ロケット花火
中学2年生当時
みなさん、ロケット花火ってご存知ですよね?
ええ、あの火をつけると
「ピヒュー」
って飛んでいく花火ですね。
光一自身は小さいころから花火は大好きでした。
で、ロケット花火はとりわけ何だか面白かった。
私が小学生のころ、
従兄弟の家に泊まりに行くと決まってやったのも花火。
従兄弟とのロケット花火の使用方法は、
@ロケット花火をビンの中に入れる。
A導火線点火
B息を吸い込む。
「パトリオットミサイル発射ー!!」
ピヒューン
パパン!!
と、ここまでは非常にゴク普通の遊び方かもしれません。
しかし、
ロケット花火に魅せられた少年たちは、
さらなる領域へと踏み込んでいったのでした。
これは光一がまだ中学2年生という、
少年時代の思い出です。
友人A「花火やろーぜ」
そう私の友人Aが夏休みの昼下がりに提案してきました。
Aは、私とともに様々な悪行を重ねてきた悪友です。
「抜くのが大好き」参照
当然光一は提案を受け入れ、
近所のK君も誘って花火を買い込みに行ったのです。
田舎に住んでいる私たちですし、
当時はコンビニなどありませんでしたから、
自転車で15分くらいかけて花火を買いに「模型店」へ行きました。
おばあちゃんが昔からやっている店で、
何故かなんでも置いてある模型店でした。
で、
A「できればたくさんあった方がいいよな」
と、
店にあったロケット花火という花火を購入。
やはり夏であったためか、
すでに買われていったのかやや少なくなっていたものの、
店に残っていた50本をゆうに越すロケット花火をバラで購入したのです。
さて、夜です。
ロケット花火を普通にしたのではツマラナイ。
そう考えた私たちは、
「ロケット花火を一斉に飛ばさないか?」
という方向へ話を進めたのです。
しかし、
手で持ってやる分には発射できる本数などたかがしれている。
土に突き刺しても一気に火をつけられる本数はたかがしれている。
では、どうする?
A「ロケット花火の導火線を、全部一本にまとめたらいいんじゃねえ?」
光一「それいいね」
K「じゃあ、早速」
と、三人は取り出したロケット花火を一つの束にしました。
50本のロケット花火を束にしたのです。
それはすごい光景でしたよ。
というか、50本を一つの束にするのにはムリがあったので、
1ダースずつの束を4つ作り、
それらの束ねた導火線を別の導火線で接合。
これで、火をつければ一斉に48本のロケット花火が点火するわけです。
ちなみに、
1束12本とはいえ、
ロケット花火の束は例えれば花束のようになっていました。
こう花が開きかけて外側のやつがいくらか反っているような感じでしょうか。
A「よし、火をつけるぞ」
3人の少年は、
ワクワクドキドキしながら点火したのです。
48本のロケット花火が、
一斉に夏の夜空に舞うのを想像しながら。
A「点火!!」
シュルルルルルルル……
導火線に点いた火を目で追う少年たち。
その目は純真だったと思います。
シュルルルルルル……つ
と、導火線の火が4束48本のロケット花火に到達した瞬間です。
ヒュルルルウル
ヒュルルルル
ピュヒュルルル
パン、パパン……ヒヒュルルル……パパン、パンパン
ヒュルルルル
大空に舞う大量のロケット花火。
そして……
A「うわぁぁぁぁ!!」
光一「ひいいいいい!!」
K「あ、危ねー!!」
ヒュルルル
ヒュルルル
あらぬ方向へと飛んでいくロケット花火の群れ。
慌てて逃げ出す少年3人。
夏の野外に響き渡る音音音!!
光一「バランスが悪かったんじゃないのか!!」
そう叫びながらもやはり逃げる逃げる逃げる。
ロケット花火は全てが上を向いていたわけではありませんでした。
で、
火をつけられたロケット花火は、
まったく予想のできない方向へ飛びまくり……
中には周辺の民家へ飛んでいくものも……
そして、ロケット花火が設置されていた場所は、
煙幕によって視界が悪くなっている始末。
さらに、
ロケット花火は設置した少年たちを容赦なく打ちのめす。
背を向けて走っている少年たちの背後から、
それこそ無数のロケットが飛んでくる。
身体のあちこちをかすめて飛んでいくロケット。
身体の近くで「パン」とはじけるロケット。
外での騒ぎに周辺の民家から出てくる人々。
A「…………」
光一「…………」
K「…………」
少年たちは、
大人たちから逃げるように夜の闇にまぎれて消えていったのでした。