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鳴島
「はは!!
面白いお母さんですねぇ♪」 |
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光一
「面白いか、これ?」 |
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鳴島
「週に1〜2回程度しか帰宅しない息子に、
『お金ちょうだい!!』
ってストレートに言ってくる親は、
かなり珍しいですよぉ♪」 |
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光一
「やはり、私の母上は珍しいケースか」 |
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鳴島
「ですねぇ♪
だからこそ、非常に面白い方ですよぉ」 |
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光一
「『珍しい』イコール『面白い』
ではないと思うのだが…………」 |
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鳴島
「でもぉ、
そうやって気さくに会話できるってことはぁ、
仲が良いってことじゃないですかぁ?」 |
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光一
「まあ、両親との仲は悪くないな。
母上とは、昔から友達みたいな感覚だし」 |
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鳴島
「じゃあ、
会話そのものも険悪じゃないですよねぇ」 |
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光一
「まあ、会話の中身はかなりアレだが……
険悪な雰囲気で会話はしてないな」 |
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鳴島
「じゃあ、面白い会話……
って程度に思っていれば、
それで良いじゃないですかぁ♪」 |
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光一
「まあ、それは一理あるがね」 |
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鳴島
「そもそも、マスター」 |
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光一
「ん?」 |
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鳴島
「恩返しと考えてみてはいかがで?」 |
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光一
「え?」 |
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鳴島
「少なくとも、
大学院まで出してもらえたわけですしぃ、
恩返しにシューズ代2万円くらい
あげても良いのではぁ?」 |
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光一
「いや、そりゃあ感謝しているし、
いつか親孝行ぐらいは……と思ってるぞ」 |
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鳴島
「じゃあ、パーッと2万円
あげちゃいましょうよぉ♪」 |
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光一
「そんな気楽に言わんでくれよ。
私の収入、ただえさえでも少ないんだぞ」 |
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鳴島
「いくらぐらいですかぁ?」 |
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光一
「具体的な金額はさておき、
年金や奨学金返還などして、
他にお金払うと…………
差し引き1万円も残らないくらい……」 |
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鳴島
「えっ!?
非常勤講師とはいえ、
働いているのにぃ!?」 |
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光一
「非常勤講師なんて、薄給なんだぞ!
サラリーマンが楽しみにしている、
昇給やボーナスだってないんだ!」 |
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鳴島
「あらー……ご愁傷様ですぅ……」 |
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光一
「そんなわけで、
母上にダンスシューズをあげる
そんな余裕は一銭も無い!!」 |
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鳴島
「うーん…………
生活がギリギリではねぇ…………」 |
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光一
「はぁ…………ホント、
なんとかならんかなあ、
この極貧生活…………」 |
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鳴島
「頑張って、県の教員採用合格するか、
なんであれ正式の教員になってくださいなぁ」 |
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光一
「そのつもり」 |
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鳴島
「その状況のままだと、
結婚も…………」 |
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光一
「ムリだねえ…………
結婚資金とか生活費……
まかなうのは難しい」 |
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鳴島
「それはなんとしても、
正式の教員になるしかないですねぇ」 |
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光一
「そうでないと、
親孝行どころか、
結婚すらできないからなあ」 |
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鳴島
「ま、ともあれ頑張ってくださいなあ!」 |
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光一
「お、君が珍しく、
私を精神攻撃せずに、
応援だけで済ませている!?」 |
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鳴島
「むっ!?
聞き捨てならないですねぇ。
人をどんな目で見ているんですかぁ?」 |
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光一
「いや、そのままの意味で見ていた」 |
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鳴島
「むぅ〜!!
薄給青年のぶんざいでぇ!!」 |
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光一
「だから、
そういう人が気にしていることを……」 |
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鳴島
「そんな薄給のままだと、
結婚もできないですよぉ?
彼女に逃げられても知りませんよぉ?」 |
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光一
「うわぁぁぁぁ!!
悪かった悪かった!!
それ以上言うのはやめたまえっ!」 |
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鳴島
「分かれば良いんですよぉ、まったくぅ」 |
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光一
「ふう…………
女は怒らせると怖い……」 |
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鳴島
「なにかっ!?」 |
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光一
「いいえ、なんでも!」 |