7/26(木)
うつ病……周囲に理解してもらえるか、微速でも進めるか?

光一

…………というわけで、私が当店マスターの光一です
鳴島

私がウェイトレス歴9年になる鳴島綾香です
清香

天然な姉、綾香を持っています、

ウェイトレス(バイト)歴3年目の鳴島清香です
鳴島

今、余計な一言入ってたでしょ!?
清香

そういえば、自己紹介なんて初めてなんですけど、

どうされたんですか?
鳴島

無視された!?
光一

いや、なんとなく自己紹介しておかないと……

我々の立ち位置が忘れられてるんじゃないかと
鳴島

ああ、マスターが三十路を越えても、

20代の頃のように自分を好青年と言い張るあたりとか

その辺りの可哀相な部分とかですよねぇ
光一

君も一言どころか二言三言多いよね?
清香

にしても、今日のマスターの日記珍しいですよね
光一

というか、サイト運営を初めて9年5ヶ月ほど……

初めて少しだけ本音を出した日記を書いたわけだけど
鳴島

まあ……屋上階から飛び降りかけたとか、

警察にお世話になったとか…………

今年初め頃からの状況を少し書いていますよねぇ
光一

私の日記は基本的に笑える事を書きたいので、

今日みたいな日記は差し控えてたんだけど…………

というか、これでも笑えるように書いたつもり。

まあ、私が未だ治療途中である

『うつ病』について少し話をしたいなあと……
清香

なるほど
光一

うつ病と言っても、形態や症状は複雑・無数にあるので、

ここでは少しだけ話を絞って、

改善していくのに何が必要なのか…………

とか、そういった話に絞って行こうかと思ってるので、

全部が全部当てはまるわけではない事に、

一応留意しておいてもらいたいと思うよ
鳴島

はい、了解
光一

まず、うつ病を治すのには何が必要だろう?
鳴島

うーん……抗うつ薬とかですかぁ?
清香

カウンセリングとか?
光一

それぞれ正解だけど、

それだけだと不足していると言えるね
清香

というと?
光一

うつ病にも進行過程があるし、

発病形態にも様々あるのね。

私は『双極性障害』と呼ばれるものに近くて、

『不安障害』を抱えているんだけれども……

往々にして、いくつかの病状を抱えている事もある
鳴島

ふむふむ
光一

私のように、

アパートの屋上階から飛び降り自殺しようとした人間、

ここまで来ると抑え込むための薬は必要不可欠なわけだ
鳴島

でしょうねぇ
光一

症状が軽い内であれば、

必ずしも薬が必要なわけではなかったり、

少量の薬で済む場合もある。

治療過程で少しずつ薬も減らせるだろう
清香

ずっと延々に薬を飲んでいるわけにもいかないですしね
光一

必要な間は飲まないとダメだよ。

回復過程の中で、種類が変わったり、減量するものだね
鳴島

で、薬やカウンセリングだけでは不足だと?
光一

そう、他にも必要なものがある。

というより、それがないと治癒は難しい。

治っても再発する可能性だってある
清香

家族のサポートとか?
光一

そう。家族だけではないね…………

周囲のサポートが治療に重要な意味を持つ。

家族、職場、友人……周囲のサポート無しには難しい。

例えば、骨折して松葉杖無しに歩けない人に、

1キロ先まで杖無しで立って歩けなんて無理でしょ?

うつ病の人は現実社会から自分自身が離れてしまうので、

現実社会に戻っていくためには、

そういった人たちからのサポートが何よりも必要なんだ
鳴島

で、わざわざマスターがサポートを強調するのは

何でですかぁ?
光一

日本人は結構『精神論』が好きだよね。

根性があればどうたら……とか、典型例なら

『最近の若い人は根性が無い』とか
鳴島

あー、ありますねぇ
光一

気力・精神力なんて人それぞれ、異なるものだけど……

こういった理由から

『うつ病患者は気合が足りない』とか

『根性が無いサボリ癖のある人たち』だと

こう思われてしまう事が多い。

これは完全な誤解であり、建設的な方向性を持たない。

病状を悪化させこそすれ、良くする事は絶対に無い。

少し話が逸れるが、苦境にある相手を非難する事で、

それが良い方向に進む事は歴史的にもあり得ない。

そうなった背景を知る事・理解する事が重要なんだ。

何も問題の無い所から、問題は起きはしないんだよ
清香

あー、あり得ますね
光一

そうすると、周囲からのサポートどころか、

そういう病状になった事に対して

むしろ周囲が責め立てる雰囲気さえ生まれてしまう。

結果、こういう病気を抱えてしまった人は、

社会的に孤立したり…………

あるいは誰にも理解してもらえないまま、

治療が思うに進まず、長引くケースは珍しくない
鳴島

周囲の無理解が問題だと
光一

周囲が病気に無理解・知識が無いと

こういうケースには最悪な場合も起きえる。

職場に復帰がなかなか出来ない、

家庭生活が円満に出来なくなるなど……

支えが必要なのに受けられないから、

現実生活を直視できなくなり、

ますます現実社会に戻れなくなる
清香

例えば?
光一

典型的に言えば、

なかなか職場復帰できない……などの時、

『職場の人にさぼってるって思われてるんじゃ』

と、患者本人が思い始めて、

そこに対してそのアプローチがあれば、

患者はますます不安を強めて戻れなくなるよね
鳴島

確かに…………
光一

ちなみに、うつ病およびその前段階の人たちは

日本では年々増加傾向にあって、

そういった社会福祉費用や

彼らが働けない事による社会経済的損失だけでも

年間数兆円単位に膨らんできている。

これは単なる精神論で片付けられる問題ではなく、

社会全体で考え方を改める必要のある、

緊急的な課題の一つなんだよ
清香

実際どのくらいの患者さんがいるんですか?
光一

例えば1996年には43万人。

その後、年々増加…………

特に2000年代になってから急速に増加している。

なかなか就職できない、競争社会になったなど

事情は多々あるけれども…………

2008年段階では104万人にまで増えているよ
鳴島

そんなに…………!?
光一

まだ年々増え続けているよ。

というわけで、これは非常に身近で、

しっかり考えるべき問題なわけだ
清香

なるほど
光一

で、うつ病の治療における話に戻すと、

さらに経過における問題もある
鳴島

というと?
光一

少し休む間に、症状が良くなったように見える時期が出たり、

外出してご飯を食べるとか、楽しい事が出来るようになってくる
清香

まあ、気分が上向いてくるのは良い事ですよね
光一

ところがこの段階では、まだ治ってはいないわけだ。

例えば状況的に、交通事故に遭った人が、

松葉杖で外出が出来るようになった程度の事だったりする
鳴島

あー、松葉杖大変なんですよねえ
光一

だろ。あれで遠出をするのは大変なんだ。

ところがそれを理解しない人が、

『じゃあ、松葉杖を取って全力疾走して』

と言ったならば、それは現状不可能だし、

実施したなら完治はより遠い時期になるだけだ
清香

そういう点でも、周囲の理解が必要だと
光一

まあ、そういう事になる。

が、周囲がサポートしてくれるのは必要だが、

そのサポートが過保護になってもいけない
鳴島

過保護ですかぁ?
光一

基本的に、うつ病やそれに関わる病気の場合、

その人は『現実世界』から離れた所にいる。

社会復帰のためには、その人の行動・思考が

『現実世界』のそこに戻らなくてはいけないんだけど、

まあ……そのために周囲のサポートは必要なんだが
鳴島

サポートの仕方に何か?
光一

過保護なサポートになってしまうと、マズイ。

不安へのフォローは必要だけど、

過度すぎると、その人が現実生活に戻れない。

さっきまでの話の例なら、

松葉杖でならどうにか外出できる人に、

『一切外出をしなくていいから、

全部私達が買ってきてあげるから……』

これではリハビリすら出来ない。

動ける範囲でのサポートをしてあげるべきなんだ
鳴島

でも、どうしてそこまで心が病んじゃうんですかねぇ?
光一

個々人の例は無数あって一概に言えないね
鳴島

でも、何か言える事はないですか?
光一

ストレスに対して、過敏な反応を起こしている

とは言えるね
清香

と言いますと?
光一

天秤さ。

心のバランスが不安などで崩れると、

不安のある現実を見るのが辛い。

だから現実を直視しないようにして

心のバランスを取ろうとする
鳴島

あー、なんとなく分かるような
光一

これは人間の防衛本能のようなものさ。

人間、それなりにバランスを取りながら生きているが、

これが不安の方向で過剰になったり、

そもそもバランスを取る事が難しい人だと陥りやすい。

結果、それが進行すると妄想や幻覚が入り込み、

解離が始まって、現実生活から離れてしまう
鳴島

解離?
清香

何かが何かから離れるって事ですか?
光一

例を挙げよう。

君たち2人は、今、目の前にいる私が、

何を心の中で考えているか分かる?
鳴島

女の人の裸ばっかり考えてますよねぇ♪
光一

それは私の嗜好だろ!

じゃなくて、今私が……ではなくてもいいや。

そこらへんですれ違った人、

彼らが心の中で何を考えているか、分かる?
鳴島

さすがにそんなのはぁ……
清香

分かりませんね。赤の他人ならなおさら。

知っている人でも、心の中まで正確には分かりません
光一

それが『普通の人』の考え方だ。

でも、解離が進むと異なってくる
鳴島

あ、解離に戻りましたね
光一

そう。で、現実世界の自分と、自分の心…………

このバランスが取れなくなってしまうと、例えば、

『相手は私を嫌いだと思ってる』

『みんな、私の悪口を言ってる』

と、周囲の人の心は全てそうなっている

と考えるし、聞こえてしまうんだ。全ての言葉が。

言葉を出さなくても、そう聞こえてしまうんだ
鳴島

単なるすれ違った人でも?

あるいは職場の同僚が視線を送っただけでも?
光一

そう、世の中全ての人々が、

自分へマイナス評価を送っていると思う。

私は、少しその傾向を持っていた。

本来、私の心は光一自身のものだし、

鳴島綾香の心は君自身のものだ。

鳴島清香の心の中は、君しか知らない
鳴島

それはそうですね
清香

誰でも自分と他者……

それぞれの境界を持っていますね
光一

ところが、辛い……ストレスを外に出せない。

不安だらけでどうしようもない……

こうした事が重なっていくと、

ストレスとバランスを取ろうとする中で

自分自身が現実から離れる解離になる。

そして周囲の人間と自分自身の境界線も無くなり、

周囲全てが悪意を放っているように感じる。

そうなると、解離性自我障害となってしまう
鳴島

それ……どうしたら良いんでしょうね?
光一

大事なのは『言語化』する事。

不安、辛いと思っている事を言葉にする事。

言葉にすれば、相手は何らかの反応を返してくれる。

大抵の場合は大きな問題ではなく、

その場で解決できて『大丈夫だった』と思えるんだ。

その経験を多く積めると、不安が解消されていき、

段々と現実世界に足がついてくるようになる
清香

それ……言葉に出された時に、

受け止める側の対応にも問題がありますよね?
光一

そう。受け止める側も、相手の言葉に対して

プラスの言葉をかけられることが大事。

プラスとプラスの言葉が行き交うようになると、

状況は改善していく。

その意味で周囲のサポート…………

環境も大事だね
鳴島

不安・辛い事を言いだしやすい環境……ですか?
光一

そういう事。

後、『言語化』と言ったけど、

言語化がうまい人は、現実世界で色んな人と交流して

エネルギッシュに活動出来ている場合が多い。

これが苦手な人の場合、

不安ばかり増幅・蓄積されていき

心のバランスが取りにくくなってしまう
清香

確かにどこに行っても元気で、

悩みのなさそうな人もいますよね
光一

実際には誰にでも悩みはあるんだけど。

それを言語化などの手段でうまく消化できる人は、

現実、うつ病などから縁遠くなれるわけだ。

ともあれ、病気になった側としては、

どう言葉にするかの訓練も重要。

また、周囲もそういう人が抱える不安に対して

そっと支えてあげる事が必要というわけ
鳴島

そうですねぇ
光一

こういう人に強い口調で

『はっきり言いなさい!』と言っても、

萎縮するだけになる。結果として、

ますます現実世界から目をそむけてしまう。

これは特に社会の現場がそうだけど、

これからの社会では上の人ほど

そういう点で留意するべきだと思うね。

現在の日本は、競争社会でギスギスしてきて、

辛さ・不安などを語る事が難しくなっている。

人と人との距離もどんどん離れていってるしね
清香

確かに…………
光一

まあ、周囲のサポートはとても重要なんだけど。

私のように、うつ病になった側も

留意しなくてはいけない点がある
鳴島

それはどんな?
光一

『コントロール欲求』に対して

留意しなくてはいけない
鳴島

コントロール?
清香

何をコントロールするんですか?
光一

うつ病になると、周囲のサポートが必要なんだけど……

自分は不安でどうしようもない、何も出来ないという事で、

逆説的に自分の家族などを

自分の欲求のままに振りまわしてしまう。

これを『コントロール欲求』と言う。

全部自分に合わせろ……という欲求だ
清香

あー……私もお姉ちゃんに

『私の買い物に付きあって』って

毎度毎度振りまわされ

結構大変な思いをしていますよー
鳴島

ちょっと、どういう意味!?
光一

なるほど。綾香君は嫌がる清香君を振りまわす

年長者らしからぬ悪い大人の例というわけだね
清香

はい、そうですね。我が姉ながら、困ったものです
鳴島

ちょっとぉ!!
光一

まあ、その話は置いておいてだ…………

こうした欲求で関係を築いてしまうと、

家族自体が疲れ果ててしまって、

健全なサポートが受けられなくなってしまう
清香

振りまわされる側はエネルギーを使いますもんね
鳴島

何で私を見てるのよ?
光一

コントロール欲求は病気に対して

『他力本願』となってしまう。

要するに、全て自分基準に合わせろ。

私の病気を治してくれ…………と、

病気は最終的には

自分自身の力で克服するしかないんだ
清香

まあ確かに……助ける事は出来ても、

治すことまでは出来ないですよね
光一

そうだね。よって、私のような患者側としても、

少しずつ行動し、必要なサポートを周囲に求めて、

周囲がそれに応えられると良い。

この行動に必要なのが、

適切な医療機関での治療であり、薬の服用も必要。

他に様々なプログラムで現実へ足を少しずつ向ける事
鳴島

出来るだけ早く治したいですもんね♪
光一

実はそこにもワナがある。

うつ病が早急に治せる……と考えると、

一気にワナにかかる可能性がある
鳴島

ワナ?
光一

そう。社会で生きていると時間はすぐ流れていく。

よって病気になると基本的にみんなこう思うだろ?

風邪にかかった時とかどうだい?

『早く治したい!! 治さなくちゃ!』

って思わないかい?
鳴島

私は堂々と休めるので、全然思いません♪
光一

…………これから君が病気で休む日は、

しっかりチェックさせてもらう事にするよ
清香

まあ普通は、早く治して学校行きたいとか、

仕事に戻りたいって思いますね
光一

そう。普通の病気ではそう思う。

で、うつ病でそれをやってしまうと、

かえって治療が長期化する可能性がある
鳴島

何でですかぁ?

早く治そうとする意志がある方が、

治るのが早くなるんじゃ?
光一

意志は非常に大事だが…………

『病気を早く治したい』という気持ちが先行すると、

現状出来ない目標を立ててしまいがちなんだ。

風邪は寝ていれば良いだろ?

でも、うつ病はそういう性質の病気じゃない。

何故なら、

『気持ち(心)』、『行動』、『考え』

この3つがかみ合っていないんだから
鳴島

…………あ
光一

現実世界から離れた場所にいて、

基本的にはまともに動けないんだ。

1日まともに動けても、翌日はずっと布団の中……とか。

今の私もそうだよ。

24時間ぶっ通して行動したくなる異常な日と、

24時間布団から出られない日……普通に存在している。

ようやく最近、ご飯を食べる以外の行動が、

少しずつ出来るようになった位の事だ。

さて…………こんなアンバランスな状態でだ、

早く治すという気持ちを先行させるとどうなるかね?
鳴島

マスターの例で言ってみてくださいよぉ
光一

…………私は今年の1月末に、

夢遊病患者のように夜外にフラフラと出て、

アパートの屋上から飛び降りようとして、

そうして警察に制止されて生きている。

まず、そこが私の出発点。

『気持ち(心)』、『行動』、『考え』

この3つのバランスは完全に崩壊している。

そもそも命すら失いかねなかった。

真冬の夜中、パジャマ1枚、素足で外をさまようあたり、

もう常軌を逸しているよね?
鳴島

普通の人には出来ませんね…………
清香

真冬に素足・パジャマ1枚で歩くのも無理ですが
光一

そういう人間が、

『じゃあ元に戻りたい!』ってなる。

その時、

『よし、1日12時間はウォーキングや

社会活動など色々やって、

仕事をしていた時と同じスタイルで行くぞ!

これならすぐに社会復帰できるはず!』

という目標を立てたらどうだろ?
鳴島

悪くは無いんじゃないですかぁ?

仕事をしていた時と同じようなライフワークを送れば、

すぐに職場復帰できるように

症状が改善するのでは?
光一

この目標を立てた時点でダメ!
鳴島

えっ!!
光一

だって、実現不可能だもの。

うつ病にどうしてなったか分かってる?

『気持ち(心)』、『行動』、『考え』

これらのバランスが崩れてるんだろ?

そうなった時と同じライフスタイルを採ったら、

すぐに失敗するに決まっている
清香

それはそうですね
光一

結果としてはね、『自分は何も出来ない』

と……マイナスの評価を自分自身に下すんだ。

病状はかえって悪化してしまう。

私は2〜4月頃、実現不可能な目標ばかり立てて、

まともな生活も送れずに……長期化したわけだ
鳴島

そうすると……どうすると良いんですかね?
光一

大事な事は……目標を

『病気よりも人生、今の生活、今日1日が大切』

というように考えを改める事。

今日1日を大切にしようと言う事。

病気を中心にして生活を考えない事
清香

病気を中心にして考えない?
光一

病気を中心にすると

『早く治さないと!』

という、病気を治す事が全目標になってしまう。

これだと、実際の行動などが追い付かないので、

マイナスの評価を自分に下し続ける結果になる。

だから、うつ病が悪化していく事になるんだ
鳴島

あ……そっか。

じゃあ、どうしますかぁ?
光一

私のような患者の場合、自分の心の中で

『〜出来なかった』とか

『〜したい……けどムリだ』

って気持ちを強く持っている事が多いんだ。

これを少しずつ変えること、時間はかかるけど……
清香

マイナスの評価をしないように

あらゆる方向性を持っていくという事ですね
光一

そう。自分の行動様式・考え方を変えていくんだ。

『〜したい』で切っていくことが大切な事。

人間、『〜したい』事にはプラスな気持ちで行けるものだ。

『〜しなくてはいけない』は非常に疲れる。

まして、うつ病の人間に『病気を治さなくてはいけない』

ってこれで思考様式を決定させてしまうと、

実際の行動がうまく行かなかった時に、

どんどん悪化させてしまう。

自分のやりたい事を一生涯の中に発見する。

これが最大の治療法であり、

自分の生涯を充足させる事になるわけだ
鳴島

そうして、色々な事をやってみると
光一

その過程の中で自分が不安だと思う事。

例えば私達、うつ病患者は

『あの橋を渡るのが怖い。落ちるかもしれない』

と、普通の人が感じない恐怖も感じているんだ。

そうした不安をすこしずつ克服する事。

例えば…………
清香

例えば?
光一

『あの橋の向こうの子供用品店に行けば、

子供の喜ぶ顔が見れるから、行きたい。

少し不安だけど、あの橋を渡ってみよう』など

思考様式を改めていく
鳴島

あ、ここでも『〜したい』を使いましたねぇ
光一

そう。それが最大の原動力となる。

そうして橋を渡れたなら、

不安対象を克服出来た事になる。

これが自信となって経験値になる
清香

普通の人にとって大した事が無くても、

それが経験値になるんですね
光一

そうだよ。でも普通の人だって、

色々な形で経験値を積んで不安を消しているんだ。

ま、こうした経験を積む事で不安を克服し、

非現実の世界に逃げ込んでいた自分を、

少しずつだけどね

現実世界で生きていた自分へと取り戻せていける。

……と、このためにもますます周囲の理解が必要だけど
鳴島

だけど?
光一

うつ病については未だに無理解な人が多くて、

軽く済む、あるいは長期化せずに済む患者さんなんかが、

病気を重篤化させたり、長期化させるケースが非常に多い。

まあ、私はどちらかと言えば

周囲のサポートに恵まれた方だと思うけれども……

毎日不安は付きまとっているよ
鳴島

例えば?
光一

『職場に復帰できるか?』

『職場の人に単なるサボリと思われてるんじゃ?』

という、社会復帰と社会上での不安は毎日。

『昨日は動けたのに、今日は動けない……ダメかも』

『今日の昼までは動けたのに、

そこから布団の中にこもって動けない……ダメかも』

っていう日常生活での不安も、毎週だね。

心の中での不安と、

実際の行動がなかなか前進しない不安の中で、

この半年の休職期間が経過しているのが事実
鳴島

あー……なるほど
光一

例えば私が休んでいるこの間にね、

自分の好きな事ばかり出来たのだとすればさ、

このサイトは週3回も4回も更新されているんじゃない?
清香

それは言えてますね。

仕事している時は、1週間1回の更新でしたから
光一

それが今どうだろ?

週1回の更新を保つのがギリギリで、

2〜7月まで見ていると、2週間近く更新無し。

そんな事も結構あったよ
鳴島

そうでしたねぇ…………
光一

そんなわけで、

仕事を休んでいる分、時間が出来ても、

それを全て行動に使えるわけではないんだ。

少しずつ、なんとか行動できるようになってきただけで、

これがいつ、『普通の人間』になるかは分からない
鳴島

あー……なるほど……
光一

それだけにこの病気は、

周囲からのサポート・理解が必要な事。

自分自身が考え方を変えて、行動したくなる事。

そのために、適切な医療機関に定期的に通い、

必要ならば薬も処方してもらう事。

人によって時間に差はあるし、再発もあるが、

社会的立場や時間は考えずに、

自分がどうありたいのか見つめるのが、

大事な事になってくるわけだ
鳴島

なるほど、今日話した分は理解できましたぁ
清香

前の簡単歴史講話よりは、

お姉ちゃんも理解できたようです
鳴島

何でそこで、

私の理解度に疑問を投げかけるの?
光一

それは綾香君だからしょうがない
清香

そうそう、お姉ちゃんだから仕方が無い
鳴島

ちょっとぉ!!

今、私がこの場で一番サポート必要としてますよぉ!

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