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鳴島
「あらあら〜…………」 |
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光一
「……という事があったのさ……」 |
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鳴島
「それはお疲れ様でしたぁ」 |
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光一
「まったく…………
雨にも負けず風にも負けず……
暴風雨にも関わらず、
頑張って仕事に行ったのに……」 |
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鳴島
「学校に行ってみれば、
生徒の大半が登校できなくて
結局休校とはぁ…………」 |
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光一
「嫌な予感はしてたんだよ?
ただえさえでも茨城県の電車は、
雨風に弱い特徴があるから……」 |
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鳴島
「南北に長い鉄道で、
河川をいくつもまたぐ上に、
海岸線等の風の強い場所を
多く走行していますからねぇ……
JR常磐線はぁ……」 |
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光一
「天気がめっさ晴れていても、
別の地域で先日の雨の増水とか、
海岸部で風が強い…………
なんて理由で遅延することもよくあるしね」 |
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鳴島
「で、電車はどのくらい遅れていたんですかぁ?」 |
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光一
「電車で通勤してきた先生は、
2時間くらい遅れてたって言ってたぞ」 |
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鳴島
「2時間も!?」 |
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光一
「まあ、
生徒も3割くらいしか来なかったし……」 |
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鳴島
「そりゃぁ……またぁ……」 |
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光一
「私だって、
6時起きの眠い眼をこすり……
しかも当日体調は悪くて……
休みたいと思いつつも、
授業を受けに来る生徒がいるわけで……
それで気力を振り絞って頑張って行ったのに」 |
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鳴島
「しかも、
暴風雨で車の事故を起こしそうになったり、
ずぶ濡れになって、
風邪で崩している体調を
さらに崩しかけたのに…………」 |
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光一
「学校に着いて、部屋で授業準備していたら、
教務主任から内線がかかってきて、
『休校にします』だからねぇ……」 |
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鳴島
「まさに、骨折り損のくたびれもうけ……」 |
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光一
「どうせなら、
仕事行く前に連絡が欲しかった……
何のために仕事行ったんだ、私」 |
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鳴島
「そうすればぁ、
暴風雨でツライ思いをすることもなく、
休むことができたのですけどねぇ……」 |
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光一
「なんとか登校して来た生徒たちの下校後も、
せっかく仕事に来たのに、
このまま帰るのはもったいないと思って、
プリント印刷したり、
結局昼まで仕事してから帰ったよ」 |
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鳴島
「お、勤労者!!」 |
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光一
「でも、私は非常勤講師だから、
授業をやった分しかお金貰えないんだよ……
つまり…………」 |
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鳴島
「もしかしてぇ…………
朝早く来て仕事を昼までしてたのに……」 |
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光一
「そう!!
授業はしていないから、
お金は一切もらえない……
つまり、タダ働きしてきたの……結局」 |
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鳴島
「あー……………………
そう考えると、スゴイ損した気分に……」 |
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光一
「昼飯代とかガソリン代とか……
その日は朝早くから仕事しようと思って、
高速道路も使ったから……
その高速代も含めて……」 |
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鳴島
「まさか……仕事に来たことで……」 |
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光一
「そう……仕事に来たことで、
却ってお金がマイナスに…………
まさに働いてもお金が減っていく
ワーキングプア……だったわけよ」 |
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鳴島
「うわぁ…………
なんともイヤですねぇ……」 |
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光一
「常勤や教諭と違って、
こうやって臨時休校になったりすると、
そのまま給料減少に繋がるのが、
非常勤のツラさだよねぇ……」 |
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鳴島
「授業時間外で働いても、
一切お金もらえないんですもんねぇ……」 |
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光一
「授業時間より多い時間、
実際には働いているんだけどねぇ……
まあ、手頃な労働力だからねぇ」 |
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鳴島
「まあ、確かに報われていませんがぁ、
こうして授業を行う経験値をためていればぁ、
将来的には財産になりますしぃ」 |
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光一
「そう……将来、教員採用に受かったとき、
財産にできるんだ……
と言い聞かせて頑張ってる」 |
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鳴島
「そうでもないと、
正直やってられないですよねぇ」 |
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光一
「そうなんだよねぇ…………
貯蓄も全然たまらないし……
このままだと将来お先真っ暗だから」 |
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鳴島
「そういえばぁ、風邪と言えば……
もう治ったんですかぁ?」 |
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光一
「それがねぇ、
治りかけても、授業で結構声だすでしょ?」 |
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鳴島
「あー、それでまたノドを痛めて……
なかなか治らないとかぁ?」 |
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光一
「この3週間くらい、ずっと治ってないね。
まあ、風邪が治りにくいのは
職業病みたいなものだし、
医者からもそう言われているからねえ。
ますます医者代がかかる……悪循環」 |
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鳴島
「ご愁傷様ですぅ…………」 |
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鳴島
「と、あっ!!
思い出しましたぁ!」 |
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光一
「ん?
何を?」 |
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鳴島
「昨日マスターの誕生日でしたねぇ♪
おめでとうございますぅ!!」 |
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光一
「おお、そうだそうだ。
ありがとう!!」 |
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鳴島
「とうとう26歳…………
20代も折り返しにかかりましたねぇ。
折り返しの記念すべき年ですよぉ♪」 |
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光一
「………………………
なんか、すごい微妙な祝い方なんだが……
折り返しって…………」 |
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鳴島
「アダルティな30代に
ますます近づきますねぇ♪」 |
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光一
「それって良いのか?
ねえ、本心で祝福している?
もしかして、年食ってるって遠まわしに言ってる?
しかもアダルティって……古ッ!」 |