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光一
「なんつーかさ、すごいだろ?」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「まあ、大学の時から
変な娘だったよ、確かに」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「サークルで小説を打ち合わせた時も、
『この箇所は2人が、
キャーでワーでラブなんです!』
って……会話が電波になっていて
意思疎通が難しかったぐらいだし」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「でもまさか、勤務先の学校で、
『みんな、恋していますかぁ?』
なんて最初の授業で言うとは……」 |
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鳴島
「……………………」 |
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光一
「まあ、風の噂で聞いただけで、
本人に確認はしてないけど……
本当に言ってそうで怖い……
って、さっきから何で黙ってるの?」 |
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鳴島
「いや……だって……」 |
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光一
「だって、何?」 |
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鳴島
「マスターはぁ、
その後輩Sさんの発言を例に出して
『普通は言わない』
『私はそのような発言しないな』
って日記でおっしゃってましたけどぉ?」 |
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光一
「だって、そうだろ?
普通教員が生徒の前で、
『恋していますかぁ?』
的な発言とかしないだろ?」 |
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鳴島
「やれやれ…………」 |
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光一
「な、何だね?
そのため息は!?」 |
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鳴島
「マスター…………
全然自覚が足りないですねぇ」 |
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光一
「何のことだね?」 |
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鳴島
「マスター…………
『どんぐりの背比べ』とかぁ
『五十歩百歩』って言葉
知っていますかぁ?」 |
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光一
「そんな小学生レベルの言葉
知っていて当然だろ?」 |
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鳴島
「そうは思えないんですけどぉ……
先ほどからの発言聞いていると」 |
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光一
「む……それは、
私が後輩Sと似ている?
大して変わらん……とでも言いたげだね?」 |
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鳴島
「なんだ、分かってるじゃないですかぁ」 |
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光一
「ちょっと待て!!
どっからそんな結論が出る!?」 |
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鳴島
「何ですかぁ?
納得行かない点でもぉ?」 |
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光一
「納得行かないも何も、
そんな結論は全否定だよ、君。
私とあの電波系後輩Sの
一体何が似ているのかね!?」 |
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鳴島
「そんなの……
言わないとわかりませんかぁ?」 |
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光一
「分かるも何も、
どこも似ていないではないかね!」 |
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鳴島
「やれやれ…………
女生徒Aさんから、
『ノロケウイルス』呼ばわりされても
まだお気づきでない?」 |
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光一
「あれは…………
私がノロウイルスにかかった際に、
彼女に世話になったことを言ったら、
女生徒Aが言い出した
言いがかりではないか!」 |
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鳴島
「マスター…………
後輩Sさんと、マスターの発言……
ちゃんと比べてくださいよぉ。
後輩Sさんの発言を、
何、他人事みたいに…………」 |
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光一
「だって、私の発言は……
『ノロウイルス大変だった』
『彼女の世話になった』
『愛を再確認した』
『愛無くして人は生きられない』
『だからみんなも、愛を探せよ』
って流れだろ?」 |
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鳴島
「お!
御自分の発言、ちゃんと分かってる!」 |
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光一
「ちゃんと起承転結流れがあって、
問題のない発言ではないかね?」 |
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鳴島
「後輩Sさんも、生徒たちに
『恋していますかぁ?』
『恋は良いですよね♪』
って似たような発言してますよぉ?」 |
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光一
「似ている!?
どこが!?」 |
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鳴島
「生徒さんに呆れられるくらいに、
自分の愛を一方的に語る点では……」 |
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光一
「いや、私はだね……」 |
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鳴島
「女生徒Aさんに、
『はいはい。またノロケですか』
って呆れられているでしょ?」 |
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光一
「…………それは……」 |
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鳴島
「基本軸は、
後輩Sさんも、マスターも
全然変わってませんよ♪」 |
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光一
「う…………」 |
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鳴島
「お? 言い返せない?
さすがにこれ以上は
言い訳できないですもんねぇ♪」 |
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光一
「む……う……」 |
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鳴島
「しかし、
ノロウイルスにかかったマスターの
ノロケ話を聞いて、
『ノロケウイルス』呼ばわり……
女生徒Aさんのセンスは良いですねぇ!」 |
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光一
「あ、それについては
不覚にも私自身巧いと思った!
私の彼女もそう思ったようだが……
Aをつけあがらせたくないから、
ヤツの前では言わなかった……」 |
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鳴島
「あれ?
彼女もって……
この話…………
彼女さんにもしたんですかぁ?」 |
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光一
「その日仕事終わって
彼女の部屋に帰ってから言った。
『お、巧いですね!!』
って反応が返ってきた」 |
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鳴島
「えーっと…………
自分と彼女さんのノロケ話を
学校でしているってこと、
彼女さんに教えてるんですかぁ?]
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光一
「言ってるよ。
別に隠すことでもあるまいし」 |
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鳴島
「なんて言うか…………
マスターの彼女さんは寛大ですね」 |