光一
「ただいまー」鳴島
「おかえりなさいですぅ。
お疲れさまぁ♪」光一
「はー、大荷物で疲れた…………」鳴島
「おおー、
随分コップとか買ってきましたねぇ♪」光一
「うむ。
誰かさんが店にあった食器を
本当にたくさん割ってくれたからね」鳴島
「おー、
このコップなんかは洒落てますねぇ」光一
「まさかねえ…………
バックヤードの食器棚に……
モップを直撃させやがるとはねえ」鳴島
「……………………
あ、このお皿は装飾が可愛い」光一
「しかも…………
直撃させたモップで、
棚の中の数段をまとめて払って……」鳴島
「お、
これなんかはカップルのお客様にウケそう」光一
「一気に大量の食器を床に落とすとはね」鳴島
「……………………
あ、このグラスは斜め口になってるんですねぇ」光一
「まあ、掃除中の事故ならばと
大目に見てあげたいところだが……
被害金額がウン１０万円だし……」鳴島
「あー、私ホールの掃除をー……」光一
「そもそも掃除しているかと思ったら……
モップを人差し指の先っちょで立てて
バランスとる遊びしていたようだし？」鳴島
「ど、ドンマイ！！」光一
「ドンマイじゃない！！
ったく…………
何を言えばいいのやら……
呆れてどうにもこうにも……」鳴島
「だってぇ…………
モップが遊んでくれって……」光一
「頭痛が…………」鳴島
「ま、まあまあ。
まとめ買いで安くあがったのだし……」光一
「いくらまとめ買いで安くなったといっても、
大量に買えば高いものは高いの」鳴島
「すいませんでしたぁ……」光一
「最初からそう謝りなさい。
しかし……大量に物を買うと、
基本的に安くはなる。
まあ、一般家庭で使う分には縁がないが」鳴島
「一般家庭で、
一度にウン十万円も食器購入しませんしね」光一
「ただ、普通に生活する分にも、
タイムサービスとか
クーポン券とか…………
色々物を安くする方法はあるよな」鳴島
「１００円ショップとかもそうですよねぇ」光一
「ただこうやって、
色々割引・安売りしているのを見ると、
適正価格ってなんだろうと思うなあ」鳴島
「というと？」光一
「つまりだよ、
タイムサービスってのはさ、
大体の場合、売れ残り処分だろ？
売れ残るってことはつまり、
ムダの多い社会ってことだし。
総じて商品コストが増えるから、
純利益は減っているはずだよ」鳴島
「まぁ、確かに…………
その分は人件費で削っちゃいますし」光一
「クーポンなんてのはさ、
それで宣伝するのは良いけど、
その分利益が落ちるから、
人件費を削減していくだろ。
マクドナルドなんか好例だけど」鳴島
「そういえば、人件費削るために、
店長とかはひどい状況ですもんね」光一
「おおよそ、人間の労働環境じゃないな。
私はこの５年くらい、マック利用したことがない。
まあ、これはそもそもマズイからだが。
他にも１００円ショップなんかは、
安く上げるために、
業者に圧力がかかるから、
その分の人件費圧力はあるわけだ」鳴島
「うーん…………」光一
「色々考えると、そういうのって
私達の生活水準を長期的には
下げているんじゃないのかねえ？
さらに日本の悪いところはさ、
社会全体を低い水準へ合わさせようとするとこ」鳴島
「確かに…………」光一
「そう考えると、適正価格って何だろうね？」鳴島
「うーん…………」光一
「日本はサービス全体に対する
価格が基本的に安すぎると思うよ。
そして、一部を除いて給与水準も低い
３０年位前は親１人の給与で３人養えた子供が
今や、１．２人なんだぞ？」鳴島
「確かに……私のお給料も……」光一
「あ、君の給料は適正…………
いや、今回のような物損を考えると、
むしろ過剰に払っているような……」鳴島
「うにゃっ！？」光一
「だから、過剰な割引サービスは
却って日本をダメにしているように思うね。
そして、給与はもっと見直されるべき。
人を大事にしない社会には
いずれ終わりが来るよ」鳴島
「じゃあ、まずは『隗より始めよ』
マスターは身近な私から♪
給料上げてください♪」光一
「今でもまともにウェイトレスこなせんのに、
何故上げなきゃならん！！
あ、裸エプロンで給仕するなら、
特別手当を上乗せするよ？」鳴島
「イ・ヤ！！」光一
「まあ、
サービスのやりすぎはどうかと思うよ。
例えば団体割引で、
思わず１０割引しちゃったり……」鳴島
「ホントだぁ！！
１５名様以上団体１０割引
って書いてある！！」光一
「サービスもほどほどにしないと、
宣伝のつもりが、会社ごと消えちゃうよ」鳴島
「ですよねー」光一
「ふと思ったけど、
『隗より始めよ』なんてよく知っていたね？
綾香君のくせに」鳴島
「人をバカにしてー！！
むかむかぁー！！！！」
