光一
「あー眠い…………
お、綾香君、おはよう」鳴島
「あ、挨拶なんてしてあげないですからね！」光一
「は？ 朝から何寝ぼけてんの？
さっさと目を覚まして……仕事仕事」鳴島
「し、仕事なんてしてあげないんだから！」光一
「じゃあ、クビだ。さようなら」鳴島
「え！？ ちょ、待ってくださいよう！
いきなりクビって…………」光一
「いや……働かないって従業員を
雇うような余裕はないんだけど……」鳴島
「は、働きます。働きますよう！
今の流行を追及しただけですぅ！」光一
「何？ 流行？」鳴島
「はい♪」光一
「仕事しなさいと言われて、
『仕事なんてしない』って公言……
ああ、そういうことね」鳴島
「わかりましたかぁ♪」光一
「ニートね。
わざわざ追求せんでも……」鳴島
「違いますぅ！！
ニートじゃなくて……
ほら、あるじゃないですかぁ！」光一
「何？
少なくともさっきまでの会話の……
『挨拶なんてしない』
『仕事なんてしない』
どう聞いても、無気力な人間の言い草。
他にどう解釈しろと言うのかね？」鳴島
「むぅ〜…………
ほら、最近あるじゃないですかぁ」光一
「だから、ニートでしょ？」鳴島
「そうじゃないですぅ！！」光一
「はいはい。で、何？」鳴島
「好きなのに、好きじゃないって言ったり、
素直にならないキャラがあるじゃないですかぁ」光一
「あー…………
何、さっきのはツンデレのつもりですか？」鳴島
「どっからどう見ても
立派なツンデレでしょうよぉ」光一
「いや、私にはどっからどう見ても
立派なニートにしか見えなかったが
試しに、このセリフ読んでみて」鳴島
「働いたら負けかなと思ってます！」光一
「おおー、似合う似合う」鳴島
「って、何を言わせるんですかぁ！！
ふしゅるるるる！！！！」光一
「変な奇声をあげるなよ。
さっきのセリフ非常にイキイキしていたぞ」鳴島
「ヒドイ…………
せっかくここ喫茶店だから、
流行の『ツンデレ喫茶』をしようかと……」光一
「現実にやられると
非常にウザイので
やめてください。売り上げに響きます」鳴島
「いい考えだと思ったのにぃ……
先覚者は常に理解されない……」光一
「最初からそういう客層相手ならともかく、
そうでない店がやったら、潰れるよ？
完全な経営方針のミスではないか」鳴島
「ちぇ…………
お客様にツンツンする方法
せっかく徹夜で考えたのに」光一
「…………危なかった。
今止めなかったらクレームが……。
そういえば考えたって…………
念のために聞くよ？」鳴島
「はい？」光一
「お客様にどう対応するつもりだったの？」鳴島
「はい。例えば…………
メニューを投げつけて、
『さっさと注文してよ！ 暇じゃないの』
とか…………
ガチャンって音を立ててカップ置いて
『さっさと飲んでよね！ うざいから』
みたいなことを…………」光一
「間違っても客商売でやらないでくれ。
何で『上から目線』なの！！」鳴島
「え〜？ 上からぁ？
ツンツンしてるだけなのにぃ？」光一
「『さっさと注文してよ』
『さっさと飲んでよね！』
命令形だし、上から目線だぞ？」鳴島
「う〜ん…………」光一
「高校時代に国語成績がアヒルだった
君には分からないか……うーん」鳴島
「う、うるさいですねぇ……」光一
「じゃあ、この看板が上から目線なのは、
わかるよね？」鳴島
「うわぁ…………
『売ってやっからね』とか
『駆除してあげるよ』って……
上から目線……良いのかなあ？」光一
「私が栃木県で撮影したものだが……
それが上からって分かるのに、
どうして自分の発言が上からと分からん？」鳴島
「え？ 上からじゃなくて
ツンデレをやってみたつもりなのにぃ」光一
「ある種紙一重だと思うが……」鳴島
「うーん……上から目線かなあ？
もうちょっと工夫してツンデレを……」光一
「だからしなくて良いと言っている！
ウチは普通の喫茶店なの」鳴島
「ぶぅ〜！」光一
「ウザイ！ ふくれない！
これだから、国語力の無いのは……」鳴島
「何度も持ち出さないで下さい。
私がバカみたいにみえるじゃないですかぁ！」光一
「いや、バカもなにも…………
バカだって言っているんだよ？」鳴島
「がぁぅぅぅぅぅぅ…………！！
バカじゃないもん！！
キシャァァァァ！！！！」
