お客様の忘れものですよぉー」 |
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光一
「綾香君」 |
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鳴島
「んぅ? 何ですかぁ?」 |
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光一
「これ、入れ歯じゃないよ」 |
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鳴島
「え? いやいや、そんな引っかけには乗りませんよぉ。
どう見ても……入れ歯ですよねぇ、これ?」 |
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光一
「入れ歯にしては、口にはめるための金具がないだろ?」 |
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鳴島
「言われてみればそのような気もぉ……」 |
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光一
「これはナイトガードと言って、
寝る前に歯に被せて、
歯ぎしりなどをふせぐ道具だよ。
歯ぎしりや、顎関節症、頭痛などの治療にも使われるよ」 |
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鳴島
「へぇー、入れ歯に見えますのにねぇ……
入れ歯じゃないんですかぁ」 |
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光一
「そうそう」 |
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鳴島
「何でマスターがそんな事を知ってるんですかぁ?」 |
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光一
「ん? いや……そのだね」 |
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鳴島
「あ!!
よく見たら、マスターの名前書いてあるぅ!」 |
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光一
「まあ、そう。私の『ナイトガード』だね」 |
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鳴島
「マスター……三十路直前で……
とうとう入れ歯とはぁ……ご愁傷様ですぅ」 |
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光一
「入れ歯じゃなくて、ナイトガード!!
私はまだ1本も歯を失っていません!!
さっき教えたばかりなのに、もう忘れるとは……」 |
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鳴島
「いや……でも、やっぱりぱっと見……
入れ歯に見え……ププッ…………」 |
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光一
「私の嫁と同じ笑い方をするな!!」 |
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鳴島
「いや……それにしてもぉ……ぷぷ、くっ……」 |
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光一
「だから、入れ歯じゃないと言っている!!
これは老若男女関係なく使っているものだよ!」 |
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鳴島
「いや……まぁ、しかし…………
誤解を招きやすい代物ですねぇ。
誰が見ても、"入れ歯"としか思いませんよぉ」 |
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光一
「だからね、違うと言っているではないか?」 |
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鳴島
「まぁ……分かりましたけどぉ…………
いやぁ、なんか色々ご愁傷様と言いますかぁ……」 |
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光一
「だから、私はまだ1本も歯を失っていない!」 |
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清香
「こんばんわー!!
お姉ちゃん仕事終わったー?
今日お姉ちゃんの部屋に泊まりたいんだけど……
…………あれ?」 |
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光一
「おお、清香君。こんばんわ」 |
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鳴島
「んぅ? 泊まりに来るの?
いいよいいよぉー♪」 |
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清香
「あれ? 入れ歯ですか?
誰かお客様の忘れ物ですか?」 |
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鳴島
「あ、それマスターのだよぉ!」 |
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清香
「……………………」 |
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光一
「清香君、話を聞いてくれたまえ」 |
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清香
「まあ、今では歯の悪い若い人もいますから。
歯が無くなったなら、入れ歯でも仕方ないですよ」 |
違う、そうじゃない
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光一
「違う! そうじゃない!!」 |
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清香
「私はそういうの気にしないから大丈夫ですよ。
男性の判断基準は中身だけですから♪」 |
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鳴島
「さすが、私の妹!! 偉い!!」 |
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光一
「綾香君、君も誤解に油を注ぐな!!
清香君、まずはよ〜く人の話を聞く事だよ」 |
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清香
「はい。どうぞ。
全然私は気にしませんので♪」 |
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光一
「いや、だから…………」 |
違う、そうじゃない
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清香
「だから気にしませんってばー♪」 |
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光一
「……………………」 |