8/26(日)
強迫性障害その1……範囲と内容、治療には

光一

おーい、綾香君
鳴島

う、うわっひゃぁぁぁ!?
光一

ん?
鳴島

あ、ああ……マスターでしたかぁ。

い、いきなり肩に手を乗せないでくださいよぉ
光一

あ、ああ。スマンスマン
鳴島

これが小学生の時だったらアレですよ、マスター
光一

何?
鳴島

『光一君に触られた! 光一菌がついたー!』

ってみんなに逃げられて、

私はトイレで何度も手を洗う羽目に
光一

すっごい懐かしい

いじめとも、からかいともつかない……

あったね、そんなよく分からないゲームっぽいの
清香

今だと完全にいじめですね
光一

まあ、そういうのが精神上に影響を与える事も

ないわけでもないけどね。

人間の人格形成に悪影響が無いわけじゃないから
鳴島

ですよねぇ…………
光一

うつ病でも何でもそうだけど、

基本的には人格形成上に何かあったはず。

そうした観点から脳内伝達物質に異常をきたしたり、

何かの行動に異様にこだわるようになるからね。

失敗した経験なども大きく影響するけど
鳴島

あー、ヲタクになったつもりでいたのに、

全然ヲタクでなくって、

自分自身の存在価値に疑問を抱いた、

今回の日記のマスターみたいですねぇ♪
光一

あれは無いだろ!?

あそこまでしなくちゃならないなら、

私、全然ヲタクになれないだろ!?

ヲタクのレベルが高すぎるだろ!!

私も痛車に乗ったりしなくてはダメか?
清香

あそこまでやれと言うのは、

なかば強迫じみてるように思いますが。

痛車で周囲に趣味を暴露しなくちゃならないって

そこまで強迫的に思い込まなくても良いのでは?
光一

まあ、そういうわけで…………今回は、

『強迫性障害』について少し話をしてみよう
鳴島

今回のは名前のままで、今までの

『うつ病(その1その2その3)』『依存症(その1)』

よりは分かりやすそうですねぇ
光一

まず、強迫性障害というのが何からか話をしよう
清香

はい
光一

『強迫性障害』とは

『強迫観念』と『強迫行為』の両方を伴う

『強迫病状』の事を指すんだ。

『強迫観念』と『強迫行為』の双方が伴わないと、

『強迫性障害』とは診断されないんだ
鳴島

『強迫観念』って何ですかぁ?

何かに脅されてるって事ですかぁ?
光一

『強迫観念』とは、

本人の意志と無関係なある考えが、何度も頭に浮かぶ。

その考えによって、不快感や不安感を生じさせる…………

こういう観念を指す言葉だね
清香

では、『強迫行為』とはなんですか?
光一

『強迫行為』とは、

『強迫観念』を打ち消したり、振り払うための行為を指すね
鳴島

うーん…………

『強迫病状』という病状が見られる『強迫性障害』って

何がポイントなんですかねぇ?
光一

まずポイントの1つは、

『強迫観念』自体は常人でも持ち得る事だね。

誰でも不安や不快感は持つからね、当然だ。

ただ、それが常人であれば大した事が無い……で済む
鳴島

普通の人でも、不安は持つけど…………

大したことは無いで……済む?
光一

そう。例えばさ…………

『あ、オレの手、汚れてるな』と思う時があったりね。

でも、この考えが強く感じられ、かつ長く続いてしまう。

よって、常に心が苦しい……そういう観念を持ち続けている。

ここまで来ると、いよいよ『強迫行為』が表れる
清香

何でですか?
光一

苦しいと事があると、人は紛らわしたくなる。

よって、それを紛らわせる行為が持続する。

これが最大のミソだ。

常人は『強迫観念』を大したことは無い……で済ませられるが、

そうでないレベルの人は、

これを打ち消すための行為を常に必要とする。

それこそが『強迫行為』というわけだ
鳴島

ああ、だから『強迫観念』と『強迫行為』がセットになると

『強迫性障害』と診断されるというわけですかぁ
清香

なるほど。

つまり、先ほどのマスターの例はどうなんですかね?
鳴島

ああ、そうそう。マスターは

『オレ、ヲタクなのに……何で痛車乗れないんだろ?

オレ、ヲタクじゃないの? 痛車乗らなきゃダメ?』

ってこれは、強迫観念じゃないんですかぁ?
光一

確かに一種の不安であり、『強迫観念』かもしれないが、

私は別にその事を強く不安に思わないし、

痛車に乗ろうとも思わないね
鳴島

つまり、ここから先の『強迫行為』には至らないと
光一

そうだね。

……もっと分かりやすい例を上げた方がよくないかね?
清香

と、言いますと?
光一

『強迫性障害』における『強迫症状』の分かりやすい例
鳴島

例えばどんなのがありますかぁ?
光一

逆に質問をしよう。

君たちはご飯を食べる前に、手を何回洗う?
鳴島

まあ…………
清香

1回洗って、食べますよね
光一

私も1回洗って食べるね。

ところがだ…………1回洗っても気が済まない。

10回も20回も洗って、ようやくご飯が食べられる人がいる。

これを君たちはどう思う?
鳴島

ちょっと異常ですよねぇ…………
光一

『不潔強迫』というのが、今の例に当てはまる病状だ。

潔癖症なんて言い方もされるけどね。

電車のつり革は汚いから掴めないとか、

自分自身の身体が汚れているんじゃないかとか、

必要以上に不安・不快になってしまう
清香

だから何回も洗ってしまうと?
光一

そう。食事前に10〜20回も手を洗う。

何かに触れる度に汚れが気になり、

1日に5回も6回もシャワーを浴びないと気が済まない……

こうしたものが『強迫行為』としての『不潔強迫』と言われるもの。

汚れている事を、異常なまでに恐れている状態だね
鳴島

そうした行為を、

やっている本人は自覚してないんですかぁ?

だってぇ、意味がないですよねぇ?

食事前に10回も20回も手を洗うとか……
光一

あ、この場合……大体の人は自覚しているんだ。

『自分がしている事はバカバカしい!

何度手を洗ったって意味が無い!』

って分かってる場合が多いんだよ。

これは、自覚症状が結構あるんだ
鳴島

でも、なら何で止められないんですかぁ?
光一

根本問題に、ストレスが重なっているからだね。

さらには、過去の失敗体験や

心を傷つけられたトラウマなどで、

その行為に何らかの意味づけがされてしまっている。

この解決のために、『強迫行為』を繰り返している
清香

具体例など、もう少しあげるとどうでしょう?
光一

よく知られているのは、先ほどあげた

『不潔強迫』:常軌を逸するほどに汚れを気にする。

これの他には

『確認行為』なんてのもよくある例だね
鳴島

確認行為?
光一

例えば外出する際……君たちはカギをどうしてる?
鳴島

カギ? 一応かけてきますよぉ
光一

……………………

綾香君……君の部屋のカギ、

実は今日は、かけ忘れたんじゃない?
鳴島

そんなまさかー♪
光一

…………と、普通の人は気にしないよね。

出かけた先で言われたって、大したことじゃあない
清香

ですよね
光一

『確認行為』という『強迫症状』はそうではないんだ。

『確認強迫』とも言うんだけどもね。

外出するときに、カギがかかっているか?

ガスの元栓をしめたか?

TVの電源は? エアコンのスイッチは切った?

全部気になって確認してしまうんだ
鳴島

ほえ?

私だって確認ぐらいしますよぉ?
光一

そう、1度はするだろうね
鳴島

ん? 何か違うんですかぁ?
光一

1度それらを確認して外出したとしよう。

しかし、10分もすると不安になる。よって、

TVの電源からガスの元栓、カギの開閉を

また確認するため部屋に戻ってきてしまう
鳴島

え?
光一

そうしてまた外出するんだけど、

その内、また戻ってきて確認を一から繰り返すんだ……

あるいは自宅にいる時でもね。

何度も『トイレの電気は消したか?』とか、

『玄関は締めたか?』とか…………

何でも確認を繰り返さないと気が済まない
清香

それだと、日常生活にも仕事にも

全て支障をきたしませんか?
光一

そう。だからこそ『強迫性障害』なんだね。

生活に支障をきたすレベルにきたら、

もはやその段階で病気なんだよ。

これは治療が必要なんだ。

ちなみに私も『強迫性障害』を持っている
鳴島

マスターも?
光一

仕事をしている時の事なんだ…………

お客さんに送るメールを10回も20回も読み直すんだ。

そうして送った後…………

また送ったメールを10回も20回も読み直すんだ……

1通のメールに10分も20分もかけてね
清香

本来、そこまでの必要はないですよね?

仕事に明らかに影響が出ますよね?
光一

私はドクターに相談したら『強迫観念だね』と言われた。

『何度も確認する必要は無いんだよ』と言われた。

もう、これは全くその通りなんだ
鳴島

何でマスターはそうなったんですかぁ?
光一

思い返すとだけど…………

お客さんとメールでの意志疎通がうまくいかなかったから。

個人的にはこのメールが来たのがきっかけだと思う。

『こんな詳細に説明しなくてはならないほど、

あなたは幼稚なんですか?』

ってメールが来た事が…………
清香

随分辛辣な言い方ですね
光一

送った相手はすぐに忘れているだろうし、

大した意味合いも含まれていなかったのかもしれない。

それと、私はそこまで言われる程のやり取りをした覚えは、

今をもっても全く無いんだけど…………

それ以来、メールは不安で不安で…………

相手を傷つけていないか?

相手に意味が伝わっているか?

失礼な部分はないか?

とにかく気になって気になって……

実は仕事している時に一番怖かったのは、

メールを開く事だった…………
鳴島

なるほど…………
光一

とにかく、『強迫観念』を持ち不安・不快感を常に持っている。

それゆえに、『強迫行為』という無意味な行動を繰り返すわけだ
鳴島

なるほど。そういうのを『強迫性障害』って言うんですねぇ
光一

そういう事。今回はこの症例について説明するため、

『不潔強迫』『確認行為(強迫)』の2例を挙げたけど、

まあ、症例は他にも多々あるし、パターンもある。

まあ、今回はそこまでは深く入らない事にしよう。

またの機会に話す事にしよう
鳴島

どうしたら治せるんですかねぇ?
光一

これらの行為に際しては、薬物療法もあるね。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などもそう。

まあ、薬物的な事に関しても、今回は深く入らないでおこう。

『強迫観念』を抑えるために、

抗うつ薬が効果を発揮する場面もあるということね
鳴島

やっぱり薬も使うんですかぁ?
光一

必要によって、量も種類も変わると思うけどね。

うつ病もそうだし、こうした『強迫性障害』もそうだけど、

病気である事に変わりは無いんだ。

風邪を引いたら、薬で身体の免疫系の回復を待つように、

こうした病気は脳の伝達物質に異常があるんだ。

だから、脳の伝達物質が正常になるように、

あるいは正常に戻すための補助として、

投薬治療は意味があるんだ……効くのに時間はかかるけどね
清香

では、他には?
光一

やはり『認知療法』が重要になってくるね。

そもそも大事な事にだ、

『強迫観念』と『強迫行為』には意味が無いんだ。

…………と言う事を、気付かせ、

『こんなに何度も手を洗う必要は無いんだ』

『何度もカギの確認をする必要は無いんだ』と、

考え方を定着させていくんだよ。

そうすることで、強迫性の軽減が行われるようにするんだ
鳴島

なんか、ガマン大会みたいで……

身も蓋もないような感じなんですけど……
光一

まあ、そうなんだけどね。

今まで10回手を洗っていたのを、9回にした……

それを、8回、7回と少しずつ変えていくことが重要なんだね。

無理のない範囲で、少しずつ慣れていく。

『強迫行為』の回数を減らす事が出来るようになると、

『強迫観念』が意味の無い、大したことではない

そういう風に思える日が、やがて来る
清香

ただ、本人は不安・不快感を強く持っているから、

そうした行為に及んでいるんですよね?

ただ『その行為に意味は無いから、止めなさい』

って言って通じるものですか?
光一

そこが難しい。『止めなさい!』と言われても、

不安・不快感があるので、そのストレスから逃れるために、

『強迫行為』に走っているんだからね。

『強迫行為』を止める事で、余計にストレスがたまり、

『強迫観念』がますます強まるジレンマがある。

やはり『認知療法』に関して…………

良い心療内科・精神科にドクターと巡り会える事が

結構大きな要素にもなってくるかもしれない
鳴島

う……ガマン大会なんて言っちゃったけど、

難しい問題ですねぇ…………
光一

そう。

そしてまた、うつ病に通じる部分があるんだけど、

重要なのは…………

『自分の行動は、自分の考えで動く事』

『自分の行動に責任を取れる事』

『何の考えに基づいて行動すべきか、自我を確立する事』

こうした事がとても重要になってくるんだ
鳴島

これも以前の話に通じていますよねぇ?

自分の考えを持てていないというかぁ……

自分の考えを貫けないというかぁ、

何をしてもダメと思い込んでしまうところというかぁ
清香

マスターが以前言っていましたね。

『周囲の評価のみで動いてしまう』

『周囲の人たちの意見を、自分の考えだと思い込む』

『自分の心の在り方を脇に置いて、周囲を優先する』

こういう人が幼少期から作られてしまっているとか、

こういう人は生真面目で、うつ病などになりやすいと
光一

うん。やはりね…………

『〜だ、でも〜』……つまりは、

『Yes,But思考構造』が表れているんだ。

『強迫性障害』を治療するにあたって、

『手を洗う回数を減らしていきましょう』と医者が勧めても、

『減らすべきとは分かってるんです、でも、出来ません』

ってなる構造があるんだ
清香

前回は『依存症』についての話でしたが、

この『強迫性障害』って似ていませんか?
光一

そうだね。根底に通じるものはある。

例えば前回の例で言うと、

『アルコール依存症』は一種の

『強迫行為』ともとれるよね。

ストレスや不安・不快感から逃避するために、お酒を使う。

飲んでいる本人は…………

『お酒を飲んでもダメだ! 解決にはならない!』

と分かっているのに、お酒に依存してしまう。

分かっているけど止められない。

止めた時の不安に耐えられない病気なんだ。

『強迫観念』……不安・不快感の持続は、

各種依存症や、今回の『強迫行為』、『不安障害』を引き起こす

そうした根源となってしまう事がありうる
鳴島

でも、そうしたストレス・不安・不快感は、

本人の思考構造を改善しないと根本解決にならない

…………そういう話でしたよねぇ?

前回の依存症の話はそうだったと思いますがぁ
光一

そう。だからこそ、

『〜だ。でも〜』と否定する思考様式ではなく、

『〜ですね!』と考えを切り替える方向の治療を行う事。

また、『〜しなければいけない』

というストレスをためる思考様式ではなく、

『〜したい』というストレスをためない思考様式を

自分自身に定着させる事が大事なんだ
清香

色々なところで通底するものがあるんですね。

『〜したい』という思考・行動様式と

『〜ですね』という思考・行動様式
光一

やはり、思考様式がどうしてそうなったのか……

幼い頃から育ってきた環境もあるだろうし、

大きな失敗経験・喪失体験など、

そうした辛い体験が重なって、

ストレスがたまっていく事が、

良くない方の思考様式に固めてしまっている

そうした可能性を否定はできないね
鳴島

こういう病気にかかる人が100万人を超えているなんて……
光一

双極性障害などの、うつ病患者は100万人以上いるが、

今回話をした『強迫性障害』については、

人口の2パーセント程度と言われているね
清香

……ということは日本では……

1億2700万人の内……250万人!?
光一

潜在的にはその程度の人数がいるとは考えられる。

まあ、うつ病患者と重複する人もいるだろうけどね。

クリニックなどでの受診で把握できている人数は

大体100万人位。だから、珍しい病気ではないんだ
鳴島

なるほど。うつ病患者数も100万人以上、

強迫性障害も100万人以上…………

それだけいたら、どこにでもいるって事ですよね
光一

そう。だから、そういう症状の自分について、

自分だけを責めて苦しむ事は無いんだ。

『自分は普通の人と違って、異常だ!』

…………なんて1人で悩まない事さ。

『自分以外にも苦しんでい人がいる』

『病気なんだから恥ずかしいことじゃない、

医者に行ってみよう。治せる病気なんだ』

そういう風に考えて、治療するように考えたらどうだろう。

肝要な事は『自分の人生、大事に生きたい』ということさ
清香

そうですね
光一

あ、最後になるけど…………

綾香君のイラストをいただいていたんだ♪





清水ももこさんから貰った、『鳴島綾香水着イラスト、2012年夏』

鳴島綾香水着イラスト、2012年夏

(清水ももこ様より)





鳴島

ももこさん、いつも私のイラストをありがとうございますぅ
光一

いやー、いつ見ても素敵なおっぱい……

やはり巨乳というのはロマンに溢れているね
清香

……………………

やっぱり巨乳じゃないとダメですか?
光一

へ?
鳴島

さ、さや……清香? 目が怖いんだけど……
清香

私も巨乳になってやるー!!

巨乳じゃないと、ダメなんだ……女としてダメなんだ!

お姉ちゃんが巨乳なのに、妹の私が小さいなんて

おかしいんだーーー!!

ちょっとそこのスーパーで

牛乳買い占めて来る!!
光一

清香君……って、行っちゃったよ……

まだ仕事中なんだけど…………
鳴島

マスター、あれも『強迫観念』とか『強迫行為』

…………なんですかねぇ?
光一

極端に行き過ぎれば、まあそういうことかなあ…………

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