彫刻刀と図工

小学校四年生時


さて、

みなさんは小学生のときに


「図画工作の時間」


って授業でありませんでした?










その図画工作の時間に、


版画


ってありますよね?

今あるのかどうか知りませんが……










木の板に何かの絵を描いて、

それを彫刻刀で削り、

その上でインクをつけて、

そうしてから「ばれん」で擦ると、

あら不思議、

版画が完成してしまったわ♪

ってヤツですね。










あの彫刻刀で削るのはもちろん注意が必要です。

彫刻刀にも種類が色々あって、

深く削るための「三角刀」

丸みを帯びた線を削る「円刀」

……ってあとは知りませんが……

ともかく全員集合って感じでケースに5〜6本入っているワケです。










中には、

彫刻刀を投げて遊ぶ輩もいますが、

彼らには教師の鉄拳制裁が飛んだわけですね♪

ああ、懐かしい……










さて、

そういった意味でも彫刻刀の扱いには注意が必要ですが、

彫刻刀が危ないのは、

単にみんなで投げ合って遊ぶからではないです。

他にもあるワケですね。




















ザシュザシュ


光一「〜♪」


と、鼻歌交じりに、

木版を彫刻刀で削っていたワケです。










ザシュザシュ


光一「〜♪」










少年時代には、

木版が削れていき、

段々と完成系に近づいていくのがたまらなく快感でした。

何かを作り出すことの楽しみというヤツでしょう。










そうして少年時代の私は、

我も忘れて削っていたわけです。




















































ざしゅざしゅ











ザクゥゥ!!


光一「ぴぎっ!!」

















ゴロゴロゴロゴロ


光一「くぅおおおおぉぉ!!」


友人「どうした光一!!」










































友人「新たな遊びか!?」






























違います!!










光一は、

はたから見て愉快な遊びに見えたかもしれませんが、

勢いあまって、












彫刻刀を

自分の左手の親指に刺してしまったのです!!




















友人「うわ、すっげー血♪」





























喜ぶな!!


はしゃぐな!!




















ともあれ、痛いです。

ざっくりと親指をえぐったワケで……

担任はさっきの友人に保健室へ付き添うように指示。

私は友人の付き添いで保健室へ……




















光一「痛てー……」


友人「うわー、彫刻刀って痛そうだな。

まあ、オレは授業サボレて万々歳♪


光一「……」



















一瞬殺意が芽生えた光一少年でしたが、

寛容な心は大人になってからの好青年光一と変わってなかったので、

黙って保健室へ……




















保健室の先生「あらー、かなり深い傷口ねえ。

あとちょっとで貫通よ


光一「!?」


友人「へー、スッゲー!!」




















友人、

お前は黙ってろ!!



















とまあ、そんなこんなで、

かなりきっつく包帯などを巻いて止血。

その上で教室に戻り、

木版削りの続きを始めました。

図画工作の時間は二時間連続だったので、

まだ結構時間もありました。










で、

さっき貫通しかけるほどに深く彫刻刀の刺さった左手の親指……











ジンジンジンジン


とまるで音を伴うような感じで、

私に激烈な痛みを断続的に伝えてきました。










幸いなのは、

左手は木版を支えているだけなので、

包帯でぐるぐる巻きにされていても、

問題なく木版が削れることでした。

第一、削るのには右手があれば事足りましたし……











ざしゅざしゅざしゅ


光一「〜♪ ッ!! 〜♪」


こうして、

断続的に襲ってくる傷口の「うずき」に耐えて、

ひたすら懸命に自分の芸術を追及していたワケです。


























































ザシュウウゥゥゥゥ!!


光一「ぐぎゃあぁぁぁ!!」


ゴロゴロゴロゴロ


友人「どうした光一!!」







































友人「やった!! また保健室に行けるぜ!!

先生、光一がまた彫刻刀でやりました!!

やりましたよ!!」





















親友が激痛でまたも転がっているのを……

「やった」

とは貴様もなかなかの命知らず……










しかし、












しかし、

報復どころでは、

それどころかツッコミをしている余裕もありません!!

なんせ、

一時間の授業時間で


2回も


彫刻刀で指を刺したのですから……











しかも、










同じ左手の


今度は人差し指……





















保健室の先生「あら、また来たの?

って、また彫刻刀刺したの?」


友人「まださっきから一時間も経ってないんですけどねえ」


光一「お前は黙れ」
(ようやく言えた)











保健室の先生が、

さっき治療した親指の隣である人差し指を治療します。




















保健室の先生「あら、また今度も

貫通しかけているわね


光一「!?」


友人「うわー、

一時間で二度おいしいじゃん!!

すげーよ!!


光一「お前は黙れー!!」



















多分……











多分、

全国の小学校広しといえども、

一時間のうちに、


2回も


彫刻刀で、


同じ手の隣り合う指を、


貫通しかけるほどに刺した


のは私だけだと思うのです……











全国の小学生の諸君には、

ぜひとも気をつけてほしいと思うのです。




















ちなみに、

保健室についてきた友人は、

廊下で足をかけて転ばしておいたのです。


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