9/26(水)
不安障害その2……治療、認知行動療法とストレスコーピング

鳴島

まあ、マスターはアレですよねぇ?
光一

何だね、アレって?
鳴島

女性の後ろを歩くだけで、

相手に変質者と思われてるんじゃ

とか思ったりするのもアレですけど、

アナタの後ろにいるだけで、ゾクゾクします!

なんて、普通相手に言う必要あるんですかぁ?
光一

しょうがないだろ!!

言わないと不安で仕方なかったんだよ
清香

何が何で、そんな不安になるんですか?
光一

なんというか、女性の後ろを付いていくと……

女性側が私に対して

『この人、私を……襲うつもりじゃないの?』

とかの疑念を抱きそうじゃないか。

だから、私が心で思った事を、

相手に言うことで、相手を安心させるというか、

自分自身を安心させようというか…………
鳴島

それは…………
清香

自意識過剰と言うか、

単に思い込みが激しいだけかと思います
光一

自意識過剰!?
鳴島

まあ、夜道で男性に後ろから近付かれるのは

どことなく怖いのも事実ですけどねぇ
清香

それこそ一種の『不安障害』じゃないですか?
光一

むぅ……まあ確かにね、

『不安障害』などの精神疾患について、

以前話をしたけどね、

他者と自分の境界が無くなる』って……

『解離』の話だけどね。

自分が思っている事、恥ずかしいと思ったことが、

相手に伝わっているんじゃってやつね
清香

互いの心の中なんて分からないのに、

『不安障害』などが進行すると、

自分の思っている事が他人に伝わっているとか、

そういう風に思い込んでしまうんでしたっけ?
光一

そう。例えば…………

『あの娘さんの胸、大きいな』って思った時、

その娘さんにその心の声が聞こえたと思い込んで、

ものすごい罪悪感に囚われるんだ。

『なんて恥ずかしい事を自分は思ったんだ』とか、

『きっと相手にも、この心の声が聞こえている、恥ずかしい』

なんて、そんな妄想まで至ってしまうんだね。

絶対に相手に伝わる訳は無いんだけどね
鳴島

ちょっ!!

なんで私の胸をじーっと見てるんですかぁ!
光一

こんな風に、伝わってしまうんだ。

そう、思ってしまうわけだね。

ちなみに、私はさっき、

『綾香君、超巨乳だなあ』って思ってた
鳴島

マスターの心の中で思ってた事は、

言われるまでは、全然分かりませんでしたよぉ!!

そんな凝視するから言っただけですぅ
清香

まあ、心の中で思ってる事なんて、

相手に伝わる訳ないですよね、普通
鳴島

と、そういうわけで今回の話は何ですかぁ?
光一

今回は『不安障害』2回目の話をしよう。

1回目については、前の記事を参照して欲しいが、

前に話をした時には、大きく【4分類】したよね。

また、『悩む事が好きな人達』とも話したと思う
清香

そうですね。

で、今回はどういう切り口で話をするんですか?
光一

『不安障害』の分類と、

その内容については以前書いたつもりなので、

今回はその対処法、治療について書こうと思う
鳴島

なるほど
光一

『不安障害』は『パニック障害』などに代表されるけど、

『広場恐怖』……他者と接触せざるを得ない空間。

言い直すと、他者から逃げられない空間で、

強烈なストレスを感じてしまう
清香

それが発作なり、逃げたい衝動なりを生む。

そういう症状が積み重なってしまうと、

仕事が出来なくなる。出社出来なくなる。

家の外に出られなくなる……

等々の深刻な問題を生み出してしまう。

そういうのが『不安障害』の代表的なもの、

というような話をしていましたね
鳴島

それは前回の話の大まかな症状についてですよね
光一

そう。で、前回……治療法についても、

述べたと言えば、述べてはいたんだ
清香

認知行動療法』と『薬物療法』ですね
光一

で、前回の話をある程度否定するようだけど……

不安の治療に関して最大のものは……

結局、薬物ではないんだよね
鳴島

あれ!?
光一

今日の話としては、以下の点を述べていこう。

1.『認知行動療法』による、経験の獲得。

2.ストレスゼロの社会で生きる事は出来るか
鳴島

ストレスゼロ……ストレスの無い社会って事ですよね?

そういう社会の方が良いんじゃないですか?
清香

そういう社会になれば、

『不安障害』などの精神疾患にもならないし、

そういう患者さんも減っていくんじゃないですか?

良い事のように聞こえますけど…………
光一

そうではないと考えられるね。

と、君たちが食いついた部分は、

今日の論点の2本目なので、

まずは1本目から話をしていく事にしよう
鳴島

はい
光一

まず、最初の…………

1.『認知行動療法』による、経験の獲得。

前回までの『栄養療法』の中で、

うつ病の基本的な治療は『投薬治療』だ……

と、書いたわけだよね。

まあ、それだけではダメなので、

『栄養療法』の重要性を説いたんだけどね
清香

『セロトニン』の話を何度もされていましたよね。

脳内神経伝達物質『セロトニン』の減少が、

うつ病の一要因で、その現象を抑制する、

『SSRI』の服用が治療の一つだと
光一

で、『SSRI』と『セロトニン』の話を書いたけど、

『セロトニン』がうつ病の一要因である…………

というのは、病因としてはブラックボックスなんだ
鳴島

ブラックボックスって何ですかぁ?
清香

内部構造について、

よく分かっていないものの事だよ
光一

そういう事だね。

実は、科学的だと言いながら、

『セロトニン』がどうの……というのは、

完全にそれが要因か…………

とは判明しきっていないわけだ。

つまり、精神疾患の原因について、

科学的に100%分かっているわけではない
鳴島

以前の話を、半ば否定している気がぁ……
光一

まあ、風邪だってなんだって、

病気の全てが解明されているわけじゃない。

今後判明するかもしれないけどね
清香

まあ、それはそうですよね
光一

よって、こういう言い方が出来なくもない訳だ。

うつ病の原因は『セロトニンの減少である』

とは、科学の名を借りた、非科学的発想だと
鳴島

それだと、今までの精神疾患シリーズ……

その多くを否定する事になりませんかぁ?
清香

ちなみに今まで話されてきた、シリーズは

うつ病:『(その1その2その3)』

依存症:『(その1)』、

強迫性障害:『(その1)』、

不安障害:『(その1)』、

栄養療法:『(その1)(その2)』でした
光一

否定してはいないよ。

つまり、精神疾患は基本的には、

社会的要因・外的要因・内的要因・生育環境

職場・学校環境などなど…………

人と人との関係性や、そこでの考え方の構築、

ストレス過重などによって、引き起こされる
清香

競争社会化で将来が見えない今では、

失敗する事の恐怖・不安は増してますしね。

何につけ成功しろだの…………

良い成績を取れだと言われますしね
鳴島

まあ、そうですよねぇ。

その人がどう育ってきたのか、

社会的にどういうストレスにさらされたのか、

それが精神疾患の要因ですよねぇ
光一

うん。環境は内的外的問わず、重要なんだ。

で、脳内神経伝達物質については、

確かに要因の説明にはなるけれども、

それを制御する薬の開発・服用によってだけ、

病気が治る訳ではないという事さ
鳴島

では、どうしろと?
光一

前にも『認知行動療法』について述べたけど、

これが重要性を持っている
清香

思考の在り方と、行動様式を変えて、

不安に感じる対象を、経験で克服する事ですよね
光一

うん。

生き方全体を変える発想が無いと、

なかなか治療には結びつかないんだ。

例えば不安を感じる事…………

子供の時に、真っ暗な夜中だ。

トイレに行くのが怖かった…………

という人は少なからずいるだろ?
鳴島

そうですねぇ、私はそうでしたぁ
光一

今は?
鳴島

別に何とも思いませんがぁ
光一

つまりこれは、

夜中トイレに行っても怖くは無い。

……という経験を積み重ねた結果なんだ。

つまり、認知による経験を積むと、

恐怖・不安は無くなる訳だよ
清香

逆に、そこで怖い思いをすると別の話ですよね?
光一

その通り。今の例で言えば、

夜中にトイレへ行く際に、

毎回毎回怖い思いをさせられた、

例えば…………

『夜中にお前がトイレなんか行くせいで、

私達が何度も起こされるじゃない!』

と、親に理不尽にも怒られ続けた場合、

これがトラウマとして残る事になる
鳴島

そうすると……どうなりますかぁ?
光一

一種の『不安障害』として、刷り込まれる。

つまり、以下の経過をたどる可能性がある。

『夜中にトイレに行くと、激しく怒られる』

『夜中トイレに行く事は悪い事』

『夜中トイレに行くのが怖い』

『水を飲むと、トイレに行きたくなる』

『水を飲むことが怖い。水は怖いものだ』
清香

つまり、日常生活に欠かせない飲料が、

うまく摂取できなくなると
光一

これも『不安障害』の一種だよね。

でも、普通そういう過程さえ無ければ、

夜中にトイレへ行く事は怖くなくなるわけだ
鳴島

まぁ、そうですよねぇ
光一

つまりね、

経験というインプット(入力)を重ねる。

そのアウトプット(出力)で不安が減少する。

この方が、100%の解明が出来ていない

『セロトニン』うんぬんなどの『投薬治療』よりも、

むしろ科学的なんだよ
清香

でも、薬を飲む事も大事ですよね?

病気には違いないわけですから。

そう、前に言われていますよねぇ?
光一

しかしだね、薬を服用しました。

後は布団の中でずっと寝ています。

これで果たして精神疾患は治るかね?

『不安障害』は治るものかね?
鳴島

う……確かに言われてみれば……
光一

つまり、『不安障害』は結局のところ、

自分が不安に思っている対象を、

経験によって克服する以外には、

最終的な完治は目指せない訳だよ。

薬は減薬し、いずれ無くさなくてはいけない。

そうでないと、何度でも再発してしまう
清香

うーん…………
光一

例えば、前にも『不安障害その1』の分類で言ったように、

『パニック障害』は『広場恐怖』が起因している
清香

電車に乗る時、パニック発作が起きたらどうしよう。

会議中に発作が起きたら、買い物中に起きたら……

というものでしたよね?
光一

そう。 これは薬だけでは治せないよ。

つまり…………

『電車に乗れた』『会議に参加できた』『買い物出来た』

こういう成功の経験を重ねて行くしかないんだ
鳴島

でも、そういう不安を強く抱えている人に、

『じゃあ、電車乗りなさい』って言っても

そんな事は出来ない…………

って言ってきたのはマスター本人ですよぉ
光一

その通りだよ
鳴島

んぅ??
光一

自分ではどうにもならない事を、

経験しようとしても無理な話だよ
清香

それだと、『パニック障害』などで、

例えば、電車に乗れない人は…………

電車に乗れないんですから、経験しようにも、

不安の克服経験が出来なくないですか?
光一

清香君って、自転車……最初から乗れた?
清香

いえ…………乗れませんでした。

最初は補助輪付きでしたね
光一

どうやって普通に乗れるようになったの?
清香

補助輪を外した時は…………

親に自転車の後ろを支えてもらって。少しずつ……

あ、乗れる……って、いつの間にか
光一

そういうものだよね?

初めてする事には誰しも不安がある。

それを克服するのには、

やはり誰かの補助・支援があるわけだ
鳴島

ですよねぇ。

最初から出来ないものを、

独りでやれ……っていうのも無理ですよねぇ
光一

『不安障害』の治療について、

1.『認知行動療法』による、経験の獲得。

……とはそういう事さ
清香

周囲の助けを借りる……と?
光一

不安のハードルを下げてもらうのさ。

自分が飛べるハードルにまで下げてもらう。

そうして飛ぶことで成功の経験をするのさ。

それが『不安障害』の治療の根幹さ
鳴島

具体的にどうしますかぁ?
光一

それこそ、『投薬治療』も重要になる
清香

『投薬治療』を今まで肯定してきて、今回で否定して、

また肯定しましたよね?
光一

『投薬治療』だけでは治らないと言っただけだ。

薬によって状態を改善して、

外にすら出られなかった自分を、

玄関の外に出られる位にサポートしてもらう。

そうして少しずつ『広場』に出て行くようにするのさ。

薬というのは完治させるためのものではなく、

完治に向かうための補助輪なんだよ。

補助輪はいずれ、外すものさ
鳴島

あ、なるほどぉ
光一

同時に、周囲の人々のサポートが重要。

回りのサポートで、ハードルを下げてもらう。

仕事なら難易度の低いものからやってもらうとか、量を減らす。

買い物に一緒に付き添ってあげるとか、

そうした小さな事からで良いわけだ
清香

つまり、自転車の補助輪のように

薬・周囲のサポートを受けるべき……と
光一

そう。そうして不安を克服できた経験を積む。

少しずつハードルを上げて行く。

10センチだった高さを、10.1センチに。

1ヶ月後には10.8センチにと…………

それを繰り返す内に、

普通の人と同じ事が出来るようになる
鳴島

なるほど
光一

『飛び箱』を例にするならば、

みんなが8段目を飛んでいる時に、

自分は1段目しか飛べないとしよう。

だから1段に下げてもらう。

でも、ずっとそれでは8段目まで進めない。

だから、先生や友達に背中を支えてもらう。

それで支援ありで、ようやく2段目が飛べたとする。

繰り返すと自信がついて、不安が消えて来る。

その内、補助なしで2段目が飛べるようになる。

そうしたら3段目でまた、補助をもらう…………

こうして少しずつ克服するのだね
鳴島

なるほど、それは分かる気がします
光一

ただし、一気にハードルを上げない事。

患者自身が焦ってハードルを上げたり、

周囲の人が、問題なさそうだと思って、

いきなり通常の業務に戻すと…………

大体はそこまで出来るよう回復してないからね。

そこで失敗の経験を積んだ時に、

また不安が強まってしまい…………

以前より『不安障害』の度合いが強まってしまう
清香

そうですよね。

不安対象を克服出来なかった時は、

そのショックは大きいですもんね
光一

人間は成功体験による喜びと、

失敗体験による不安・恐怖…………

これを天秤にかけてしまうと、

後者の不安・恐怖が勝ってしまうんだ。

『不安障害』の克服過程なら、なおさら。

その点には注意しなくてはいけない
鳴島

治そうと気ばかり焦ってもダメって事ですね。

以前も言ってましたよねぇ?

『〜しなくてはいけない』ではなくてぇ、

『〜したい』で行動する事。ハードルを上げすぎない事
光一

そう言うことだね。

というわけで、『不安障害』の治療には、

【『認知行動療法』による、経験の獲得】

これが重要だという結論に至る訳だ
清香

では、次の観点ですね
光一

2.ストレスゼロの社会で生きる事は出来るか?

という観点の話だね
鳴島

先ほども疑問を感じましたけどぉ……

ストレスの無い社会の方が良いに決まってますよね?
清香

社会からストレスが無くなれば、

精神疾患で苦しむ人だっていなくなるのでは?
光一

まず、そもそも論になってしまうが……

『ストレスゼロの環境は作れるのか?』
鳴島

う…………それはぁ……
清香

無理ですねぇ
光一

確かに現代社会は……特に日本は、

信じられない位のストレス社会だ。

自由競争を政治家・企業家が礼賛し、

常に成功する事が大事だと喧伝されている
鳴島

そうですよねぇ…………

大学生なんて就職だけでも大変ですしぃ
清香

就職できないだけで、

人生もう終わり……みたいな風潮ですよね。

何のために就職するのかが抜けていますよね
鳴島

企業だって、若者を育てるというよりも、

最初から使える即戦力を求めていて、

人を大事にするって観点が無いですよね、もう
光一

そんな環境で育った子供たちが、

健全に育ってくるはずがない。

互いに助け合うのではなく、

競争を……と植え込まれているから。

また、大人たちも健全な心と考えを

到底持てる社会であるとは思えない
鳴島

そうですよねぇ…………

だからこそ、うつ病とかの疾患が毎年増えて
光一

小泉政権以降、『自己責任論』が急速に強まった。

これは自由主義・競争社会・グローバル化

それを強力に進める中で、強弁されるようになった
清香

当然ながら競争社会だと、

人間関係もギスギスしますし、

勝ち組負け組なんて言われ方も出ますよね
光一

だからこそ政治家・企業家はこぞって、

『アナタの失敗は、アナタのせいだ』

『就職できないのも、低収入も、アナタのせい』

と、強調して、それが正しいように主張したのだね。

そうでなければ、自由主義・競争社会に移行した後、

競争の中で振り落とされる人達からの

当然沸き起こるだろう批判をかわせないから
鳴島

うーん…………つまり、批判対象の原因から目をそむけさせ、

責任を別の所へ転換させたかったと。

批判の矛先をかわすために
光一

先の見えなくなった将来に絶望する人々に、

『社会全体で互いを支え合おう』ではなく、

『落ちこぼれが出たら、そいつの責任だ』

……というのを押しつけるためには、

『自己責任論』というのを

どうしても刷り込みたかったんだろうね。

『自己責任論』と言うのは、悪辣な無責任論なんだ
鳴島

となると……社会環境は悪化するばかりで、

ストレスの強くなる社会になる一方な気が
光一

事実、そう進んでいる。

労働者を守る法律はほとんど適用されないし、

労働者が権利を訴えると、

何故か同じ労働者が非難に回るという……

おぞましい社会になっているからね。

『自己責任論』という価値観が、

競争社会にミックスした結果だろうね
清香

なんとも夢の無い社会ですよね
鳴島

夢の無くなった社会だから、

『自己責任論』を唱えることで、政治家・企業家が

知らんぷりを決め込んだとも言えるかも
光一

まあ、そういう事だ。

と、話を戻すと……ストレスゼロでやっていけるか?

答えは『否』と言うことだ。

と、日本社会のように過重なストレスは問題だが、

しかし、『ストレスの無い社会が良い社会か?』

という問題もあるよね?
鳴島

無い方が良いんじゃないですかぁ?

さっきも言いましたけどぉ
光一

いや、ストレスを全て解放する事が良いとは言えない。

というより、どのような環境でもストレスがある。

『不安障害』イコール『ストレス病』などと言われるが、

例えば、ストレスにはどのようなものがあるか?
清香

やっぱり、仕事とか学校とかですかね?
鳴島

対人関係とか?
光一

君たちの言うのは、精神的ストレスだね
鳴島

他にあるんですかぁ?
光一

ストレスは大きく分けて2タイプある。

『身体的ストレス』と『精神的ストレス』だ
鳴島

精神的……は分かるとして、

身体的ストレス?
光一

『身体的ストレス』とは、

不眠・風邪などの病気・疲労・生理的なものだね。

特に女性は生理のストレスが強い人もいるはずだ。

『生理休暇』というのも、形式上とは言え、ある位だ。

……ともあれ、いずれもストレスを感じるものだよね?
清香

言われれば、そうですね
光一

『精神的ストレス』とは、

対人関係しかり、他にも『原不安』がある
鳴島

何ですかぁ?

『原不安』って?
光一

20世紀初頭の心理学者、フロイトが1926年に書いた、

『制止・症状・不安』という論文に出ている

『Urangst』を『原不安』と言うのさ。

要するに、人間は生まれた瞬間から不安を抱えている。

これを『原不安』と言うのさ
清香

生まれた瞬間からストレスを感じている?
光一

難しい言い方になるので、深入りしないけど、

母体から離された瞬間(出産)から、

人間は母体よりの離別と言う危険、

……絶滅不安を抱えているという事
鳴島

うーん……っとぉ…………
光一

母親の母体にいる時、人間は不安を感じない。

ところが、この世に産声を上げた瞬間から、

まさに産声という方法によって、

この世の環境に対する不安を訴えている。

精神的には生まれた瞬間から

人間はストレスを抱えているという事さ
鳴島

なるほど……安全な空間からそうでない場所へ、

そうして最初のストレスが生まれると…………
光一

『不安障害』というのは、

根源としての『死の恐怖』という、避けられない事。

それが過重なストレス反応となっているわけだ。

『パニック障害』の『予期不安』はまさにそれだ。

もし、電車内で発作を起こして死んだら……ってね。

しかし、軽重あれ、

やがて訪れる死は、誰でも抱える問題だ
鳴島

そうですね……確かに死ぬ事を考えると、

怖いものはありますよねぇ
光一

人間は自分の心の平静を保ちたいが、

どうしても人との関係性で闘争状態が生じるわけだ
鳴島

うーんっと、それは…………

人となんらかの関係を持てば、

その人と緊張関係にあるという事ですかぁ?
光一

その通り。それには軽重あるけどね。

しかし、人間はストレスを感じるからといって、

目の前の相手を殴る訳にもいかない。

仕事・学校・家族関係・人づきあい……

いずれもそうだよね?
清香

それはそうです
光一

そうしたストレスが重なってしまうと、

自律神経が乱れる。

そうすると、睡眠不足や過労という形で、

身体の変調が出始めるわけだ
鳴島

それは理解できます
光一

そうすると、

それは危機的な状況だと……身体は認識する。

すなわち、人間が根源的に抱える恐怖『死』、

これが自分に起きるのではないかと?

そして『自分は死ぬのでは?』という『予期不安』が高まる。

パニック発作などの要因となり、

まさに『不安障害』そのものになるわけだ
鳴島

ストレスをどう対処するかが問題ですよね
光一

そう。さっき言った『原不安』から考えると、

人間は安全な空間から放り出されているわけ。

よって、常に恐怖・不安と闘わなくてはいけないのだけど、

過重な負担を加えられると、

身体の防衛本能から、『不安障害』になるのでね
清香

ところで、先ほどの私達の疑問だった

『ストレスゼロの社会の方が良いのでは?』

という疑問に、ちゃんと応えられていませんよね?
光一

その通りだね。では、応える事にしよう。

先ほどからストレスの多くについて、

『対人関係』を中心として、

仕事・学校・人づきあいなど挙げてきたのだが、

そういうのが無い空間を想定すると……どう?
鳴島

うーん……誰とも付き合わなくて済む場所……
清香

宇宙とか行ったらどうですかね?

誰とも付き合わなくて済みます。

もちろん、仮定の話ですけどね
光一

清香君が面白い事例を挙げてくれたので、

じゃあ、宇宙飛行士はストレスを抱えないのか?
鳴島

いや、抱えていますよね?

地球へ無事に帰れるのか……とか
清香

あ、人とはあまり会わなくても、

死と隣り合わせの恐怖は無くなりませんね
光一

宇宙飛行士ってかつてはさ、

空軍のエリートだったりしたんだ。

今でも身体的に頑強・精神的に強靭

そういう人が選抜されてきているよね?
鳴島

そうですね。人並み外れた方ばかりですね
光一

人間が宇宙に飛び立った時、

帰って来た宇宙飛行士を見て、

人々は初めて発見した事があるんだ
鳴島

何をですかぁ?
光一

『人間は重力というストレスを受けている』

と言う事にさ
鳴島

えっ?
光一

頑強なはずの彼らの肉体が、

まるで老人かのように…………

まともに歩く事もかなわなくなっていたんだ
清香

そう言えば、宇宙ステーションから戻った人達、

みんなしばらくはリハビリを受けていますよね
光一

そう。人間の骨は重力に逆らうために、

常に鍛え続けられていたのだね。

その『重力というストレス』から解放された時、

人間はもろく・弱い存在になっていたんだ
鳴島

つまり、マスターは…………

ストレスはやはりあった方が良いと?
光一

地球にいる以上、必ずストレスは受けるもので、

それを全て解放するのが良いわけではないのさ
清香

でも、『不安障害』もそうですけど、

人間の最大のストレスって

対人関係じゃないですか?
光一

じゃあ、『不安障害』などを抱える人が、

無人島に行ったらどうなるのだろう?

確かに誰とも会わなくて済むよね?
鳴島

あー……私だったら耐えられません
光一

なんで?
鳴島

だって……誰も人がいないんですよ?
光一

と、君の言うようにだ…………

ストレスゼロの空間を求めて、

人間がいない場所にいったとしても、

『不安障害』を持つ人が、

その空間に耐えられるはずが無い。

人は孤独には耐えられない
鳴島

前に、『ストローク』について触れた時に言ってましたね。

人はプラスでもマイナス感情でも、

相手との相互作用を欲しがる。

孤独が最もツライことだって
清香

ではやはり…………

『不安障害』など精神疾患を持っているとしても、

あるいはまだ持っていない人達でも、

ストレスのある社会の方が良いと
光一

誤解を招かない範囲なら、その通り。

過重なストレス社会は改善されるべき。

ただし、適度なストレスはあるべきなんだ
鳴島

何でですかぁ?
光一

人間の活力を失わせるからだよ。

例えば、子育てのストレスから解放された親。

仕事のストレスから解放された退職者。

長期療養で病院のベッドに寝た切りの人。

いずれも何らかのストレスから解放されたが、

逆にその事で、燃え尽きたり…………

様々な形で活力を失ってしまう
清香

確かにそれは言われれば
光一

もっと言い方を適切に変えるならば、

『対人恐怖』などを抱えている人が、

全く人のいない空間に行ったらどうなるか?

人間として生きる活力を失ってしまうよ
鳴島

じゃあ、『不安障害』の治療ということで……

2.ストレスゼロの社会で生きる事は出来るか

……の観点では、どう結論づけますかぁ?
光一

大事なのは『コーピング』だね
清香

なんですか?

『コーピング』って?
光一

『ストレスコーピング』とも言うのだけど、

ストレスに対して適切に対処することね
鳴島

具体的にどういう内容なんですかぁ?
光一

『コーピング』は簡単に言うと以下のような感じ。

1.ストレスを引き起こす状況を問題視して、

その状況そのものを改善する……という方法。

2.ストレスによる不快感を軽減するため、

気晴らし、あるいは良い側面を見出そうとする方法。

と、こういうアプローチを指す言葉だね
清香

例えば【1】で言えば、職場の配置転換とか、転職。

【2】ならば、運動とか思考方法の転換ですかね?
光一

そう言うことだね。

そして、【2】は以前話をした

『〜しなくてはいけない』とか

『〜であるべき』という価値観を

『〜したい』という思考方法に変える事や、

『〜だ、けど〜』という『Yes,But思考』を

『〜だ』という『Yes思考』に切り替える事が

まさに当てはまるね
鳴島

言われれば、そうですねぇ
光一

それに【1】の観点は転職なんてしなくてもいい。

職場の上司に

『この仕事は負担が大きすぎます』と相談し、

仕事を他の人にも分けてもらうような、

周囲からの支援を貰えるように、

環境を変える……という建設的手法もあるよね
清香

あ、そっか…………

全部自分で抱える……という環境を、

変えることだって出来ますよね?
光一

こうして『コーピング』で適切にストレスを解消する。

この適切な処置を重ねることで、

人間として成長する事が出来る。

この自己成長が、まさに

『不安障害』を治療する上で、重要なんだ
清香

今日、『不安障害』の治療で最初に述べた、

『認知行動療法』と重なる部分ですね
光一

そうだね。

ただし、自分で出来ない目標を立てるのは、

何度も言うけどNG、ダメだからね。

自分の中で出来ない事は何か?

それを認知して、出来る事を伸ばすよう練習する。

これが治療のために大事な事だね
鳴島

つまり、適度なストレスが生きる上で必要だ。

それにどう、アプローチするかが大切だ……

というのが、今日の結論ですね
光一

そ、まさにそれが結論。

過重なストレスと、その継続は病気になってしまう。

けど、適度なストレスは生きるために必要なんだ。

それへの適切な対処……コーピングを出来れば、

人間としてより強く成長していくことが出来るんだね
清香

でも、マスターが言いたいの…………

実はそれだけではないですよね?
光一

うん。人によってストレスを過重に感じるか、

それとも大して感じないか…………

同じものに対しても程度が異なるんだ。

会社の上司が部下に接するにしても、

友達と接するにしても、

『あ、この人はここまでのストレスはOKだろう』

『あ、この人はこれ以上のストレスはNGだな』

と、それぞれの個性を認めて、

それぞれに接する事が、何より大事だね。

同時に、自分を大事にすること。

自分を大事に思えない人は、

他人を大事に思うことが出来ない。

自己肯定感を持つことが大事だよ
鳴島

つまりは、相手を思いやって互いに行動する。

これが社会的には重要という事ですねぇ
光一

うん。それでOK。

今日の『不安障害その2』はこれで締めくくろう。

コーピングとかについては、また触れる機会があれば
鳴島

はーい♪
光一

と、実は…………

今日、相互リンク申請と同時に

なんと綾香君のイラストを貰えるという、

嬉しい出来事に直面しました





くらみずさんから貰った、『鳴島綾香イラスト』

鳴島綾香イラスト

※縮小前は上記ページにあります
くらみず様より)





光一

くらみずさん、ありがとうございました!
鳴島

ホント、ありがとうございますぅ♪
清香

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