8/11(土)
うつ病その3……言葉の栄養と、思考する勇気

光一

というわけで、最近恒例になってきたんだけど……

今回も「うつ病」に関わる話をしていきたいと思います。

近々、うつ病にまつわるコンテンツを立ち上げたいとも思ってるので
清香

今回が3回目で、過去は以下のような内容でした。

1回目は周囲の支援・理解と、患者自身について

うつ病……周囲に理解してもらえるか、微速でも進めるか?

2回目は患者の行動の重要性について

うつ病その2……『行動療法』ついてその1
鳴島

いずれの内容も……えっとぉ……
清香

患者自身があせらない事

周囲が患者を非難する事なく、理解して支える事

『〜したい』という意欲のわく欲求に基づく行動をする事

それらが主な柱になっていました。

環境、患者を支える人間・職場、患者自身

それぞれに重要な側面があるという事です
鳴島

ということでしたぁ!
光一

綾香君はやっぱりよく理解してないだろ?
鳴島

り、理解していますよぉ!!
清香

…………というお姉ちゃんは置いておいて、

で、今回はどういう話をするんですか?
光一

話の根幹として重要な事は、

前回までの2回でしているので、今回は

1.『言葉の栄養』

2.『思考する勇気』

この2点について話をしようと思う
鳴島

なるほど分かりましたぁ♪
清香

最初に論点を上げないと、

お姉ちゃんは理解できないもんね
鳴島

どういう意味よぉ!?
光一

まあ、綾香君は置いておいて…………

というか、少しは理解してもらいたいけど……

念のために1回目の時にも述べたけど、

うつ病患者というのは、年々増え続けている。

今や10人に1人はうつ病を抱えていると言われる。

実際に認定されるのは、症状が重くなったりして、

通院している人数…………100万人弱だがね。

それに類する予備軍、うつ病なのに通院しない人も含めて、

社会の1割がそうだと言われている。

100人いたら、うつ病・その予備軍は10人はいる。

予備軍は悪化すれば、容易に患者側だ
鳴島

すごい数ですよねぇ
光一

そう。なので、うつ病は遠い世界の話ではなく、

『いつ自分が発症するか分からない』

『いつ自分の身内が発症するか分からない』

『いつ自分の同僚が発症するか分からない』

非常に身近な病気になっていると考えて良い。

うつ病での年間自殺者は、交通事故での死者を上回っている
清香

ですね
光一

現在日本では年間自殺者が3万人を超えるが、

その内、3割程……1万人程度が

うつ病を直接原因とする自殺と言われている
鳴島

すごい数…………
光一

私だって叔父を自殺で亡くしているからね。

ちなみに、社会的損失……金額換算では、

年間2兆7千億円とも言われている
清香

そんなに!?
光一

日本が財政的に苦しいとか色々言われるけど、

うつ病を発症する事が日常化する社会は、

その点だけでも社会的経済ダメージは大きい。

つまり、彼らが本来なら生産する経済利益が縮小され、

逆に彼らに必要とされる医療福祉の負担、

休業中の企業側の負担その他は、

その位の金額になると言われている
鳴島

確かに……働き盛りの人たちが、

社会から退いちゃうんですもんねぇ
光一

なにも休職に限らない。

うつが原因で退職したり、退職に追い込まれる事もある。

あるいは、うつ病を自覚しながらも隠して働いていたり……

この場合は、発覚して退職を迫られる事を恐れるからだね。

あるいは…………

『うつ病なんて甘え、気の持ちようだ』って考えの人

これが自分自身だったり、周囲に多いと、

病院に行く事もなく、治療もしないので悪化していく。

結果として作業効率がどんどん落ちていく……などね
清香

そっか……自分がうつ病だって認めたくない。

そういう人も沢山いるでしょうしね
光一

前々から言っているけど、日本人は『精神論』が好きだ。

うつ病を精神論扱いする人は非常に多い。

ところが、社会経済的には大きな損失になっていて、

合理性の面からみても、

精神論で片付けられない問題なのは確かなんだ。

大体、精神論扱いできるなら、

投薬治療も入院も、カウンセリングも必要ない事になる。

重ねるけど、これは立派な病気で

治療を受ける事を恥ずかしいと思う必要はない。

風邪を恥ずかしがって隠す必要が無いように、

うつ病である事も隠す必要が無い。

むしろ、隠さずに周囲のサポートを受けるべきなんだ
鳴島

そこが欧州との差だって前回言ってましたねぇ
光一

特にバブル崩壊以降、この数値は急増している。

前にも言ったけど、今の日本社会には希望が無い。

まず確実に言えるが、バブル期までのようには、

日本社会で、この先、給与水準が上がる事はない。

むしろ給与水準が下がり、社会サービスが低下し

老後の保障も大きく低下する。

これはもう自明として見えている。

つまり、誰も先の見えない社会なわけだ。

この12年で日本人の平均所得は2割も低下した。

いくら会社に貢献しても、バブル期のようには報われない
清香

そうですね……というか、バブル期なんて、

私が生まれる前。マスターも中学生位ですもんね
光一

昔の日本社会っていうのは、

懐古主義に陥るわけではないが、

働けばその分報われる。

努力した人が周囲から称賛される。

とまあ……そういう時代だった。

ところが今は全く違う社会になっている
鳴島

というと?
光一

今の日本社会はグローバル化の下で競争社会になった。

企業側の論理はこうだ。

『効率第一・株主配当第一・海外との競争・合理化』

社員の論理はこうだ。これは昔からね。

『働きがい。生きがい』

こうして、景気低迷下と社会構造の変化で、

企業の求めるものと、社員の求めるものが離れた。

ギャップに耐えかねて、ストレスが増す社会となった
清香

つまり、それ以前の社会よりも

うつ病が発症しやすい社会になってしまったと
光一

報酬の点で言えば、バブル期までは

能力がある人は昇進して裕福になれたし、

能力が無くても懸命に働けば、

周囲の人たちが『誠実な人』として信頼して、

報酬は十分に上がったし、生活も保障された。

それ以上に、その人の人格自体が称賛されたんだ。

今は最早そうではなくなってしまった
清香

一部の能力ある人だけが裕福になって、

能力がない大部分の人は、

努力しても報われず、燃え尽きる様な社会になったと
光一

そう言う事。

非正規労働の増加なんて、若者に絶望を強いるよね?

それに加えて互いを誉めたり、称賛するといった、

人間的な関係はどんどん遠くなっている。

競争社会と言うのは、強力な社会格差を生み出すものだ。

同時に、人同士で差別しあって、称賛しない社会でもある。

まあ、その前提を今回も強調したうえで、

今回しようとしている話に行くとするかね?
鳴島

今回も本題に入るまでに、

随分話が迂回しましたよね
光一

だって未だに『うつ病』を

単なる気持ちの持ちようって考える

硬直思考の極みの人が多いんだもん。

強調せざるを得ないでしょ
清香

まあ、確かに…………
光一

で、今日第一の話。

『言葉の栄養』について話をしていこう
鳴島

言葉の栄養? って何ですかぁ?
光一

心療内科的な言葉では『ストローク』って言うんだ
清香

ストローク?
光一

心理学的な用語で言うと、

他者に対する自分の行為全般
鳴島

それがどう栄養になるんですかぁ?

…………太るんですか?
光一

太るわけない、ない。

言葉、こーとーばー。

ドーユーアンダスタン?
鳴島

なんか、ことさらバカにされた気がするんですけど
光一

と、人間は何かを食べて栄養を摂取しないと

当然ながら死んでしまうわけだ
鳴島

知ってますか?

女の子の身体の半分は生クリームなんですよぉ?
光一

綾香君、ことさら意識して自分の年齢を下げようとしない。

それが許されるのは、JKか女子大生までね。

ちなみに私は女子高生モノも女子大生モノも好きだから。

それと君の論法を本気で信じる人がいたらどうする
清香

そうそう。お姉ちゃんの脳みその半分は

綿で出来てるんだから
鳴島

それこそウソじゃない!! ちゃんと詰まってる!

後、マスター、さり気にとんでもない事言ってますよね!?
光一

と、こうした言葉の掛け合い自体そうだけど……

『話しかける』『接触する』『誉める』『怒る』など

相手との相互作用をおよぼす行為をストロークと言う
鳴島

で、それがどう栄養なんですかぁ?
光一

ストロークにはプラスとマイナスのそれが存在するんだ。

プラスのストロークと例えば…………

綾香君は今日も可愛いね♪
鳴島

えっ、そんなホントの事を言わなくたって〜♪
光一

こう、相手がプラスの気持ちになる行為を指すんだ
清香

いっつも何も考えてない頭の持ち主なのにね〜。

顔と胸だけは無駄に良いよね、お姉ちゃんは
鳴島

どういう意味よ!?
光一

と、このように……相手をけなす等の行為は、

マイナスのストロークと言われる事になるんだ
鳴島

わざわざ私で実践する必要性はありましたかぁ?
光一

さて質問だ。綾香君としては…………

私がかけた言葉と、清香君がかけた言葉、

どちらの方が良かったかい?
鳴島

それはマスターの言葉ですよぉ。

私の事、可愛いって言ってくれましたしぃ。

清香は私の事、バカにしていましたしぃ
光一

これこそが『言葉の栄養』、『ストローク』というものだ
清香

じゃあ、プラスのストロークを得る事が、大切ですねぇ
光一

当然、プラスにこした事はないが、

さて……あえて栄養と言ったのは、

ストロークは得られないと

人間として耐えられなくなってしまう
鳴島

というと?
光一

極端に言ってしまうと、

人間はプラスでもマイナスでも良いから

ストロークを得たいんだよ
鳴島

何でですかぁ?

マイナスの言葉や行為なんて貰っても嬉しくないですよぉ?
光一

人間にとって一番ツライ事は

『孤独』『集団内で無視される事』なんだよ。

集団的な生き物において、これ程むごく、ツライ事は無い。

だから、非常に逆説的なんだけど、

自分の事を他者が『けなす』『叱る』『バカにする』って

非常によくないマイナスのストロークだけどね、

栄養としては無いよりもマシなので、これを求めてしまう
鳴島

うーん……けなして欲しい?
光一

だから、『言葉の栄養』と言ったんだ。

もちろんプラスのストロークは重要だが、

人間はそれが得られないとマイナスのストロークを求める
清香

栄養と言う意味では…………

普段は美味しいご飯を食べたいけど、

雪山で遭難している時には、

普段口にしないような、劇的にマズイ非常食でも口にする……

こういう事ですかね?
光一

そう。常に栄養は得続ける必要があるので、

プラスが得られなければマイナスを得ようとするんだ
鳴島

例えばどういう事ですかぁ?
光一

好きな女性がいるけど、相手にしてもらえない。

その女性から『私もアナタを好き』とか言ってもらえない。

こうした、プラスのストロークを貰えない場合が典型例
清香

好きな女性に無視された場合とか、

欲しい言葉・行為が貰えない場合ですか……
光一

君たちならどうする?

好きな男性にアプローチしても、

プラスのストロークを期待できない……

プラスの言葉の栄養を貰えない場合は?
鳴島

……………………

既に式の予定を組みこんでしまったので、

私の求婚に応えてくれないなら、

もういっそ、誘拐してでも…………

婚姻届に無理やりにでも判を押させます♪
光一

君は色々必死になりすぎだろ!!

だから三十路手前はって言われるんだ!
清香

彼が好きな女性をつきとめて、

色々弱みを握ったり、ちょっと脅かしてみたり……

なんとか逆転劇を図ってみようかと
光一

事が陰謀家めいていて怖すぎるよ!!

君達姉妹、必死になりすぎだろ!!
鳴島

で、結局のところ、何が言いたいんですかぁ?
光一

まあ、君達の例にも現れているけど。

小学生なんかだと、好きな女子に意地悪をしてしまうのは典型例。

『好き』って言葉が欲しいんだけど、期待できない。

あるいは周囲にその関係を知られるのが恥ずかしいので、

『アンタなんて嫌い』って感情行為を欲しがってしまうんだね。

これが大人になると……たちが悪い。

ストーカーに走ってしまうケースがある
鳴島

あー、今でも問題になりますよねぇ……
清香

交際を申し込んで断った女性とか、

縁を切られた女性に対して

男性がストーカーするってありますね
光一

あれは『言葉の栄養』に関して、

プラスのストロークが得られなかった場合だね。

よって、生きるためには栄養が必要…………

なので、マイナスのストローク、

つまりはマイナス方向の負の栄養でも手に入れたい、

そういう事なんだよ
清香

つまり、『好きになってもらいたい』のに、

現実そうなってくれないので、

『自分を嫌ってもらいたい』という行為にいきつくと
光一

結果として相手の女性が

『イヤ、もう付きまとわないで!』

『アナタは嫌いだから別れたの!』

と、マイナスの言葉を投げかけてくれれば、

このマイナスのストロークを欲しがっている、

ストーカーしている男性自身はね、

負の側面とは言え、栄養を貰い続ける事が出来る。

構ってもらう事が出来たんだ。

よって、ストーカーがより苛烈に続いてしまうわけだ
鳴島

なるほど、その点は分かりましたぁ♪

なるほど、だからそう言う事ですかぁ!

それで、マスターも夜な夜なストーカーしてるんですね♪
光一

大きな声で何を言ってるの、アナタ!?
清香

マスター……犯罪行為にまで……
光一

完全な誤解です!!

と、話が少し逸れたけど…………

これが『言葉の栄養』、『ストローク』と呼ばれるものだ。

人間は生きる上では、相互作用が重要だと言う事だね。

人間は生きる上で『ストロークを得る』事が目的でもある
清香

出来る限り、プラスの方向に行きたいですね。

前回もプラス評価なんて話をしていましたけど
光一

そうだね。相手に喜ばれる。

あるいは相手を気遣えると言う事が、非常に重要。

うつ病の人に接するだけに関わらず、

常日頃の人間関係でも心がけたい事だね。

マイナスのアプローチは結局マイナスなんだ。

相手を非難して不快な思いにさせても、

そこから建設的な方向性は見えないものなんだ。

かえって相手の感情を屈折させて、

歪んだ人間を創ってしまう可能性があるね
鳴島

で、『言葉の栄養』の話はそこまでとして…………

もう一つの話題は『思考する勇気』でしたよねぇ?
光一

これについては、うつ病とも関係…………

『視線恐怖』とか『不安障害』『念慮』なんかに関わってくるね
清香

というと?
光一

うつ病には発症に至るまで、様々な要因がある。

外因的なものだったり、内因的なものだったり……

ここで詳細は長くなるので今回は省こう。

人格形成過程において、子供から大人になっていく中、

基本的な人格・思考の形成がされるのは分かるよね
鳴島

ですねぇ
光一

初回で話をしたと思うのだけど、

『気持ち(心)』、『行動』、『考え』

この3つのバランスが保てる事が重要だと言ったね
清香

そうでしたね。

うつ病の場合、このバランスが崩れているので、

はやる気持ちや考えを抑えて、

行動は『〜したい』を中心にすべきと
光一

今日はこの3つの内、

行動について重点を置いて後半の話としよう
鳴島

というと……タイトルが『思考する勇気』でしたよねぇ?
光一

まず、人間として行動原理が『〜べき』という義務感

これ一色に染まってしまっている人間は、

非常にその動機として危ういとしなくてはいけない
清香

義務感だけでの行動はエネルギーを消耗する

その点を言ってましたよね
光一

それだけではなくて、これは個性を大事にしない。

『自我』あるいは『自分自身の考え』に犠牲を強いるんだ
鳴島

なんでですかぁ?
光一

これは前回話をした事だけど、

うつ病の人、あるいはなる可能性のある人。

この人たちにかなりの部分で、

『〜べき』…………

つまり、周囲の評価を第一として、

自分の心の在り方を脇に置いてしまう人が多いんだ
鳴島

あ、そう言えばそうでした
光一

うつ病は精神論が好きな人には

『甘え病』と言われる事が多い
清香

そうですね
光一

しかし、臨床例では、うつ病患者の多くは、

そうした『甘え・不真面目』とは真逆の

『責任感が強く生真面目』で『優等生タイプ』の人に多い
鳴島

マスターが生真面目!?
光一

…………今、釈然としないものを感じたが、

基本的に多いのが真面目すぎる、優等生すぎる人達なので、

『仕事で燃え尽きて、うつになる』

『不満などを言う事がためらわれる』

『出来るだけ自分で全てを行おうとする』

『他者の援助を求めるのを、恥ずかしいと思う』

などのような傾向が強く出ている。

つまり、基本的な行動原理が『〜べき』なんだ
清香

『我慢するべき』とかそういう事ですか?
鳴島

かえって毎日を一生懸命に頑張って、

何でも真面目に取り組んで、人に気を遣う人の方が

うつ病になりやすいって事ですか?
光一

はっきり言うと、自分を抑えて他人を優先する人だね。

過渡なプレッシャーを受けやすいんだ。

『決められた時間内に全てやるべき』とか、

『成果を絶対にあげるべき』とか、

『他人とは争わないべき』とか、

『理想の家族像を作るべき』とか、

『みんなの期待に応えるべき』とか

『自分は置いておいて、他人を優先すべきとか』
清香

自分の心や考えは置き去りにするから、

時間と共にストレスばかり増大すると。

少しずつでも日々蓄積されたストレスで

いつの間にか取り返しのつかないトコまで行きつくと
光一

そうだね。

あるいは自分に与えられた仕事が

自分の裁量を越える範囲だったとしてもこれを断れない。

『やるべき』って考えてしまう。

というか、この『〜べき』っていう考えは、

幼少から植え込まれて、育てられた可能性が高い
鳴島

というとなんですかぁ?
光一

大人が『〜べき』という態度で子供を育てる。

つまり、『皆が勉強しているから、お前もすべき』とか。

まあ、何でも良いけど……基本的には

『子供に何かをさせたい時の、命令系』だね
鳴島

でも、それって多くの親がそうじゃないですかぁ?
光一

うん。ここで問題になるのは、その親子関係のあり方だね。

往々にして大人自身も、子供の理想となるような行動は

必ずしも出来ていないものなんだ。

大人が出来ていない・出来なかったものを、

あたかもそれは正しい事に思えるので、

子供に対して『〜するべき』事として教育するわけだ
清香

つまり、大人の考えが子供に押しつけられると
光一

この時、親子関係が良好なものならいいけど、

養育の中に『恐怖』を伴う関係だと、

子供の思考構造は、大人になるにつれて

『〜したい』という欲求ではなく、

周囲に合わせる『〜べき』を行動原理にしていってしまう
鳴島

何でですかぁ?

人間だれでも、したい事を原理で行動するんじゃ?
光一

さっき、『恐怖』と言ったね。

悪い親子関係では

親が思い描く理想通りに子供が動かないと、

『罰』を前面に打ち出してくるんだ。

酷い場合にはご飯を抜いたりとか
清香

そうすると繊細な子供の心としては、

『罰』を受ける『恐怖』に萎縮してしまって、

自分のしたい事を抑え込むタイプになってしまうと?
光一

そういう事だね。

なおかつ、こういうケースで養育側の親もね、

親自体が『周囲の評価を第一』

『子供の個性・人格を認めない』

ってケースが多い。

親が『周囲の人に合わせるべき』で行動しているから、

しかもそれが自分自身の考え方だと思ってるので、

押しつけられた子供も『自分の個性・考え方』

これを失ってしまいがちなんだ。

欧州なんかだと大人達は、子供だって子供なりの

人格・個性を持っている同じ人間だって考えるんだけど、

日本は子供を『未熟で人格・個性は持っていない』

って考えてしまう大人達が多い
鳴島

子供の個性を認めないって事ですかぁ……

というか、親自体も『〜べき』で子供に当たってしまって、

実際には自分の考えを持っていないケースが

多いってことなんですねぇ
光一

そういう事。その場合その子供たちがね、

大人になって社会人として苛烈なストレスにさらされると、

自分の抱える不満は全て抑え込んで、

しかもプライベートで『〜したい』事も発見できず、

最終的に破たんすると、うつ病になってしまう場合がある。

『〜したい』っていう自分自身の欲求を抑え込まれたから、

自分がしたい事が無い人間になってしまう事が多い。

人生を豊かにする趣味が無い。無趣味な人間ね
鳴島

あ〜…………
光一

重要な帰結点を述べるとね、

1.成長した時に『考える』心を持たない人間になる

2.自分が『自立』した時、『考える』心が無いので、

自分にそれまで接してきた大人達の考え方を、

自分自身の考え方だと錯覚してしまうんだ
清香

自分が子供の頃から『〜しなくてはいけない』

って押しつけてきた大人達の考え方が、

完全にすりこまれてしまって、

本当は自分の考えじゃないのに、

それが自分の考えだと思い込んでしまうって事ですね
光一

そう。こういう風に育った人間の行きつく先としてはね、

『皆がやっている事は、自分もしないと

社会的制裁を受けるんじゃないか?

『怖いから』『罰せられない』ように行動しよう』

という、健全でない思考様式を持つ人間になってしまう
鳴島

何に関しても周囲の評判が一番。

自分自身の考えは持つべきではない……と
光一

こうした人間になってしまうと、なった当人は、

非常にツライと思わないかい? 生きにくい
清香

確かに…………
光一

何故非常に楽しくない人生になるかと言うと、

これは『個々人を大事にする(認める)』事の無い

そういう生き方になっているからだね
鳴島

個々人を大事にしない? 認めない?
光一

思考構造が『周囲への恐れ』だけで構成されているから。

これは、個々人の個性が生き生きとした社会を認めない。

嫌々ながらでも、周囲にあわせて生きるべき。

周囲の考え方が自分の考え方だ……となっちゃうから
清香

そういう思考様式が進むとどうなるんですか?
光一

例えば症例として…………

『視線恐怖』なんてのも出てくる
鳴島

今日更衣室で着替えていたら、

マスターの視線を感じて恐怖を覚えたんですがぁ、

これは視線恐怖ですかぁ?
光一

あ、それは実際に君の巨乳を拝見しようと

ついついのぞいていたので、実態があるから

『視線恐怖』ではないね。

『視線恐怖』には実は実態が無いんだよ
清香

け、警察へ通報を……110と……
光一

まった、待って! 出来心なんです!!
鳴島

で、マスターへの社会的制裁は先延ばしして、

話を続けてください
光一

『視線恐怖』というのは、すれ違う全ての人の視線が、

自分に注がれていて、それが敵意を持っているように感じたり

そういう恐怖を感じる症状だね
鳴島

あー、実際にない事をあると思い込むってやつですねぇ
光一

自分の価値観を『周囲への恐れ』のみで規定して

それで育ってしまったため、

『周囲への恐れ』が転じて、

「自分は悪い事をしたんじゃないか?」

「周囲の人は私を責めてるんじゃ?」

こういう考えがつきまとうようになり、

ありもしない恐怖が実感のものとなってしまうんだね
清香

一種の妄想なんですね
光一

そうだね。この時、自分の考え方が持てなくて、

『もし』私が悪いんだとした『なら』

『もし』周囲が私を責めてる『なら』

という恐れが事実だと思い込んでしまうと、

これは『念慮』などになってしまう。

症状が進めば『被害妄想』なども生じ得る
鳴島

結局どうするのが良いんですかぁ?
光一

まず、『妄想』という形は自分の考え方を伏せてしまい、

『周囲への恐れ』によって発展形として表れる。

妄想は肯定するんじゃなく、

実際の事実関係を大事にする治療が重要なんだ
鳴島

なるほど
光一

結局、『人間の中心は考える事』というわけ。

行動の動機を『〜したい』に据えて、

何が正しい、正しくないという基本的態度を作る。

周囲に惑わされない。

一番肝要なところ。結論としては……

『考える勇気を持つ』という事だね。

周囲への『恐怖』で思考する構造を改める事だ
鳴島

なるほど、分かりましたぁ♪

『プラスの言葉の栄養』に

『考える勇気を持つ』という結論ですね。

ところで、社会的な制裁は別の話だと思うのでぇ、

マスターが更衣室をのぞいていた件に関しましては
清香

時給のアップなりなんなり、

私達に特別の便宜が図られないのであれば
鳴島

110番への通報はやむを得ないかと♪
光一

き、君達!!

人を恐怖でコントロールするのはよろしくない!

話せば分かる。話せば分かる!!

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