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光一
「いやー……ホント恐ろしい事だったね」 |
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鳴島
「何がですかぁ?」 |
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光一
「いや、昨年冬から夏にかけてね、
部屋中でゾウムシが大量発生してね」 |
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鳴島
「はあ」 |
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光一
「その規模たるや…………
毎日50匹ベースで潰しても、
翌日にはまた部屋中にいるのね」 |
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鳴島
「うわぁ…………」 |
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清香
「原因は分からなかったんですか?」 |
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光一
「最初は『米びつ』を疑ったんだけどね」 |
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鳴島
「あー……
『蛾が大量発生』してたくらいですしね」 |
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光一
「でも、米びつの中には一切、
ゾウムシがいなかったんだよね」 |
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清香
「一般的にお米に沸く虫のイメージですけどね」 |
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光一
「うん……で、ある日…………
ウチではお米をほとんど食べなくなったので、
友人に余ったお米を分けようと、
玄関先に置いておいた米袋に手を出したのね」 |
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鳴島
「それは…………
米びつに蛾が大量発生してたせいで、
『食事中に、蛾の幼虫を食べたかも』
って恐怖体験から…………」 |
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清香
「お米を食べなくなったって事ですか?」 |
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光一
「いやいや、健康のためにお米を食べなくなった。
炭水化物を抜くようになったので、
お米が自然に余るようになったんだよ」 |
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鳴島
「まあ、余った物を必要な人に分けるのは、
悪い事じゃないですねえ」 |
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光一
「で、米袋を開けて…………
私の手は止まったね…………」 |
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清香
「どうしてですか?」 |
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光一
「お米がみんな……真っ黒くなってた」 |
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鳴島
「え?
お米が腐ったって事ですか?」 |
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光一
「いや…………」 |
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清香
「では、どういう事ですか?」 |
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光一
「米袋の中の黒い物は…………
全部もぞもぞ動いているのね…………」 |
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鳴島
「んぅ?」 |
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光一
「米袋の中にはね…………
数千……いや、数万匹のゾウムシがいたんだ」 |
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鳴島
「数万!?」 |
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光一
「周囲の壁や天井を見たら、
やっぱりゾウムシがうぞうぞと…………」 |
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清香
「うわあ…………」 |
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光一
「これが発生源だとはっきりしたね。
そりゃあ玄関先に万単位のゾウムシがいれば、
毎日部屋で50匹程度殺しても、
いくらでも沸いて出てくるよね?」 |
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鳴島
「でしょうねぇ…………」 |
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光一
「今思い返しても…………
米袋の中身の真っ黒いゾウムシ達が……
袋内部を埋め尽くして動いている姿、
思いだすと背筋が凍りそう…………」 |
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鳴島
「私も考えただけで…………
身の毛がよだちそうです…………」 |
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清香
「で、結局どうしたんですか?」 |
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光一
「外に天日干しにして駆除する……
ってレベルじゃなかったからね。
即日廃棄処分したよ」 |
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鳴島
「あー、もったいない」 |
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光一
「いやいや、精神衛生上…………
とても耐え得る光景ではなかったから!」 |
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清香
「お米にゾウムシが付く話は、
そんなに珍しくはないですが…………」 |
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鳴島
「数万匹のゾウムシに、
米袋から部屋中を占拠されるのは、
まず無いでしょうねえ…………」 |
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光一
「と言う事も重なり、
ますます我が家は白米ご飯から遠ざかっているね。
米びつに『蛾と幼虫の大群』
米袋に『数万匹のゾウムシの大群』
…………ああ、もうこりごり!!」 |
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清香
「で、結果的にはますます炭水化物抜きの食事になったと」 |
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光一
「炭水化物抜きの食事にしていたからこそ、
余ったお米にゾウムシが大繁殖した…………
って結果論でもあると思うけどね」 |
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鳴島
「経験したくない恐怖体験ですねぇ」 |
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光一
「周囲の人に聞いたら、
お米は冷蔵庫で保存するのが良いそうだ」 |
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鳴島
「あー、その方がよさそうですねぇ。
虫も発生しないだろうし」 |
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光一
「あまり食べないけど、たまに食べるお米は、
それ以来、冷蔵庫に保管されているよ」 |
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清香
「まあ、仕方ないですかね」 |
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光一
「綾香君、君も帰ったら…………
お米にゾウムシの大群が発生してるかもよ?」 |
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鳴島
「ちょっとぉ!!
気持ち悪い事、言わないでくださいよぉ!」 |