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光一
「時の流れとは恐ろしいものだなあ……」 |
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鳴島
「おはようございますぅ!
何をたそがれているんですかぁ?」 |
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光一
「おお、綾香君。おはよう。
いや、人というのは時とともに変わるものだなと、
思わず浸ってしまっていたのだ」 |
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鳴島
「はぁ?」 |
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光一
「君だってこの店に来た7年前は、
それはそれは初々しい10代後半だったのにねえ。
2003年8月段階では20歳だったのにねえ……
いつの間にか26歳数カ月の曲がり角に……」 |
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鳴島
「歳をとるのは仕方ないでしょうよぉ!」 |
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光一
「歳はとったのに…………
仕事はいつになっても覚えないよねえ?」 |
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鳴島
「少しは覚えましたよぉ」 |
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光一
「お皿割ったり……備品を壊したときの
管理台帳の記入は本当に覚えたよね」 |
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鳴島
「それだと私がまるで
備品を壊してばっかりみたいじゃないですかぁ!」 |
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光一
「みたい……じゃなくて、実際にそうなんだがねえ」 |
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鳴島
「むぅ…………」 |
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清香
「こんにちわー」 |
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光一
「いらっしゃいませ。
お、この前来た綾香君の妹さん……
えっと、名前は…………」 |
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鳴島
「お、清香(さやか)!!」 |
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清香
「何? 何?
お姉ちゃん、また仕事失敗して怒られてるの?」 |
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鳴島
「そんなんじゃないよぉ!」 |
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光一
「まあ、似たようなものですな。
初々しさは無くなって歳は取ったのに、
未だに仕事を覚えてくれなくてねえ」 |
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清香
「お姉ちゃん……昔からそんなんだったもんねえ」 |
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鳴島
「ヒドイ!!」 |
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光一
「コーヒーでも飲んでいきますか?」 |
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清香
「あー、実はですね。
バイトを探していまして。
こちらで雇っていただけないかと思いまして」 |
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鳴島
「清香、お金困ってるのぉ?」 |
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光一
「綾香君がいつまでも給料上がらないせいで、
仕送りする余裕がないからかねえ?」 |
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鳴島
「私のお給料が安いのは、
マスターが上げてくれないからじゃないですかぁ!」 |
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光一
「だって君……仕事できないし……」 |
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鳴島
「むぅぅぅぅ…………」 |
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清香
「どうでしょう?
履歴書も持ってきたんですけど……」 |
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光一
「うーん、まあ問題はないかな。
もう1人くらいバイトの娘さんがいたら助かるし」 |
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清香
「ありがとうございます!」 |
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光一
「時給はそうだねえ…………
綾香君以外雇った事が無いのでどうしようか。
取りあえず最初は800円からでいいかな?」 |
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清香
「バイト初めてなのに、
そんなに貰っていいんですか?」 |
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光一
「まあ、綾香君なんて仕事できないのに、
時給850円ももらってるしねえ……
他に住宅手当とかも出しているから……
1ヶ月25日×8時間と諸手当で18万5000円?
貰いすぎじゃない、綾香君? 減らそうか?」 |
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鳴島
「26歳女性の貰う額としては少ないですよぉ!!
というか、時給いつのまにか減ってる……
870円でしたよねぇ、時給!?」 |
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光一
「色々備品を壊しているから……
順調に下がっているよ。安心してね」 |
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鳴島
「安心できない!!
私の生活が安心できませんよぉ!」 |
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清香
「お姉ちゃん……もっとしっかりしようよ」 |
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鳴島
「清香は私の味方してよぉ!!」 |
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清香
「とにかく頑張りますので、
よろしくお願いします!!」 |
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光一
「いっそ、綾香君と同じ850円からのスタートでもいいけど。
綾香君、むしろ備品壊してばっかりなくらいだし。
多分、新人さんと相対的にレベルは変わらない」 |
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鳴島
「勤続7年目の私と同じ時給!?」 |
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清香
「さすがに悪いですよ!!
800円でも多いくらいですって」 |
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光一
「そう。じゃあ、当面は800円からで。
仕事覚えてきたら時給もアップするから」 |
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清香
「分かりました!」 |
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光一
「綾香君もこれくらい初々しくて仕事ができればねえ」 |
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鳴島
「だってぇ…………」 |
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光一
「いっそ清香さんと同じ時給になって、
一から出直すつもりで仕事してみるかね?」 |
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鳴島
「い、イヤですよぉ!!」 |
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光一
「時給高くて悪いなんて言葉…………
君から聞いた事すらないんだけどねえ」 |
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鳴島
「だってぇ…………」 |
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清香
「まあ、お姉ちゃんも曲がり角過ぎちゃったから……
今更初々しいのもムリがあるよね?
逆にイタイかもしれないよ」 |
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鳴島
「だから、歳の事を言わないでよぉ!!」 |