  | 
      鳴島 
       
      「うわぁ…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「な、驚きだろ?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「いや、驚くも何も……」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「何も?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「本当に初歩的な日本語が、 
       
      そもそも通じていないじゃないですかぁ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「しかも、相手は仮にも 
       
      高校生なのにな…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「いや、今日のマスターの日記は 
       
      驚きの内容ですねぇ…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「まさかねぇ………… 
       
      テスト問題の漢字が読めないとか…… 
       
      『遠征』の意味が分からないとか…… 
       
      私、世界史の授業をしてるんだが…… 
       
      何で国語教えなきゃいかんの?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「はは…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ちなみに、同じ授業内容をしている 
       
      別のクラスでは何の問題も生じなかった。 
       
      つまり、私………… 
       
      高校生に理解可能な日本語で話しは…… 
       
      しているはずなんだよなぁ……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「それだけでもわかって、 
       
      まだ良かったですねぇ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「だからいつも、 
       
      どこまで簡単な言葉で説明するか、 
       
      すごい悩む……このクラスだけ」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「でしょうねぇ……」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「もうそれこそ、 
       
      小学生に教える気分で 
       
      教えているんだが…… 
       
      高校生相手に…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「他には、 
       
      マスターが悩んでいるような 
       
      このクラスに近い例は無いんですかぁ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ある!! 
       
      もっと底辺が……ある!!」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「これ以上の?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「えっとね………… 
       
      学校の成績が悪いとか、 
       
      まだ、その話ができる分には良い。 
       
      それ以前の話」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「というとぉ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「綾香君。 
       
      今ココに世界地図があるけど…… 
       
      もちろん、国名抜かした白地図ね。 
       
      例えばそうだな………… 
       
      中国がどこにあるか分かる?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「そんなの小学生でも分かりますよう♪ 
       
      日本の隣の、この大きい国ですよう」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ね、普通に分かるよね? 
       
      でもね……………………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「んぅ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「中国の位置を自信満々に、 
       
      太平洋上の小さな島に 
       
      指差した人もいるの。 
       
      私の勤務先の高校には……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「え!? 
       
      ウソですよねぇ!?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「そこは私が担当していないけど…… 
       
      別の先生から聞いた。 
       
      だから3年間かけて、 
       
      小学校の社会科からやっていくらしいぞ」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「うわぁ…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ちなみに、 
       
      中国と言って、その高校生が 
       
      指差した島………… 
       
      どこだと思う?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「え!? 
       
      そうですねぇ……どこでしょうかぁ……」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「聞いて驚くな………… 
       
      なんとハワイを指差して、 
       
      中国!! と答えたらしい……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「ええぇぇぇぇ〜…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ハワイはアメリカなんだけどなぁ……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「ですねぇ…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「これだけ一般常識できないんだもん。 
       
      そりゃあ、世界史はできんよなあ……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「確かにぃ…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「その先生は、 
       
      『小学校とかで満足に地理習ってないから、 
       
      高校でこれなんだよなぁ…… 
       
      ゆとり教育の弊害って、 
       
      高校に来るとよく分かるぞ』 
       
      と言っていたよ……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「う〜ん…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「私は一概にゆとり教育否定しないけど…… 
       
      でも、私が学生の頃は、 
       
      いくらできないヤツでも、 
       
      一般常識はできたよなぁ……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「確かに。 
       
      最低限の常識は知ってましたねぇ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ちなみに落ち着きもなくてねぇ…… 
       
      10分間静かにすることもできないし、 
       
      集中力は5分続いたら勲章もの…… 
       
      何ら幼稚園児と変わらんのだが…… 
       
      相当甘やかされてきてるんだろうな」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「そんな低い忍耐力だと………… 
       
      将来仕事とか満足にできるんですかねぇ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「私はそれも含めて、 
       
      彼らの将来が無茶苦茶心配…………」 |