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光一
「うーん…………」 |
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鳴島
「マスター。
フロアーの掃除終わりましたよぉ」 |
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光一
「あー、はい。ご苦労さん。
じゃあ、バックヤードで休憩して良いよ」 |
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鳴島
「はーい♪」 |
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光一
「うーん…………」 |
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鳴島
「マスター?」 |
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光一
「ん? 何?」 |
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鳴島
「さっきから何を『うんうん』うなってるので?
便秘か何かですかぁ?」 |
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光一
「何故便秘かは知らんが……
ちょっと考え事を……」 |
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鳴島
「はっ! まさかこのお店…………
赤字で閉店の危機とか!?」 |
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光一
「いや…………」 |
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鳴島
「それは困りますよぉ!!
給料未払いのまま解雇とかぁ、
そういうことはご勘弁ですよぉ!」 |
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光一
「だから…………」 |
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鳴島
「もし閉店する際には、
保険金でも何でも使って、
私の失業手当分くらいは…………
再就職先探すのに……せめて半年分は!」 |
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光一
「人の話を聞かんか!!
そういう悩みじゃない!!」 |
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鳴島
「あ、そーなんですかぁ?
なら一安心…………」 |
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光一
「保険金とか何とか、
聞き捨てならない言葉も聞こえたような」 |
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鳴島
「あ、それは多分気のせいですよぉ!」 |
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光一
「ま、いいや」 |
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鳴島
「で、結局何を悩んでいたのですかぁ?」 |
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光一
「あー…………なんというかね、
イメージの問題と言うか…………」 |
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鳴島
「あー、そんなことで悩んでいたんですかぁ?」 |
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光一
「そんなことって…………」 |
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鳴島
「周囲の評判なんて気になさることありません。
私や彼女さん含めて、近しい人は
ちゃんとマスターの事、わかっていますよぉ♪」 |
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光一
「綾香君…………」 |
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鳴島
「マスターが女の子が好きで、
とりわけ巨乳が大好きで、
エッチも好きで仕方が無い上に、
彼女と会う機会には必ず求めるとかなんて……
そんなイメージは今更じゃないですかぁ♪」 |
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光一
「……そういうイメージ定着してるの?」 |
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鳴島
「何を今更?
まあ、それで人間関係保ててるんですから
無問題じゃないですかぁ♪」 |
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光一
「ますますイメージ変えなきゃ……
私、このままじゃマズイだろう……」 |
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鳴島
「そもそも髪フェチで、
大学時代からずっと道行く女性目で追ってたし、
今も胸とかよく見ていますよねぇ?
彼女と歩いている時だって、
すれ違った女性の胸を見ては彼女さんに
『今の女の人、巨乳だったね!』
『いやー、揉みたい。揉ませてほしい』
とか言ってたじゃないですかぁ?」 |
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光一
「そんなイメージが定着しているなら、
ますますどうにかしないと…………
完全に浮気性の男みたいじゃない……」 |
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鳴島
「浮気しているんですかぁ?」 |
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光一
「いや、それは神にかけてしていないけど」 |
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鳴島
「じゃあ、良いんじゃないですかぁ?
彼女さんだって分かってくれているんでしょ?」 |
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光一
「まあ、そうだけど…………
私、聖職者なんだよ? 学校の教員なんだよ?」 |
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鳴島
「生徒さんに手を出さなきゃ
平気じゃないんですかぁ?」 |
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光一
「まあ、そうですけども!
あまりに生々しいことを言うねえ……」 |
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鳴島
「大体、イメージなんて定着したら
払拭するのは難しいですよぉ?
マスターだって経験ありますよねぇ?」 |
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光一
「確かに、今まで数度のイメチェン……
全て失敗してきたさ。
しかし……こればかりは払拭せねば……
私の人生に関わる可能性が……」 |
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鳴島
「では月並みですがぁ、
普段の服装等から変えられてみてはぁ?」 |
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光一
「服装?」 |
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鳴島
「普段の服装でイメージって増幅されますしぃ、
マスターって黒服ばっかりじゃないですかぁ」 |
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光一
「まあ……黒い服装が7〜8割占めているかね?」 |
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鳴島
「色の中でも黒は、
『不幸・暗い雰囲気・死』とかを想起させるので、
着ている人も見ている人も、
アクティヴな気持ちになりにくいんだとか?」 |
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光一
「別に黒服だからって支障があるわけじゃ……
第一、そんなの連想の話であって、
黒服着ているからネガティヴになるとかじゃ」 |
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鳴島
「そんなこと言って、何かを変えようとしないから
イメチェンが今までうまくいってないんですよぉ?」 |
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光一
「いや、服は別に良いだろ!
私の好きな色が黒なんだから!」 |
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鳴島
「…………ゴキブリ…………」 |
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光一
「えっ!?」 |
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鳴島
「そんなに黒ずくめでいたいなら、
いっそゴキブリにでもなればいいですよぉ」 |