10/10(水)
依存症その2……ディスカウント(値引き)

鳴島

まず、マスターの思考がおかしいと思いますぅ
光一

会話開始早々に、

いきなりなんだね!?
鳴島

街中で会った女子高生を

『襲っても良いよね♪』って考えるなんて、

まず、思考回路がおかしいですよねぇ
光一

そこだけ話題を抽出するなよ!

私、完全に変質者じゃないかね!?
清香

いや……コンテンツ全体を見ても、

そうとしか思えないですけど
光一

清香君までも!?
鳴島

さて、マスターの日記から、

マスター自身が変態である事は

しっかりと立証出来たのでぇ
清香

今日は何の話をしましょうか?
光一

ホントに君たちは私の話を無視するよね?
鳴島

で、何の話をするんですか?
光一

……………………

今日は『依存症』の話に触れる事にしよう
清香

『依存症』は2回目ですね。

1回目は依存症について、

分類・原因・克服過程

そんな話をしていましたね
光一

まあ、『依存症』と銘打ったけど、

精神疾患全体について

それなりに当てはめられる話をしようかと。

また、会社でも家庭でも良いのだけど、

人に接する時に参考にして欲しい……

そんな話題をしようと思う
鳴島

で、何を観点にするんですかぁ?
光一

『ディスカウント』が今回の観点
清香

『ディスカウント』?
鳴島

あの……『ドン・キホーテ』とかの、

安売り店の事ですかぁ?
光一

経済的観点で言うと、それだよね。

簡単に言えば、品物を標準的な値段ではなく、

値引きして販売するお店だね
清香

でも、話は経済じゃなくて、

精神疾患での話ですよね?
光一

『ディスカウント』=『値引き』という点で同じ
鳴島

というとぉ?
光一

心理学的な用語で『ディスカウント』とは、

【1】自分の価値を値引きする事

という意味なんだが、精神疾患的には、

【2】相手の価値を値引きする事

という意味合いも含まれてくる
鳴島

うーんと……どういう事でしょうかぁ?
光一

例えば…………

綾香君はいつも仕事中にお皿を割るよね?
鳴島

うぐっ…………そ、それはぁ……
光一

ウチで働き出して10年目なのに、

ウェイトレスとしてどうしようもないなあ
鳴島

ぐっ…………
清香

隠れて店の品物を盗み食いするし、

これも注意しても止めないもんね、お姉ちゃん
鳴島

あぅ〜…………
光一

ホント、

綾香君には注意してもどうしようもないし、

注意なんてする意味なんてないねえ
鳴島

あがぁ〜…………
光一

と、これが一種の『ディスカウント』なんだ。

最後に私が言ったセリフが該当するんだ
清香

というと?
光一

つまりは、

『相手の価値を値引く事』を言うんだよ。

『相手はこんなモンだ』と決めつける事。

今の例で言うとどうだろうね?
清香

お姉ちゃんがウェイトレスとして失敗ばかり。

でも、注意しても直らないし、

もう、どうでもいいや…………

って、放置しちゃった事ですかね?
光一

そういう事だね
鳴島

ちょっとぉ!!

なんで私をそんな例に使ってるんですかぁ!
清香

まあまあ、仕方ないじゃない
鳴島

なあっ!?
光一

簡単に言ってしまうと『ディスカウント』とは、

『人格否定』でもある。

『相手の価値を値引く』のだからね。

『相手はこの程度しか出来ない』

『この人には話しても分かってもらえない』

と、相手を勝手に決め付けてしまうんだね
清香

なるほど
鳴島

そんな事説明するのに、

私を使ったんですかぁ!?
光一

今回の話である『依存症』について言えば、

『依存症』の中には『ディスカウント』をする

そういう構造があるんだ
鳴島

どういう事ですかぁ?
清香

あ、ちなみに今までの精神疾患シリーズは、

うつ病:『(その1その2その3)』

依存症:『(その1)』、

強迫性障害:『(その1)』、

不安障害:『(その1)(その2)(その3)』、

栄養療法:『(その1)(その2)』

以上10回で、今日が11回目です
光一

例えば一番分かりやすい、

『アルコール依存症』で考えよう
鳴島

はい
光一

ただし、『依存症』で扱っているけど、

他の精神疾患の人や、

そういう患者を抱える家族・友人・会社の方も、

ぜひ参考までに聞いてもらいたいんだ
鳴島

で、『アルコール依存症』を引き合いに出すと、

『ディスカウント』はどう説明できるんですかぁ?
光一

まず、2人の立場に分けて考えよう。

【A】『アルコール依存症』の本人。

【B】その家族だ。

今回は、依存症患者を夫。家族を妻としよう
清香

はい、で、どういう話ですか?
光一

まず、前置きとして言っておくけど、

人間は社会で生きていると、

どうしても色々な事に思い悩むよね?
鳴島

そうですねぇ
清香

お姉ちゃんは、

何も悩んでなさそうだけど?
鳴島

なんでよぉ!?
光一

色々葛藤する事があるわけだが、

葛藤自体は悪い事じゃない。

むしろ、誠実さの証なんだ
鳴島

何でですかぁ?
光一

葛藤は答えを見つけ出そうとする、

その作業そのものだから
清香

言われてみればそうですね
光一

で、『アルコール依存症』の話に戻そう。

社会で色々なストレスが重なっていくと、

最初は解決策を見つけ出そうと、

頑張って葛藤するものだし、

人と話し合おうとするものなんだ
鳴島

そうですよねぇ
光一

ところが、ストレスが過重になったり、

なかなか解決しない事が重なっていくと、

葛藤する事、話し合う事が出来なくなってくる
清香

そのためのエネルギーが切れてきた、

そういう事ですよね?
光一

そう。こういう時に適度な休息や、

周囲のサポートがあれば良かったのだけど、

そうでないと、本人はどんどん追い込まれる。

結果として、葛藤出来ない人になり、

周囲の人と話し合う事も出来なくなる
鳴島

うーん、なるほど
光一

こういう時にお酒に出会ってしまう。

酒が入って気分が楽になると……

どうなると思う?
清香

苦しい気持ちになるたびに、

お酒を飲むようになるのでは?
光一

そう。お酒で気分を楽にして、

問題解決を先送りしてしまうんだ
鳴島

それ、積み重なると…………

『アルコール依存症』になりませんかぁ?
光一

そうだよ。

これが『アルコール依存症』になる過程だ。

元々、生真面目な人ほど、

問題に誠実に向き合い続けて疲れた結果、

『アルコール依存症』に陥りやすい。

真面目だった人が、いい加減な人になってしまう
清香

なるほど…………

で、今日の観点の『ディスカウント』は、

どういうところに入るんですか?
光一

まず、周囲と話し合いをしないんだね。

家族関係で言うとこうなる。

『どうせ妻に言っても、

俺の苦しさは分かってくれない』

これは『ディスカウント』に当たらないかい?
清香

【2】相手の価値を値引きする事

って部分に当たりますよね?
光一

そう。何故かと言えば…………
鳴島

奥さんの価値を低く見ているんですよね?

どうせ話し合っても分かってくれない、

解決なんて出来ないんだと…………
光一

そうだね。つまり『ディスカウント』は、

依存症などの精神疾患に罹った際に、

周囲の人の価値を低くみてしまって、

サポートを受けられなくなる事をも、

意味しているんだね
鳴島

なるほど…………
光一

『ディスカウント』を一言で言い表すと

『まあ、いいか…………』って言う心理
清香

『まあ、いいか…………』?
光一

『まあ、いいか……話してもしょうがない』

など、具体的な言葉を入れてみると分かる。

『まあ、いいか……』という言葉は、

相手の価値を低く見ている事だ
鳴島

なるほど
光一

『アルコール依存症』の人は、苦しいんだよ?

周囲の人は「酒好き」とかそんな風に思うかもだが、

心の問題を解決出来ないからこそ、

お酒にしか生きる方法を見つけられないんだ。

『お酒なんて飲みたくない、

飲んでも問題の解決にならない!』

って分かっているのに、飲んでいる事が多い
清香

それだと、苦しさだけが増していって、

ますますお酒の量が増えますよね
光一

うん。まあ、こうして

自分の前の問題が見えなくなる……

これを『ディスカウント』と言うんだね。

自分の価値さえ、低く見てしまうんだ
鳴島

で、それが『依存症』患者…………

精神疾患になっている人の方から見た

『ディスカウント』ですよねぇ?
清香

家族・友人の側…………

この場合、『アルコール依存症』の夫の妻、

こちらから見た『ディスカウント』とはなんですか?
光一

『アルコール依存症』の夫がいて、

その妻の立場、じゃあ考えていこう
鳴島

はい
光一

例えばこの場合、妻が

『お酒なんて止めて!』って言ったとして、

しかし依存症の夫が止めないとしよう
鳴島

はい
光一

そうした時に妻の対応は以下の2点に分かれる。

【1】健全・誠実な対応心理

【2】不健全・不誠実な対応心理
清香

というと、どういう事でしょうか?
光一

【1】の場合は簡単に言えるね。

夫がお酒を手放すまで、何度でも

あきらめないで説得を続ける。

一緒に医療機関を探して、

治療のために関わり続けてくれるケースだ
清香

なるほど
光一

つまり、【1】の場合の

対応心理の根底はこうなんだ。

『話せば、いつか必ず分かってくれる』

『話し合いで分かりあえない人なんて、いない』
鳴島

相手に対する信頼感が、

揺るがないって事ですかねぇ。

前向きな心理構造ですねぇ
光一

【2】の場合の妻の対応は、

これは夫に対する『ディスカウント』になる
鳴島

つまりアレですかぁ?

『どうせ、お酒止めてって言ってもムダ。

自分が言っても聞いてくれない』

って、奥さんが思っていると
光一

そう言う事だね
清香

夫の価値を低く見積もっている……

そういう意味では『ディスカウント』ですね
光一

『依存症』になった人間に1度や2度、

言った程度で治るわけはないのだけどね。

対話の回数はそれこそ相当数必要だし、

医療機関に一緒に行く事も大事だ。

精神疾患の人は、自分の状況について、

冷静に医者に話す事も、最初は困難だから
鳴島

あ、言われればそうですよねぇ…………
光一

そう。この場合、妻側の方も、

そういう心理に育ってしまった

生育環境に問題があるだろうね
鳴島

というと?
光一

普通はだよ、健全な家族なら、

一度言った事を否定されたからって、

大事な家族だろ?

何度だって説得を続けるものじゃないか?

問題解決の糸口を探すものじゃないか?
清香

それを、『お酒は止められない』って

一度相手から否定されたからって、

それ以降ずっと

『話しても仕方がない』ってあきらめたら、

確かに……おかしいですよね
光一

大事な事は、大人……家族に余裕がある事。

きっと、【1】の対応をした妻というのは、

育ってきた家庭に余裕があって、

親同士が誠実に対応していた家庭なんだね
鳴島

【2】の対応をしてしまった奥さんは、

どうなんですかねぇ?
光一

考えられるのは、【2】の対応をした妻。

彼女が育ったかつての家族は、

親同士が感情的にぶつかりあっている、

そのせいで子供時代に、

自分の心配事……学校でいじめられたとか、

そういう事を話せなかった環境だったのかもね
清香

どういう事ですか?
光一

前回、生育過程の重要性、話したよね?

親に余裕が無い、ケンカばかりしている、

母親が父親の愚痴ばかり言っている、

父親は仕事ばかりで家庭を顧みない、

こうした場合、子供はどうだろうね?
鳴島

うーん…………

あんまり健全には育たないかと
光一

そうだね。こういう場合、

子供は自分が心配事を抱えていても、

親に相談できないんだ…………

というよりも、しないんだよ
清香

親に心配事を相談しない?
光一

『親に心配をかけないようにしよう!』

と、心理的に強化されているからだよ
鳴島

それは、親が感情的にぶつかってばかり、

互いの愚痴ばかりを言っている…………

そこに自分の心配なんて入り込ませたら……
清香

子供がこんな心配事抱えているのは、

『お前のせいだ!』『いいや、アナタのせい!』

と、親が互いを互いにまた、

感情的に責任論をぶつけあったり、

余計に心配や愚痴を言いかねないから……

と、そういう事ですか?
光一

もっと酷い例だと、

親に相談をした時に、親が

『お前が悪い!』『そんな余裕はないんだ!』

と、子供に感情的にあたってくる、

子供の不安を拒絶する…………
鳴島

そういう生育過程を持っていると、

子供はどうなりますかねぇ?
光一

先ほどの【2】の対応をする妻、このタイプに育つ。

つまり、親に対してもそうだったのだから、

『自分が何か言っても意味が無い。

相手は何も分かってくれない』

こういう心理強化をされて育ってくるね
清香

まさに相手を『ディスカウント』する人になると
鳴島

逆に【1】の対応をする奥さん……

『相手が分かってくれるまで話す』

って人は、そういう育ち方をしなかった。

そういう事ですかねぇ?
光一

そう。子供時代に、

『人が話せば聞いてくれる、分かってくれる』

こういう生育環境が重要なんだね。

『ディスカウント』しない人間になるためには
清香

なるほど
光一

『相手が自分の話を聞いてくれない』

って公式を持っている場合、

相手が自分の話を聞いてくれないと、

相手を『ディスカウント』してしまうんだ
鳴島

つまり…………

『相手の価値はこの程度、低いんだ』

と、勝手に決め付けて、

それ以降の話し合いをしないわけですね
光一

そういう事。

しかも、生育過程の話をしたよね?

もし、こういう家庭に子供がいたらどうなる?
鳴島

あっ!!
清香

先ほどの『ディスカウント』するようになった人、

その人の生育環境そのものな気がします
光一

しかも【2】の妻のように、

『自分が言っても分かってくれない』

って考えている人は、不満を常に抱えている。

不満はいつか、『怒り』として爆発するんだ。

こうして『アルコール依存症』の夫と、その妻が、

時折感情的にぶつかりあうようになる。

その光景が日常化するわけだね
鳴島

そうすると、それを見ている子供は、

『親に余計な心配をさせてはいけない』

『何も親に悩みを話してはいけない』

って、こういう心理強化を受けますよね?
光一

しかも、ますますマズイ事に、

『依存症』が長期化すると、

『相手がいけないんだ!』

だから、

『どうにもならないんだ!』

って思うようになっていくんだ
清香

つまり、今回例にしている『アルコール依存症』では、

夫は『妻に話してもこの苦しさは分からない』

『だから、この状況は妻もいけないんだ!』

ってなるし…………
鳴島

妻からすれば、

『夫は私の言う事なんて聞いてくれない』

『だから、今の状況は夫のせいだ!』

ってなってしまうんですねぇ
光一

そう。つまり、

互いに互いを『ディスカウント』している。

ここに、夫・妻以外に子供がいるとどうなるか……
鳴島

先ほどまで述べたように、

子供は家庭で何も話さなくなる……

いわば、生真面目で優等生みたいになる、

というか、ならされてしまう?
光一

もちろん、それもあるんだが…………
清香

他に何か?
光一

この場合、『アルコール依存症』の夫を

ディスカウントしている妻は、

子供にどう接するだろうね?
鳴島

うーん…………例えば愚痴じゃないですかぁ?
光一

具体的には?
鳴島

『お父さんはダメな人間だから、

アナタが良い人間になる事を、

お母さんは強く期待しているからね!』

って、こんな感じになりませんか?
清香

夫への不満と『ディスカウント』が転化して、

子供への過剰な期待になるんですね
光一

そう、良い推理だね。そうなりがちなんだ。

そうすると、子供は当然ながら、

『互いにディスカウント』している両親には、

何も悩みを打ち明けられない。

出来るだけ良い子でいようとするわけだ
鳴島

なんか、変な家族関係ですよね?
清香

本当なら親が子供を支えるのに、

子供が親を支えているみたい
光一

そう、この場合子供の心理としては、

『ボク(ワタシ)がしっかりして、

家族崩壊を止めなくちゃ!』

って、こうなってしまう。

そうして育った子供は…………
清香

『相手に自分の事を言っても、無駄、

相手は自分の事を分かってくれない』

という、『ディスカウント』を持った、

そういう大人に成長しますよね?
鳴島

今までの話だと、

完全にそうなりますね…………

あれ!? そうしたら、

場合によっては精神疾患が、

次の世代に引き継がれませんか!?
光一

その通り。だから、生育環境は重要なんだ。

この場合……典型的で分かりやすいから、

取り上げたんだけれどもね…………

『アルコール依存症の家族は循環する』

そういう事が往々にしてあるんだ。

『ディスカウント』の心理構造が、

強く引き継がれてしまうからだね。

こういう状態なのを『機能不全家族』と言うんだ
清香

『依存症』に限りませんけど、

互いの価値を低く見る『ディスカウント』、

これ、気を付けないといけないですよね
鳴島

家族間でもそうですけど、

仕事なんかでも…………

部下の立場なら、

『上司は何を言っても分かってくれない』

上司の立場なら、

『部下は何を言っても分かってくれない』

ってこうなってしまうと…………
光一

どこかで破たんするわけだ。

そうすると、精神疾患になる場合もあるし、

人間関係が壊れたり、

社会的にも家庭的にも問題が起きる
清香

『ディスカウント』……厄介ですね
光一

だからこそ、

相手や自分を『ディスカウント』する人は、

自分がそうしていないか、

立ち止まって考えて欲しい。

『相手の価値を低く見ていないか?』

『自分の価値を低く見ていないか?』

そうした気付きを起こせると、

『自覚』から『認知』『行動』へと、

転換してくことが出来る
鳴島

『依存症』もそうですが、

その他の精神疾患についても、

治療の有効な観点に、

『ディスカウント』の気づき、克服、

これが出てくるわけですねぇ
清香

それと、家庭経営や、会社での人間関係でも、

相手を『ディスカウント』しない事…………

『対話を続ける努力を惜しまない事』

これが重要な事ですね
光一

前回話した、『言語化』も絡むけど、

そういう事だね。

『まあ、いいか……相手はどうせ』

なんて考えない、思わない。

相手の評価を低くして、

相手の人格を責める事は止めよう
鳴島

それでは、今回の『依存症』の話については、

『ディスカウント』の観点から、

生育環境・過程まで含めて、

話し合いが重要である…………

と、そういう事ですねぇ
光一

うん、そういう事で、

今日のところは、話を終わりにしよう
鳴島

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