10/3(水)
不安障害その3……二次的障害としてのコントロール欲求

光一

というわけで、私もね、

高校生の時はモテ期だったのだよ
清香

なんというか…………
鳴島

マスターに恋愛話というか、

色恋沙汰を相談するなんて……
清香

とても不安すぎて、私には無理です。

まずもって、ありえない気がします
光一

10数年前の私を全否定!?
鳴島

マスターに女子の同級生が

次々に相談に訪れてきていたなんて
清香

よっぽど当時、可哀相な位に、

人材がいなかったんでしょうね
光一

ひどい言われようだな!?
清香

だって、どう考えたって
鳴島

恋愛経験が人並み以下のマスターに

恋愛相談を持ちかけるなんて、

不安というか恐怖そのものですよねぇ
光一

そこまでか!?
清香

さて、そんなマスターの

捏造にすら思える過去話はどうでもいいとし
光一

捏造じゃないよ!!

ホントの過去話だって!!
鳴島

今日は何の話をされますかねぇ?
光一

君達と一緒に会話していると、

過去の自身の記憶にすら

あれ? 記憶違いだっけなんていう

不安を感じるんだが……

私、本当にリア充した高校生だったか?
鳴島

じゃあ、マスターはぁ、

根源的に不安を抱えているようなのでぇ、

今日も『不安障害』の話をされますかぁ?
光一

明らかに不安にさせたのは、

君達の言動によってだよね!?
清香

『不安障害』についての話は、これで3回目です。

1回目は『不安障害の分類』が主な話で、

2回目は『不安障害の治療・克服』でした
光一

君達、完全に私を無視して話を進めてるよね?
鳴島

なお、精神疾患シリーズは今日が10回目。

以前は…………

うつ病:『(その1その2その3)』

依存症:『(その1)』、

強迫性障害:『(その1)』、

不安障害:『(その1)(その2)』、

栄養療法:『(その1)(その2)』

というような話を進めてきましたぁ
光一

まあ、いいや。

私が無視されるのは、いつもの気もするし……
鳴島

いい歳した大人が、いじけてるー♪
光一

い、いじけてなんかないやい!

と、まあ……では話を始めよう
鳴島

で、どういう話を始めますかぁ?
光一

今日は『不安障害における二次的障害』

これについて話をする事にしよう。

『不安障害』の人が留意すべき点の喚起。

あと、どうしてそうなってしまったか?
清香

具体的にはどういう話ですか?
光一

以前話に何度か出たが、

1.『コントロール欲求』について。

2.『何故コントロール欲求の強い人間になったか』

という、この2点について話をしよう
鳴島

『コントロール欲求』って言うと、以前……

『うつ病』の話でされていましたよねぇ?
清香

『コントロール欲求』は簡単に言うと、

『自分は病気なんだ!

だから、周囲の人間・環境は、

私に合わせろ! 私が中心だ!』

と、周りを振り回してしまう事ですよね?
光一

そう。『うつ病』『不安障害』などの精神疾患に、

付随して現れる欲求の1つなんだ。

周囲を『自分の思い通りに動かしたい』欲求ね
鳴島

最初は周囲の人間も

『あ、この人は病気なんだから』と、

その人に合わせてくれるんですよね?
光一

だが、この欲求は周囲の人間を疲れさせる。

それは容易に想像がつくよね?

『常に自分に合わせてくれ!』

『何で自分の思った通りに動いてくれないの!』

って言うのだから。

そうすると、友人・家族が患者から離れていく。

振り回されて疲れるのはイヤだ……とね
清香

対人関係を悪化させる要因ですよね
光一

そう。病気が長引くと同時に、

『コントロール欲求』が長く続くと、周囲は疲弊し、

家族・友人との絶縁、離婚などが起きてしまう
鳴島

でも、そうすると誰も支えてくれる人……

いなくなってしまいますよねぇ
光一

そう……だから精神疾患の患者が、

孤立してしまう要因となるんだ
清香

マスターは今まで何回も、前回もですが、

周囲のサポートが重要』と言ってましたね。

普通の人のように行動できないから、

周囲の理解と支えで、成功経験を重ねて、

行動を出来るようにしていくと
光一

そうだよ。『うつ病』『不安障害』など、

精神疾患は基本的に周囲のサポートが大事。

これがあるか無いかで、

治療の難易度が変わってしまう
鳴島

それが受けられなくなると…………

治療困難や病気長期化の原因になりますよねぇ
光一

その通り
鳴島

まず、おさらいも含めてですがぁ、

『コントロール欲求』って

どうして発生するんですかねぇ?
光一

うーん、

根幹にあるのは『無力な自分』だね
清香

『無力な自分』?
光一

そう。『不安障害』などを抱える人は、

『自分は何も出来ない人間だ』

『将来が不安だ、自分は死ぬんじゃ?』

『周囲の視線が怖い、評価が怖い』

『自分は誰からも必要とされてないんじゃ』

といった…………

こうした漠然とした不安感を常に抱えている
鳴島

つまり、人と接していても、

仕事をしていても、日常生活を送っていても、

とにかく不安だという事ですよね?
光一

人間誰しも、不安と無縁の人はいないが、

基本的には一過性のものとして、

不安はすぐに消えるものなんだ
清香

まあ、24時間常に不安ばっかり……

って、普通の人ではないですよね?
光一

ところが『不安障害』の人というのは、

24時間常に不安なんだ。起床から就寝までね
鳴島

そんなにずっと…………
光一

起床すれば、

『今日は無事に生き延びられるか?』

と、ずーっと思い悩んでいる。

寝る時にすら、

『今日はちゃんと眠れるのか?』

『明日はどうなってしまうんだろう?』

と、ずーっと考えている…………
清香

睡眠障害などになりそうですね……

と、ずっとそれだけ不安でいたら、

気がおかしくなりそうです
光一

まあ、具体的に症例で言えば、

『パニック障害』は典型的だね。

『今日、外に出て発作が起きたらどうしよう』

『今日こそ、発作で死んでしまうんじゃないか』

『怖くて、外出できない、仕事に行けない』

と、ずーっと不安を抱えているわけだ
鳴島

つまり、不安が常に頭から離れないので、

日常生活に支障が出ているんですよね?
光一

そう。その根幹は『無力な自分』というわけだ。

『不安に対して、抗する事の出来ない自分』

そうすると、その症状の二次的な部分として、

『コントロール欲求』が現れるんだ
清香

なんでですか?
光一

つまり、『無力な自分』がいる。

『自分では不安を取り除けない』

よって、

『周囲の環境・人を、自分にとって

安心できるものにしたい!!』

この欲求が強まってしまうわけだ
鳴島

それが『コントロール欲求』というわけですねぇ
光一

そう。これが…………

1.『コントロール欲求』について。

の、まあ、回答というわけだ
鳴島

でも、それだとずっと…………

『ああ、今日もずっと不安だ』

って気持ちは晴れませんよね?
清香

周囲の理解・支えも必要なのに、

それすら失ってしまいますよね?

どうしたらいいんですか?
光一

それこそ、前回の話の通りだよ。

『自分の不安は自分で克服するしかない』

不安を克服できれば、

当然『コントロール欲求』も収まる
鳴島

あ、そっか……これって

『不安障害』の二次的障害ですもんね
清香

『不安障害』の治療・克服過程が、

そのまま『コントロール欲求』の克服過程ですね
光一

そういう事だね。そういうわけで、

克服するには『認知行動療法』が大事。

『投薬治療』もあるにはあるんだが……
鳴島

ん? 何か問題が?
光一

前回も言ったように、

『投薬治療』だけでは『不安障害』は完治しない。

服用を止めたら、また再発してしまうから
清香

そう言ってましたね
光一

結局のところ、

『コントロール欲求とは』何か?

『他人や薬への他力本願』なんだよ。

『〜によって、〜のおかげで不安じゃない』

という心理状態なわけだ
鳴島

あ、そっか…………

周囲の環境・人に自分の思うように

動いてもらいたい欲求ですもんね。

その意味では他力本願ですね
光一

そう。だから重ねて言うけど、

『不安障害』の完治、『コントロール欲求』の収束

これは『認知行動療法』による、

成功体験の積み重ねによって、

『多少の不安も怖くない』

と、認知していくようにするしかない
鳴島

なるほど。

でも、薬も必要ですよね?

前回の話では、『薬は補助輪だ』と
光一

その通り。薬はやっぱり必要なんだ。

例えば『パニック障害』は以前話した通り、

『不安障害』の一類型なんだけど、

『パニック障害』が起きている最中に、

患者の努力のみで不安を克服できるか?
清香

無理に決まってますよね。

無理を重ねて、失敗体験をさらに積んだら、

症状はもっと悪化しますよね?

ますます不安が増大しますよね?
光一

そういう不安が強まる時こそ、かえって、

患者の『コントロール欲求』は強まってしまう。

その事も理解できるよね?
鳴島

そうですね。例えばこういう事ですよね?

電車に乗ると『パニック発作』が起きてしまう人は、

『電車に乗れない! 誰かなんとかしてくれ!

会社に行く時、私を車で迎えにきて!』

とか、そういう思いは強くなりますよね
光一

うん。でも、それで周囲を振り回すと、

本来助けてくれるはずの人が、

『自分も疲れるからイヤだ』

と、だんだん遠ざかってしまう
清香

推測できる事ですけど、そういう場合、

周囲の人にこう思われるんじゃないですか?

『コイツ、ただのワガママなんじゃ?』

『ただ、甘えたいだけなんじゃない?』

とか、誤解を受けかねませんよね
光一

そう。そういう誤解も受けてしまう。

結果として、サポートが得られなくなり、

症状は悪化し、病気が長期化するわけだ
清香

ですよねえ
光一

だから、当然こうした状況回避……

あるいは緩和のためには、

『投薬治療』は絶対に不可欠な要素になる。

自転車の補助輪としてね
鳴島

薬があることでの、安心感を得るわけですね
光一

そう。そして同時に大事な事は、

さっきまで指摘した

『周囲を振り回す欲求』……つまりは、

『コントロール欲求』を患者自身が自覚する事ね
清香

自覚すると、何が違うんですか?
光一

何かに不安を感じた際に、

『周囲を何が何でも自分に合わせさせる』

という感情が芽生えている…………と、

その事実に気が付けば、別の事にも気が付く。

『あ、これでは周囲の人は疲れてしまう』とね
鳴島

気付いたところで、不安は消えませんよ?
光一

不安は消えないけど、違う点があるだろ?

『実は、こういう不安が今あるんだ。

だから、ここまでしか出来ないんだ。

だから、手を貸してもらってもいい?』

と、周囲とのコミュニケーションを考えられるようになる
清香

つまり、感情的に周囲を振り回すのではなく、

理性的に『何が不安で、どうしてもらいたい』か、

これを相手と話し合う事になると
光一

これなら、相手と健全な関係を維持できるだろ?

『自分の欲求だけを感情的に出す』

そうじゃなくなるんだよね?

『自分の不安を言語化し、対話する』

こうなるわけだから
鳴島

あ、そっか…………
光一

と、ここで重要なキーワードが出たんだ。

『不安障害』の人は、

『何に対して不安なのか不鮮明』

という事が往々にしてあるんだ
清香

はい
鳴島

そのせいで、周囲の人からすれば、

『この人、何に不安がってるんだろ?』

『何を考えてるのか、分からない』

と、そうなってしまうわけですね
光一

だから『言語化』が大事なんだ。

『自分は何が不安なのか?』

『何が出来て、何が出来ないのか?』

これを自覚して、言葉にする練習をする
鳴島

そうすれば、感情的にならずに、

周りの人に理解してもらえるように、

動く事が出来るわけですね
光一

そうすれば『コントロール欲求』を抑制出来る。

周囲との関係が良好なまま保てれば、

サポートも受けやすくなるため、

『不安障害』の治療もスムーズになりやすい
清香

じゃあ、次の観点に行きましょう。

2.『何故コントロール欲求の強い人間になったか』

という事ですね。

何で、そういう人になってしまうんですかね?
光一

『不安障害』などの精神疾患は、

生育環境も大きく関係しているんだ
鳴島

育ってきた過程で、

そういう風になりやすい気質になってしまった、

そういう事ですかぁ?
光一

そう。前々から述べてきたよね?

『うつ病』などになりやすい人の価値観。

『〜だ、でも〜』という『Yes,But思考』

こういう思考様式は、

最初から持って生まれてはいないよね?

赤ん坊の時は誰でも同じでしょ?
清香

そうですよね。

その人の性格・価値観って、

生まれた時にはまだ白紙ですよね
光一

『〜したい』という欲求で行動できる、

健全な性格の人がいる一方で、

『〜しなければいけない』という義務感のみの、

不健全な性格の人もいるわけだね。

これは先天性ではなく、後天性だ
鳴島

つまりマスターはぁ、

『不安障害』の二次的障害である、

『コントロール欲求』が強くなりやすい人は、

育ってきた過程に問題があると言うんですねぇ?
光一

そうだよ。精神疾患の人は、

自分の子供時代からの事を、

よーっく思い出してみて、

自分の思考様式がどうしてそうなっているのか、

振り返って、気付く作業も大事なんだ
清香

その事で、『自覚』をして、『認知』して、

思考・行動様式を転換するんですね
光一

そう。『性格』は作られたものである以上、

変える事が可能なものだからだね
清香

それで、『コントロール欲求』が強くなりやすい人は、

どういう生育環境に起因すると考えられるんですか?
光一

まあ、これは同時に…………

『不安障害』になった人の生育環境、

どうしてそうなったか、という事でもあるがね
鳴島

『コントロール欲求』が

『不安障害』の二次的障害ですからね。

根っことしての生育環境は重なりますよねぇ
光一

まず、『コントロール欲求』は、

『愛情欲求』そのものなんだ
清香

『愛情欲求』ですか?
光一

つまりね、先ほども言ったように

『コントロール欲求』は、

『無力な自分』に対して

『周囲の力がある人に守ってもらって

自分の中に安心感を得たい』

…………という構図があるんだ
鳴島

それは先ほどまでの観点の話であって、今の観点は、

それがどうして生育過程で生まれたのかですよねぇ?
光一

まず、重要な観点は

『子供時代に、周囲の力ある人(大人)が、

しっかり支えてくれていたか否か』
清香

それが重要な観点なんですか?
光一

そう。子供時代というのは、

何に対しても経験不足だ。

その時に、何をするにしても、

周囲の大人たちが適切に接していたか?
鳴島

それによって将来、

『不安障害』になる可能性が異なると?
光一

子供時代に周囲の大人がしっかり支えてくれた人は、

『怖いものは無い! みんな助けてくれる!』

と、どんどん自分への自信が高まっていくんだ。

結果、大人になった時にどうなるか?

『無力な自分ではない自分』になるんだよ
清香

子供時代に大人がしっかり支えてくれる……

周囲の大人がしっかりしていれば、

不安を抱かないで済む大人になれると?
光一

生育過程としては、そういう事
鳴島

じゃあ、『不安障害』になりやすい。

『コントロール欲求』が強い人って、

どういう生育環境が考えられるんですかぁ?
光一

先ほどと逆の事だよね
鳴島

逆?
光一

子供時代に周囲の大人がしっかり支えてくれなかった。

例えば、周囲の大人自体に力が無かった……

子供の目から見ても危なっかしい親だったり、

親が忙しすぎて、子供をしっかり見てなかったり、

こういう場合、子供が放置されがちになる
清香

そういう意味では、今の子供達に多そうですね
鳴島

今だけじゃなくて、バブル期前後に生まれた人は、

親が共働きになって忙しかった世代ですから、

子供を支えてくれる人がいなかったかもですねぇ
光一

そうすると、子供は『経験不足で無力な自分』を

ずーっと抱え込んだままで、自信を持てないよね?
鳴島

確かに…………
光一

そうすると、どうすると思う?
清香

不安で仕方が無いので、

……うーん、子供ですからね。

周囲からの評価を得たがるんじゃないですか?
光一

何で?
清香

子供にとって、学校のテストや成績表って、

一種の自己実現みたいじゃないですか。

点数が高ければ、みんな誉めてくれますよね?

それで、『無力な自分』に対する不安を

なんとか払拭しようとするというか
鳴島

以前にも、うつ病などになりやすい人は、

周囲からの評価が第一だと言ってましたねぇ
光一

うん、見事な明察だと思う。その通りだね。

子供は敏感に感じ取るんだ。

『周囲の大人は自分を支えてくれない』

だから、

『どんどん勉強しよう、いい点数を取ろう!』

『少しでも周囲の評価を良くしよう』

と、こうなって、周囲の目には

『あの子、よく勉強も出来て、真面目な子ね』

と、映るような子供になるんだ
鳴島

つまり、勤勉で真面目な子供になると?

大人になれば、そのまま…………

繊細で勤勉・真面目な人になると
清香

そういえば、マスター。以前言ってましたね。

『うつ病』は真面目な人ほどかかると
光一

うん、そういう風に人格形成されたのだね。

でも、勉強して知れば知るほど、

言い方が悪いけど、頭でっかちになってしまう
鳴島

勉強を続けてばかりで、成績とかの、

周囲の評価ばっかり気にしてますよねぇ?
光一

そう。前も言ったね?

『うつ病』などになりやすい人は、

『周囲の評価が第一』で、

『自分の事(自我)は横に置く』と
鳴島

言ってましたねぇ
光一

しかし、世の中の事を知れば知るほど、

不合理で先の見えない社会だと知るんだよね。

そうすると、不安感はますます増大する
清香

勤勉さと真面目さが強調される性格になったので、

かえって世の中への不安が増すんですね
光一

同時に、それに対して『無力な自分』がいる。

これにも根源的に気が付いてしまうんだね
鳴島

なるほど…………

子供時代に、大人からの適切な支えを受けてないと、

結果として『無力な自分』『不安な自分』

そういう根幹部分を持った大人になってしまうと
光一

まだ、子供の頃は社会的ストレスも少ないし、

それが仮に弱かったとしても、

一応親の保護下にあるよね
清香

そうですね
光一

ところが成人すると、

常に潜在的に抱えていた不安……これを、

支えてくれた保護者は側にはいなくなるよね
鳴島

そうですね。

社会的に自立しなくてはですし、

一人暮らしになったり、会社勤めになったり、

場合によっては家族を持ったり…………
光一

綾香君は、一人暮らしどうだい?
鳴島

私は不安も何もないですよぉ♪
清香

むしろ、お姉ちゃんは、

毎日好き勝手に生きてるもんね
鳴島

好き勝手!?
光一

まあ、自分の『〜したい』で生きている綾香君は、

むしろ健全な人間なわけだよ。

きっと小さい頃に、しっかり支えてもらってたので、

不安に対する耐性が出来ているのだね
清香

せいぜいお姉ちゃんの不安と言えば、

29歳なのに、未だ独身…………

どころか、彼氏いない歴29年な事ですかね?
鳴島

不安じゃないもん!!

私に似合う男が寄ってこないだけだもん!
光一

三十路手前の焦燥感は見て取れるね
鳴島

ぐ……が……が……
光一

と、成人すると、

それまで一応支えになっていた周囲の大人は、

全員身を引いてしまうわけだね。

『大人なんだから、自分でやりなさい』と
清香

まあ、そうですよね
光一

先ほどまで述べた生育過程で、

健全に育てた人……つまり、

『無力な自分ではない自分』

になれた人は大きな問題はない
鳴島

そうですね♪
光一

ところが、先ほどまで述べた生育過程で

『無力な自分』として育ってしまうと、

潜在的な不安が強いので、

自分を支えてくれる人を、強く欲するんだ。

『安心感』を求める欲求が

人一倍強い人間になる
鳴島

常に不安で頭が一杯なので、

『誰か、私を安心させて!』って事ですかぁ
光一

うん。でもさ…………

本来『安心感』というものは、

子供時代に、親・周囲の大人から

与えられているべきものだよね?
清香

そうですね…………

そうすれば『無力な自分ではない自分』になれると。

周囲の大人たちの支えが子供時代に弱すぎると、

『無力な自分』として育ってしまい、

『安心感』が無いわけですね
鳴島

子供時代に『安心感』が与えられていれば、

多少の失敗にもめげないですよね。だって、

大人たちが支えてくれる『安心感』がありますから。

かえってそれで強くなって育ってくるわけですね。

なので、大人になった時には、

不安を自分で払いのけられる人になっていると
光一

つまりね、みんな、自分の生育過程を振り返った時、

『無条件の愛』が十分だったかを検証して欲しい
鳴島

『無条件の愛』?
光一

例えば親はさ、自分の子供を愛するにあたり、

何か見返りを要求するかい?

大人達は子供に接するにあたって、

報酬を求めてしまうのかい?
清香

普通は求めないですよね
光一

後は、社会システムの問題が根底にある。

『うつ病』などの精神疾患を持ちやすい人間、

そういう人格を育ててしまう生育環境。

これは社会システムの問題にも起因しているから
鳴島

というと、どういう事ですかぁ?
光一

さっき言ったよね?

子供時代に周囲の大人たちが、

その子供に『安心感』を与えられるように、

十分に支えて、接してこれたのかが大事だと
清香

言ってきましたね。重要な観点として
光一

つまり、重要な問題は、

大人が子供をしっかり支えられる社会なのか?
清香

今はとても、そうは思えませんね
光一

なんでだい?
清香

不況下で親自身、いつ失職するか分からないし、

将来の先行きも見えないですし…………

何より、仕事も忙しくて、

なかなか子供と接する事が出来ないですよね?
鳴島

それに昔ほど、人同士の絆もないですよね?

隣近所の人同士で助け合って、

子供を見守るとか……あまり無いですよね、今
光一

しかも今は、ギスギスした競争社会になってる。

互いに蹴落とす事は考えても、

助け合う精神は希薄になってきているね。

さらに、企業は人を育てる事よりも、

即戦力を求めて、人を大事にしない
清香

確かに…………
光一

今の時代は、

子供の事よりも、仕事に偏重する

不安定な親子関係になってきている。

子供達にとっても、大人たちにとっても、

『不安の時代』になっているわけだよ
鳴島

『不安の時代』?
光一

人間にとって、根底での『安心感』の無い社会
清香

それは確かにそうですね…………

学校でいい成績だった。いい大学へ行った。

だからって将来が保障されるわけでもない。

誰もが、いつ社会から振り落とされるか分からない
光一

例えば『パニック障害』の根底には、

『不安がこみあげてきた(パニック発作)際に、

支えが無いので不安で仕方ない』

という部分があるわけだ
清香

なるほど……だから、生育過程は大事だと。

振り返ってみて、自分が『安心感』を持って、

『無力な自分ではない自分』になれたか、

あるいは『無力な自分』として育ってしまったか、

それを気付いて『認知』する事が大事だと
光一

そういう事だね。

まあ、そうして不安が強まってしまうと、

『安心感』を求めて、

『コントロール欲求』が強まるんだ
鳴島

あ、だから生育環境で、子供時代に

『大人たちのしっかりした支え』が無かった場合、

『コントロール欲求』の強い人間になってしまうと
清香

『無力な自分』は常に不安を抱えているので、

『安心感』を求めて、

周囲の人を自分の思い通りに動かしたい、

そういう欲求が強まってしまうんですね
光一

そうだね。今日の第二の観点、

2.『何故コントロール欲求の強い人間になったか』

という事については、ここまで述べたように、

その人の生育過程が大きく影響している事がある
清香

なるほど…………
光一

また、こうした『コントロール欲求』は相手に対して、

『安心感』を求める『愛情欲求』なのだけど、

当然いつも『安心感』を周囲の人が与えてくれるとは、

まあ、限らないよね?
鳴島

そうですね。前の話に戻りますが、

『自分に合わせてくれ!』って言う欲求に、

周囲の人間が疲れ果ててしまったり、

『君の欲求ばかり聞いてられないよ』

って、突っぱねられる事も考えられますねぇ
光一

そうすると、『コントロール欲求』は、

自分の期待に周囲が応えてくれないと、

『怒り』の感情に転換してしまうんだ
清香

『何で、私の不安を分かってくれないの!』

『どうして、要求を認めてくれないの!』

『何で私を支えて、安心させてくれないの!』

と、こういう風に『怒り』に変わると
光一

そうそう。

何で『怒り』になるか、分かる?
鳴島

清香が言った通りじゃないですかぁ?
光一

もう少し突き詰めてみて
鳴島

えっとぉ…………

『安心感』を得る事で、

『不安』とのバランスをとりたいんですよねぇ?

でないと、不安に押しつぶされそうだから
光一

いい回答だね。

つまり、『自分の不安・満たされない安心感』

こればかりでは、人間の感情は

バランス崩壊してしまうよね?
清香

そうですね。

なんせ、負の感情ですから
光一

そうすると、人間は…………

『怒り』という発露によって、

『何も考えないようにする』んだよ
鳴島

『怒り』は何も考えない?
光一

少なくとも…………

『怒っている最中』は何も考えないで済む。

こうして、不安に潰されそうな自分との間で、

感情のバランスを取ろうとするんだよ
清香

でもそれって…………

人間関係を根底的に悪くしませんか?
光一

そうだよ。だから『コントロール欲求』は

人間関係を損ねてしまい、

結果としてさらに『安心感』を得る事が出来ず、

ますます不安感を増大させてしまう結果になる
鳴島

その内に、誰からのサポートも

得られなくなりますもんねぇ
光一

なので、最初の話に戻すけれども、

『不安障害』の克服と同様で、

不安を『言語化』する練習をして、

周囲と建設的な話し合いをする事。

そうして、成功の経験を重ねる事で、

不安の対象を克服するんだ
鳴島

そうすれば『不安障害』も完治していき、

『コントロール欲求』も収束していく

そういうわけですねぇ
光一

うん、そういうわけだ。

今日は、

1.『コントロール欲求』について。

2.『何故コントロール欲求の強い人間になったか』

の観点から話を進めたけど、

そういう風に克服すると良いのだね
清香

そのためにも、自身の生育環境についても、

振り返って考えてみると良いわけですね
光一

そう。そして自分の思考様式を変えていく、

その練習をしていくのだね
鳴島

というわけでぇ、

今日の『不安障害その3』の話は、

まあ、ここまでという事ですね
光一

うん、そうしよう♪

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