|
鳴島
「おっはようございます〜♪」 |
|
光一
「おはよう」 |
|
鳴島
「いやー、段々梅雨っぽくなってきましたねぇ」 |
|
光一
「梅雨……雨……ジメジメ……」 |
|
鳴島
「なんですかいきなりぃ!?」 |
|
光一
「あー、この後は……日本特有のうだるような暑さ。
湿気があって暑くて…………
はあ、地球が滅べばいいのに……」 |
|
鳴島
「マスターの身勝手で滅ぼさないでくださいよぉ!」 |
|
光一
「だって、これからは過ごしにくい季節だよ?
私はジメジメと暑いのが苦手なのだよ」 |
|
鳴島
「んもぉぅ…………
梅雨には梅雨の、夏には夏の良さがありますよぉ」 |
|
光一
「何があるというのかね?」 |
|
鳴島
「梅雨時って雨が多いからぁ、
綺麗な色んな傘を使えますよぉ♪
今日は買ったばかりの傘を差してきましたもん♪」 |
|
光一
「あんまり共感できないのだけど……」 |
|
鳴島
「もう……女心が分からないですねぇ……」 |
|
光一
「あー、もしも戻れるのならば、
秋にでも戻らないものかねー……」 |
|
鳴島
「そんな無茶な…………」 |
|
光一
「そうでなければアレだよ!!」 |
|
鳴島
「あれ?」 |
|
光一
「暑くてジメジメして何も楽しくない夏!!
仕事がますます苦痛になる夏!!
あー……学生時代はこれほど楽しい時期はなかった」 |
|
鳴島
「そりゃぁ……夏休みありますもんねぇ……」 |
|
光一
「あー……輝いていたあの日々……
10年前の大学1年生当時、私は19歳8カ月。
あの楽しく希望に満ちた日々に帰りたい……」 |
|
鳴島
「気持ちは分かりますけどぉ…………」 |
|
光一
「今の記憶を全部持って10年前に戻りたい!
日経新聞とか株価データ全て持って10年前に!!
そうしたら、奨学金をつぎ込んで、
今頃は数億円の資産を持って…………
老後も安泰だったろうになあ…………」 |
|
鳴島
「…………相当重症ですよぉ…………」 |
|
光一
「会社の先輩は『いつに戻りたい?』っていうのに、
『大人の頭脳で0歳に戻って、
財産を築き上げておきたい』って言ってたよ」 |
|
鳴島
「これだから大人って…………」 |
|
光一
「君も四捨五入で30歳の20代半ば……
いい年した大人(になりきれない)ではないかね!」 |
|
鳴島
「年齢の事はちょっと置いておいて、
心の中で失礼な事思いませんでしたかぁ?」 |
|
光一
「気のせい気のせい。
君の思い込みの激しさのなせるワザだね!」 |
|
清香
「おつかれさまでーす!」 |
|
光一
「おつかれさま。
あれ? 今日は学校どうしたかね?」 |
|
清香
「あー…………」 |
|
鳴島
「サボリ?」 |
|
清香
「そんな直接的に言わないでよ〜」 |
|
光一
「あんまりサボリは感心しないような…………」 |
|
清香
「その代わり、ここで勉強してますので」 |
|
鳴島
「それで高校の成績学年トップクラスなんだよねぇ……
弓道部の成績もいいし……なんでなんだろぉ」 |
|
清香
「ふふーん、要領要領♪」 |
|
光一
「あー、高校時代か―。
高校の頃も夢があったなー……
大学か高校の頃に戻りたいねえ……」 |
|
清香
「……………………」 |
|
光一
「清香君、それは何かね?」 |
|
清香
「赤本ですけど。
東大と慶応と…………」 |
|
光一
「あれ? 受験生だっけ?」 |
|
鳴島
「いやぁ……確か高校1年生ですねぇ」 |
|
清香
「あー、高校の授業飽きちゃって……
もう教科書の内容、大体理解しちゃったから、
別の事でもしてようかなーなんて」 |
|
鳴島
「マスター…………
こんなハイレベルな高校生を見て、
高校時代に戻りたいですかぁ?」 |
|
光一
「戻っても落ちこぼれになりそうな気がするねえ……
なんか、自分がダメ人間に見えてきたのだが……」 |
|
清香
「ハイレベルなんかじゃないですよー!
こんなの解けたって、お金にもならないんですから」 |
|
鳴島
「そう言えるのがぁ…………」 |
|
光一
「才能ってやつだねえ…………
こればっかりは昔に戻っても手に入らないわな。
所詮、戻るの自分自身だし……スペック同じだし」 |
|
清香
「そんなに難しいのかなー、これ?」 |
|
光一
「綾香君……清香君は本当に君の妹なのかね?
雲泥の差があるように思うのだが?」 |
|
鳴島
「妹ですよぉ…………
才能の差は認めますけどぉ……」 |