|  | 光一 
 「震災以降、
 
 私の住んでいる場所は幸いに4日目くらいで、
 
 まあほぼ日常の生活が送れるようにはなったねえ」
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      |  | 鳴島 
 「電気・ガス・水道が通れば、
 
 部屋が無事ですからねぇ」
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      |  | 光一 
 「4日目くらいまでは、スーパーや薬局、コンビニで
 
 深刻なくらいに品不足にはなっていたけどねえ。
 
 県内でも復旧が早い地域だったのに。
 
 まあ、県内の主要道とかもダメージが大きいし」
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      |  | 清香 
 「買占めに走る人もいますからね」
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      |  | 光一 
 「ただ、ガソリンはいつまで経っても
 
 深刻なくらいに品不足だねえ。
 
 私、給油できたのはようやく8日目だったが」
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      |  | 鳴島 
 「朝からなが〜い列が出来てますよねぇ」
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      |  | 光一 
 「朝どころじゃないぞ。
 
 翌朝の開店に間に合わせるため、
 
 前日の夕方から車列が出来始めるからね」
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      |  | 鳴島 
 「10数時間も待ってるんですかぁ!?」
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      |  | 光一 
 「私はそんな体力もないし、
 
 開くかどうかも分からないスタンドで待つつもりなかったけど」
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      |  | 清香 
 「車だけ停めておいて、
 
 中の人がいない車もありますよね」
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      |  | 光一 
 「あれ、車盗まれたらどうするつもりなんだろ。
 
 というか、近所の人が『どかして欲しい』って時に、
 
 中に誰も乗ってなかったら、非常に困るぞ。
 
 しかも、道路が狭くなって、危ない感じになってる」
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      |  | 鳴島 
 「車列に割り込んできたっていうので、
 
 ケンカが起きて警察が出るなんて事も、
 
 ポロポロあるみたいですけどねえ」
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      |  | 光一 
 「私、ガソリン無駄遣いしたくないから、
 
 徒歩か自転車で移動しているけど……
 
 見ていると震災前と変わらない交通量なんだよねえ。
 
 普段と変わらない車の使い方したら、
 
 ただえさえでもガソリンが入荷されないのに、
 
 余計に油不足になると思うんだけどねえ……」
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      |  | 鳴島 
 「確かに…………」
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      |  | 光一 
 「買い物だけじゃなくて、仕事に行く人もいるからだろうが。
 
 電車は各所で電柱が倒れたり、線路がゆがんだり、
 
 そんなせいで復旧のメドすら立ってないからねえ。
 
 余計に車使う人が増えてるかもしれない。
 
 企業側も考慮して、社員の出社数減らすとか、
 
 ちょっと考えれば良いと思うんだけど」
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      |  | 鳴島 
 「そうですねぇ」
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      |  | 光一 
 「ガソリン不足と電話が繋がらないせいで、
 
 精神科行けなかったんだよねえ…………
 
 睡眠薬が無くて、ちゃんと眠れない……」
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      |  | 清香 
 「だから昼間眠たそうなんですか?」
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      |  | 光一 
 「それで昼間に寝てしまうと、
 
 余計に夜眠れないしねえ…………
 
 でも、夜は夜で布団に入ると眠れないんだよ。
 
 一種の暗示みたいのもあるんだろうけどねえ」
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      |  | 鳴島 
 「火曜日から仕事再開なのに、
 
 それで大丈夫なんですかぁ?」
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      |  | 光一 
 「それも心配なんだよねえ…………
 
 というか、正常に仕事できるのかなあ?
 
 行ってみないと分からないしねえ」
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      |  | 鳴島 
 「確かにぃ…………」
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      |  | 光一 
 「後、震災後毎日あるもので……
 
 ものすごく心臓に悪いやつがあるね」
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      |  | 鳴島 
 「なんですかぁ?」
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      |  | 光一 
 「緊急地震速報」
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      |  | 鳴島 
 「あー、分かりますぅ!!」
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      |  | 光一 
 「TV付けてると突然高い音で
 
 『チャラララン! チャラララン!』
 
 携帯には
 
 『フィィィーン! フィィィーン!』、
 
 って甲高い音が鳴ってエリアメールが届くんだけど…………
 
 あの音がすごく心臓に悪い!!」
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      |  | 清香 
 「あの音……普通に驚きますよね。
 
 威嚇するみたいな音で…………」
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      |  | 光一 
 「まあ、あれはその地域の人が気が付かないと意味ないから、
 
 絶対気づくような音になって当然なんだけど……
 
 本当に心臓に悪い。
 
 だって、あの震災クラスの地震がまた来たら……
 
 って、こっちはずっと心配しているからね」
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      |  | 鳴島 
 「またあの地震来たら……今度はどうなるか……
 
 って思いますもんねぇ」
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      |  | 光一 
 「昨日……土曜夜に震度5強の余震があった時は、
 
 ウチの嫁がパニックになりかけたぞ……
 
 揺れてる中、外に飛び出したからね。
 
 鉄筋コンクリートのこの部屋の方がよっぽど安全。
 
 でも、話し合ってても、アレ経験すると怖いもの」
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      |  | 鳴島 
 「う〜ん…………」
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      |  | 光一 
 「逆に震度3ぐらいの地震は毎日あるし、
 
 震度4くらいもポコポコ来るので、
 
 そのクラスが大した事なくて、
 
 日中だと気にならなくなってきてしまった…………」
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      |  | 清香 
 「以前だったら気にしていましたけどね」
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      |  | 光一 
 「茨城って地震少ない県だったからねえ。
 
 少なくとも大規模な地震にあった経験……
 
 多分ほとんどないぞ」
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      |  | 鳴島 
 「そうですよねぇ」
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      |  | 光一 
 「TVつけていても、不安になる情報ばかりだったり、
 
 悲惨な状況ばかり映されているから、
 
 あんまり見ないようにしてる。余計に不安になる。
 
 というか、気分が沈むだけだし…………」
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      |  | 鳴島 
 「犠牲になった人の情報が増えるばかりですもんねぇ」
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      |  | 光一 
 「同じ市内に住む友人も、
 
 TV見ないようにしてるってメールしてきた。
 
 小さい子供もいるし、お腹に子供もいるから、
 
 余計に不安だと思うよ…………」
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      |  | 清香 
 「そうですよね」
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      |  | 光一 
 「それでいて、巨大な震災クラスの余震が来る確率。
 
 この先しばらくあるって言うんだからねえ。
 
 他の震災等の比較から、30数日ないし3ヶ月で、
 
 一番大きな余震が来ているって話かららしいけど」
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      |  | 鳴島 
 「余計に気持ちが落ち着きませんよねぇ」
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      |  | 光一 
 「ちなみに、地震の話ばかりしていると、
 
 私自身も気が滅入るので、
 
 地震の話は何もなければ次回で一旦終わりにしようかなと。
 
 気分転換できるような楽しい事の方がしたい。
 
 生活しててもネットしてても同じ話題だと、
 
 気分が切り替わらなくて、段々イヤになってくる」
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      |  | 鳴島 
 「私も気分がよくはないですねぇ……」
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      |  | 光一 
 「何かでストレス発散しないと…………
 
 どこに行っても同じような情報発信していたら、
 
 周囲を沈みこませるだけな気もするからねえ。
 
 東北の人よりも余裕のあるこちらは、
 
 少しは明るい事をしている方が、
 
 かえって良いんじゃないかなーと思ってる。
 
 誤解されそうな気がするけど、
 
 忘れるという意味じゃなくて。
 
 こっちだって一応被災地域ではあるし」
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      |  | 清香 
 「まあ、それもありかと思いますけど。
 
 そういうブログとかも結構見ますし」
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      |  | 光一 
 「これ以上悪い事が起きない事を、
 
 ホントに祈るしかないねえ。
 
 こればかりは祈るしかないんだよねえ……
 
 節電とか募金とか……行動できる事はするけど。
 
 また震災が起きるかどうかは分からないからねえ」
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      |  | 鳴島 
 「行動した方が、よっぽど意味ありますからねぇ。
 
 物資が送れなくても義捐金は役立つかもしれないし、
 
 ボランティアに行ける状況でなくても、
 
 節電とか節約はできますしねぇ」
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      |  | 光一 
 「この世に救世主とか特効薬なんて無いからね。
 
 各人ができる行動をするのが一番。
 
 とりあえず私にできるのは日頃の節制と、
 
 給与の1割位でも義捐金に出すくらいかなあ……」
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      |  | 鳴島 
 「じゃあ、私も給与の1割出しますよぉ!」
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      |  | 光一 
 「じゃあ、君の給与から天引きしておくから」
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      |  | 鳴島 
 「マスター、不正蓄財する気ですよねぇ!
 
 イ〜ヤ〜で〜す〜ぅ!」
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      |  | 光一 
 「…………チッ」
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      |  | 鳴島 
 「チッって言った! 舌打ちしましたよねぇ?」
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      |  | 清香 
 「じゃあ、お姉ちゃん。
 
 私にお金預けてくれれば、振り込んでくるよ?」
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      |  | 鳴島 
 「信用できない…………
 
 そういう義捐金装った詐欺、増えてるんでしょ?
 
 自分で調べて、信用できるトコで振り込むから」
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      |  | 清香 
 「ホント。人の善意につけこむのって許しがたいよね」
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      |  | 鳴島 
 「今、私にやろうとしたよねぇ?」
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