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鳴島
「うわぁ…………」 |
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光一
「おや?
綾香君、おはよう」 |
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鳴島
「これはいくら何だって……」 |
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光一
「おはよう」 |
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鳴島
「うーん…………」 |
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光一
「綾香君、おはよう!!」 |
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鳴島
「うわぁっ!?
……って、マスターですかぁ。
朝から驚かさないでくださいよぉ」 |
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光一
「さっきから挨拶をしているのに、
その言い草はないと思うのだがね」 |
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鳴島
「あー、ところでマスター?」 |
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光一
「何だね?」 |
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鳴島
「マスター…………
頭どうかしてるんじゃないですかぁ?」 |
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光一
「何なんだね、いきなり?
なんとも失礼な…………」 |
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鳴島
「だってぇ…………
あー、やっぱりおかしいですよぉ」 |
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光一
「だから何がだね!?」 |
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鳴島
「自分でお分かりになりませんかぁ?」 |
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光一
「…………いきなりだよ。
朝一で挨拶は気付かれないわ、
気付いたと思ったら
『頭おかしいんじゃ?』扱い?
全然意思疎通ができていないのに、
どうやって何を理解しろと?」 |
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鳴島
「はぁ……自覚がないって
怖いですねぇ…………」 |
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光一
「そのままそっくり返すがね。
というか、
君の頭の中を覗けとでも?
私は君と違ってだね、
電波系の人間ではないのだが」 |
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鳴島
「人を電波扱いしないでください!
もう!!」 |
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光一
「だって、君からの会話の内容が
一方通行過ぎて分からんのだから、
それで理解しろと言われても無理。
そんなの電波系人間しかできんだろ?」 |
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鳴島
「ふぅ……やれやれ、
らちが明かないので、
無自覚のマスターにも分かるようにしますよぉ」 |
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光一
「で、私が何に無自覚で、
何で頭がおかしいと言うかね?」 |
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鳴島
「今日の日記をご覧になられてはぁ?」 |
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光一
「あー、私と彼女のデート話だろ?」 |
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鳴島
「これでもお分かりになりませんかぁ?」 |
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光一
「何をだね?」 |
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鳴島
「彼女さんが怖がることを分かって、
『観覧車を揺らしたり』
高いところや絶叫系が苦手なのに、
『ジェットコースターに無理矢理乗せ』
わざと嫌がることをするなんて……
頭おかしいですよぉ、絶対」 |
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光一
「なな、何でそんなことで
『頭おかしいですよぉ』
とまで言われねばならんのだね!」 |
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鳴島
「おかしいじゃないですかぁ」 |
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光一
「いや、良く考えてみてくれたまえ。
よく小学生とかに見受けられるが、
好きな人にちょっかいって出したくなるだろ?」 |
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鳴島
「まぁ……否定はしませんねぇ。
確かに好きな人の反応が見たくて、
思わずちょっかい出しますからねぇ」 |
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光一
「それと同じじゃないかね。
好きな人が嫌がる反応なんて、
普段と違って新鮮だろう?
たまに、こういう日常しないことを、
彼女と体験共有することは、
2人の関係に新鮮な雰囲気を持ち込むじゃないか」 |
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鳴島
「まぁ…………
恋人同士の関係に、
普段と違う新鮮な空気を入れるのは、
健全な関係だと思いますよぉ」 |
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光一
「な、そうだろ?
私のやったことは、一見嫌がらせだが、
しかしその実は、
彼女との関係をよく考えた上でのことだ」 |
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鳴島
「そうですかねぇ?」 |
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光一
「そうなの!」 |
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鳴島
「新鮮な空気を入れるってだけなら、
2人で動物園や遊園地に行った
それだけで充分じゃないですかぁ?」 |
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光一
「まあ、それも一理はある。
その翌週には海水浴とか、横浜デートもしたし」 |
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鳴島
「じゃあ、わざわざ
観覧車揺らしたり、
嫌がるジェットコースターに引っ張っていったり
……必要ないのではぁ?」 |
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光一
「まあ、若干それにも一理あるね」 |
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鳴島
「本当は何のかんのと理由付けして、
彼女の怖がる顔が見たかっただけ?」 |
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光一
「好きな娘の怖がる顔や叫び声って、
ものすごく快感ではないかね。
私はゾクゾクしたよ♪」 |
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鳴島
「…………
やっぱりマスターは、
ただの頭がおかしい人ですぅ」 |
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光一
「そんな事はない!」 |
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鳴島
「彼女さんが実家に帰省したのも、
奥さんが旦那さんに嫌気がさして
『実家に帰らせていただきます』
って言うようなものだったりして……」 |
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光一
「それこそそんな事はない!」 |
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鳴島
「ともあれ、
あんまり女の子が嫌がることはしないように。
……変態マスター」 |
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光一
「変態って…………
君も、私が嫌がるような呼称を付けないように」 |
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鳴島
「そうされないように
努力してくださいよぉ」 |