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光一
「人の話は…………
ちゃんと聞いた方が良いと思うんだよねえ?」 |
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鳴島
「なんですか、急に?」 |
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清香
「お姉ちゃんが、あまりにも話を聞かないから」 |
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鳴島
「ちょっと、それどういう意味!?」 |
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清香
「だって…………
『店の物を食べる』のを止めて欲しいとか、
『店の備品を壊す』のを止めて欲しいとか、
全然改善されていないじゃない」 |
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鳴島
「改善する努力はしてるよぉ!
聞いてない訳じゃないもん」 |
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清香
「その割には……10年経っても改善されてない」 |
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鳴島
「努力してどうにかなる事と、
全然どうにもならない事があるの!」 |
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清香
「そこを開き直るかな」 |
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光一
「綾香君はともかくとしても、
清香君も含めて、
結構私の話を聞き流してるよね?」 |
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清香
「えっ、お姉ちゃんと同類にされるのは心外なんですが」 |
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鳴島
「私は聞いてはいますってばぁ」 |
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清香
「いや、お姉ちゃんは『聞いている』だけでしょ。
その後のアクションが伴ってないよって」 |
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鳴島
「だ〜か〜ら〜」 |
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光一
「ほら、こうやっていつの間にか私……
話題から蚊帳の外じゃないかね?」 |
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清香
「あ、何か話を聞いてもらいたいんですか?」 |
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光一
「やっぱり私の話、結構流しているよね?」 |
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清香
「気のせいです、気のせい」 |
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光一
「そうかねえ?」 |
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鳴島
「で、マスターは何が言いたいんですかぁ?」 |
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光一
「とりあえず、君の勤務態度を改善してほしい」 |
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鳴島
「ケース・バイ・ケースで臨機応変に、
出来るだけの善処をしてみたいと思います」 |
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光一
「ちょっと清香君、聞いたかね?
やる気の1ミリグラムも感じられない返事だよね?」 |
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清香
「お姉ちゃんにしては難しい言葉を使ったかなと」 |
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光一
「いや、私が言っているのはそんな事でなく……」 |
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鳴島
「難しい言葉とは何よー!
私の知性が低いみたいな言い方」 |
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清香
「普段使ってる言葉で言い直してみなよ」 |
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鳴島
「まあ、頑張ってみます」 |
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光一
「何度も聞いた言葉なんだけど…………
履行される確率が限りなく低そうなんだが」 |
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鳴島
「ちょっとぉ、少しは人の話を信じましょうよぉ」 |
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清香
「まあ、普段の行動を改めてみたらいいんじゃない?」 |
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鳴島
「えぇ〜……難しいなあ」 |
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清香
「ほら、本音が出た」 |
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鳴島
「ぐっ…………」 |
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光一
「で、私の最初の話…………
2人共見事に流し続けてるよね?」 |
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清香
「あ、本当だ」 |
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鳴島
「最初何の話をしてたんでしたっけ?」 |
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光一
「ほら、やっぱり私の話、聞いていない!」 |
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清香
「で、何を言われたいんでしたっけ?」 |
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光一
「…………清香君は、こういうところで残酷だと思う」 |
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鳴島
「で、どうしたんですかぁ?」 |
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光一
「2010年初頭の新婚ホヤホヤの時期にさ、
仕事から疲れて帰ってきたらね、
今の君たちのように…………
嫁さんが私の話を聞き流すありさまでね」 |
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清香
「はあ」 |
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光一
「人の話はちゃんと聞いた方が良いと思うんだよね」 |
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鳴島
「まあ、それはそうですけど…………
そこまで思う何かがあったんですかぁ?」 |
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光一
「嫁さんがあまりにも話を聞き流すから、
『死んでもいいですか?』って聞いたみたの。
そうしたら、どう返答来たと思う?」 |
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鳴島
「どう返ってきたんですかぁ?」 |
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光一
「『はい!』って笑顔で元気よく言われた……」 |
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清香
「…………まあ、何と言いますか」 |
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鳴島
「話はちゃんと聞いた方がいいですかねえ?」 |