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鳴島
「うわっ!?
エンガチョッ!!」 |
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光一
「人の顔を見るなり…………
何だね? それは?」 |
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鳴島
「だってマスター…………」 |
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光一
「何かね?」 |
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鳴島
「うわっ!!
近づかないでくださいよぉ!
汚い!!」 |
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光一
「な!?
何でいきなり……
『近づかないで!』
『汚い!』
なんて言われねば……」 |
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鳴島
「だってだって…………」 |
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光一
「だって?
何かね?」 |
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鳴島
「マスター…………
ゴキブリと……その……
ごにょごにょ……」 |
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光一
「ん?
私が油虫と?
何だね?
何を言ってるか聞こえん」 |
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鳴島
「ゴキブリと……
……そのぉ……
……キス……
したんですよね?」 |
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光一
「ぶぅぅぅぅぅぅ!!
な、何だねそりゃぁ!?」 |
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鳴島
「うわっ!?
噴出さないでください!
き、汚いですよぉ……」 |
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光一
「……ここ、
仮にも喫茶店なのだが」 |
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鳴島
「んぅ?
そうですねぇ」 |
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光一
「喫茶店の中で、
油虫…………
のことを口にするのは止めたまえ」 |
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鳴島
「だってぇ…………」 |
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光一
「お客様に聞かれたら……
店の評判がガタ落ちするわ!」 |
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鳴島
「あ!?」 |
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光一
「ふう…………
まあ、まだ開店直後だから、
お客様いないけどね。
お客様来てから、
間違っても話題にするなよ?」 |
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鳴島
「は〜い…………」 |
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光一
「で?
何がどうなって、
そのような話になったのかね?」 |
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鳴島
「だってぇ…………
マスターがご自分の日記でぇ、
ゴキブリとキスしたって……」 |
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光一
「誰がするかぁ!!
『キスをする』
という表現は能動態!!
それじゃあ……
『ゴキブリ好きでぇ
キスしちゃいましたぁ♪』
みたいだろうがぁ!!」 |
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鳴島
「違うんですかぁ?」 |
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光一
「何からな〜にまで
ちがぁぁ〜う!!!!」 |
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鳴島
「だって日記には…………」 |
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光一
「間接的に
顔面でゴキブリに触った!
とあるだろうがぁ!!」 |
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鳴島
「でもそれって……
ゴキブリとキス?」 |
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光一
「違うだろうが!!
よ〜く私の日記を見たまえ!
『ゴキブリを主食にするクモ』
に、この私が
『就寝中、顔を這いずり回られた』
そのために、
『ゴキブリに触ったクモに顔面で』
触ったことになるから……
『ゴキブリに間接的に触った』
となってるだろうがぁ!」 |
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鳴島
「あ、私の勘違いでしたぁ♪」 |
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光一
「ふむ。
わかればよろしい」 |
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鳴島
「つまりぃ…………
クモにキスされちゃった♪
ってことですねぇ」 |
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光一
「『されちゃった♪』
じゃないだろうがぁ!!
天井から落ちてきたクモに、
顔面を這いずり回られた……
ってことだろう!」 |
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鳴島
「うぇ!?
ゴキブリ食べてるクモに……
その足で顔を這われた!?」 |
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光一
「……それで合ってるが……」 |
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鳴島
「うわぁぁぁ!!
汚い汚い!!
最悪ですぅ!!」 |
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光一
「そう言われる
私の気分が最悪だ!!
というか、
顔洗ってるんだから、
汚いワケがあるかぁ!!」 |
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鳴島
「いや、イヤァ!!
近寄らないでぇ!!」 |
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光一
「お、おい…………
人の話を聞いてるか?」 |
カランコロン♪
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お客様A
「ども……って、あれ?
鳴島さん泣いてるの?」 |
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光一
「いらっしゃいませ。
あ、これはですね…………」 |
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お客様A
「何? マスター……
また何かやったの?」 |
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光一
「いえ……それが……」 |
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鳴島
「ゴキブリとクモに
顔面で間接キスなんて……
マスター!!
信じられません!!」 |
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光一
「おい!!」 |
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お客様A
「……マスター……
また、後で来るわ……」 |
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光一
「あ、お待ちに…………」 |
カランコロン♪
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光一
「あ……………………」 |
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鳴島
「汚い汚いですぅ!!
最低ですぅぅぅぅ!!」 |
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光一
「少なくとも、君は……
ウェイトレスとして最低!!」 |