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鳴島
「ぷふーっ!!」 |
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光一
「何を急に笑い出してるの!?」 |
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清香
「………く、っくっ」 |
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光一
「えっ!? 清香君まで何をこらえ笑い!?」 |
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鳴島
「いやだってマスター…………
ぷぷっ、いや、もう耐えられない!!」 |
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清香
「コスプレして外出するにあきたらず……
人とまともに会話すら出来ないなんて!」 |
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光一
「仕方ないだろ!!
普段ほとんど、人とコミュニケーションしてないんだから」 |
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鳴島
「あれほど、『言語化』が大事だと言っている人が」 |
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清香
「そうですよ、マスター。
不安に思っている事を『言語化』する。
これが大事だと言っている人が」 |
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鳴島
「うつ病でも、不安障害でも…………
精神疾患では『言語化』が大事なんですよねぇ?」 |
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光一
「確かに……まあ、確かに言ったが……」 |
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鳴島
「挨拶するだけで声が上ずったのはともかく……」 |
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清香
「電力会社の人に対して…………
嘘をついてまでプライドを守ろうとするなんて……
ちょっと可哀相過ぎて、笑いが……」 |
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光一
「君たちねえ…………」 |
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鳴島
「というわけでぇ、
『不安障害』を持っているだろうマスターに、
今日は再度『言語化』について話してもらいますか?」 |
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清香
「賛成賛成」 |
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光一
「なんか最近、私を貶めてから、
精神疾患シリーズの話始めてるよね?
ボクをそうする必要性があるのかい?」 |
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鳴島
「気のせい気のせい!」 |
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光一
「まあ、いい…………や。
今日は『言語化』の在り方について、
もっと具体的に話をしようじゃないか」 |
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鳴島
「『言語化』について、マスターの話をおさらい。
えっと…………
『不安障害』に限らず、精神疾患・その予備軍の場合、
1.不安で仕方ない、無力な自分を感じる。
そのため…………
2.周囲を自分にとって安心な環境にしようとする」 |
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清香
「それが『コントロール欲求』ですが、これは、
1.周囲を感情的に振りまわしてしまう。
2.周囲との対人関係が悪化する。
3.よって、サポートを受けられなくなる。
4.結果、病状を悪化させてしまう」 |
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鳴島
「なので、不安・ストレスになっている事を、
建設的に周囲と話し合うために、
1.不安要素を明瞭化し『言語化』する。
2.その『言語化』の練習をする。
3.自分の出来る事、出来ない事を明確化する。
4.そうして周囲の理解を得て、サポートも得る。
これで精神疾患を治療する…………
こういう点で重要だという話でしたねぇ」 |
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光一
「そうだね。度々『言語化』については触れたが、
『不安障害』についてで特に触れたので、
『不安障害(その1)(その2)(その3)』
これを、復習してほしいね」 |
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鳴島
「なお、精神疾患シリーズの話は、
今回が12回目になりますぅ。
『不安障害』シリーズ以外は以下になります」 |
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清香
「うつ病:『(その1、その2、その3)』
依存症:『(その1)(その2)』、
強迫性障害:『(その1)』、
栄養療法:『(その1)(その2)』
と、以上ですね」 |
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光一
「『言語化』についてはそういう事だったね。
要するにこれは『ストレスコーピング』なんだ。
以前、『コーピング』についても話をしたよね?
ストレスに対する適切な対処法なんだね」 |
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鳴島
「まあ、そういう事になりますよねぇ」 |
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光一
「さて…………『言語化』について、
実は前回の話では少し不足なんだ」 |
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鳴島
「不足?」 |
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光一
「そうだよ。なんでだと思うかな?」 |
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清香
「以前の話では、先ほどの、おさらいのように、
『不安対象』を明確にして、
『不安な事』を周囲と話し合う…………」 |
|
鳴島
「それで十分じゃないんですかぁ?
それで不安を取り除く……対処していけばぁ、
ストレスが蓄積されないので、
病気にはなりにくいのでは?」 |
|
光一
「では、ここで根本的な問題を1つ。
というか、疑問を私から出してみようか?」 |
|
清香
「というと?」 |
|
光一
「例えば、『不安に思っている事』を明確化出来た。
よって、これを『言語化』したとしよう」 |
|
鳴島
「はい」 |
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光一
「家族間の問題などについては、
これで大体解決出来ると思うよね?
そもそもが家族は互いが対等な関係だから」 |
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鳴島
「まあ、そうだと思いますよねぇ?」 |
|
光一
「じゃあ、恐らく最もストレスがかかるだろう、
会社での問題はどうだろうね?」 |
|
鳴島
「というと?」 |
|
光一
「つまり……会社で過重なストレスを受けた。
『不安でたまらない』
『不安が24時間頭から消えない』」 |
|
清香
「だから、それを明確にして、
『言語化』するんですよね?」 |
|
光一
「それを会社で打ち明ける…………?
例えば上司に話して解決するの?
これが私の提示する、根本疑問」 |
|
鳴島
「あ…………」 |
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清香
「言われてみれば…………」 |
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光一
「ほら、気が付いたかい?」 |
|
鳴島
「仕事・会社で抱えてた不安って、
『言語化』して話し合っても、
解決しない可能性がありますよね?」 |
|
清香
「つまり、周囲も仕事で一杯一杯。
こういう状況で『不安』を『言語化』しても、
聞き入れてもらえないかも……」 |
|
光一
「そう……そういう不条理が社会にはある」 |
|
鳴島
「あれ?
そうしたら『言語化』しても意味が無い!
ってなりませんかぁ?」 |
|
清香
「つまり、
『言語化』でフラストレーション解消する。
そのはずが、
『伝えても問題解決しない』
って事が往々にしてありますよね」 |
|
光一
「そう……つまり、こうだ。
『言語化』しても上司は聞き入れてくれない。
『言語化』しても実際には、不安を取り除いてくれない。
だから、意味が無い…………」 |
|
鳴島
「そうすると、『言語化』なんてしても仕方ない。
ってなって、かえってストレスがたまるかも?」 |
|
清香
「そうですね…………
結局、建設的な対話が出来ないかも」 |
|
鳴島
「社会って……ホント不合理ですね」 |
|
光一
「例えば上司に、
『毎日深夜残業では健康にも不安です』
『仕事量を減らしてくれませんか?』
と訴えた時、上司がたまたま理解ある人かもしれない」 |
|
鳴島
「そうですね。ちゃんと話を聞いてくれる上司。
そういう人が上にいると良いですね♪」 |
|
光一
「でも、結果はこうかもしれない。
『取引先の人がどんどん仕事を出してくる』
『人数は少ないのに、仕事量は増え続ける』
だから上司に『言語化』して改善を訴えても、
『結果として、何も変わらない』
そのため、不安はずっと残る…………」 |
|
清香
「せっかく『言語化』しても、
会社内外の力関係で何も変わらないと……」 |
|
鳴島
「つまり、ストレスはたまり続けて、
『言語化』しても問題解決しない!
だから、かえってストレスがたまるのでは……と?」 |
|
光一
「そう。視点を変えると、
他の問題もあるかもよ?」 |
|
鳴島
「他の問題?」 |
|
光一
「上司が『パワハラ』をする人かもしれないよね?
こういう時、『言語化』で問題解決するかな?」 |
|
清香
「あ…………それは考えてませんでした」 |
|
鳴島
「その場合、訴えても聞き入れてくれませんよね?
それこそ『言語化』の意味が無いかも」 |
|
光一
「酷い会社ではね…………
上司に『不安を相談』するだけで
査定に響いたり、退職勧告される事もある」 |
|
鳴島
「ええっ!?」 |
|
光一
「だって、上司は査定という武器を持ってるでしょ?
自分の部署で不満・不安があるなんて、
自分自身の査定にも響くから、
そんな部下は欲しくないんだよ。
これ、パワハラの温床でもあるんだけどね」 |
|
清香
「ああ、そうか…………
会社で『不安』を『言語化』することで、
かえって会社に居場所が無くなる事も、
十分に考えられますよね」 |
|
光一
「と言うわけで、今日は『言語化』について、
より具体的に……
『言語化』の意味する事を伝えたいんだ。
前回の言った内容では不足過ぎるので」 |
|
鳴島
「なるほど」 |
|
清香
「では『言語化』について、具体的には、
どういう風にすればいいんですか?」 |
|
光一
「まず、前回の話のおさらい、また出すけど。
『不安を明確化・言語に置き直す』
これは絶対に必要な過程ね」 |
|
鳴島
「それがそもそも『言語化』ですもんねぇ」 |
|
光一
「問題はその先なわけだよ」 |
|
清香
「というと?」 |
|
光一
「それを……『言語化』したものを、
実際に人に話すか否か?」 |
|
鳴島
「あ…………
先ほどの会社の件などですよねぇ?」 |
|
光一
「最初に結論だけ述べよう。
『言語化』とは必ずしも、
人に『話す』事を意味してはいないんだ」 |
|
鳴島
「違うんですか?」 |
|
光一
「『言語化』イコール『話す』ではないんだ。
これが今回伝えておきたい事ね。
例えば考えたものを『言語化』するというのは、
『小説』なんてそうではないかい?
あれは『言葉に置き換えたんだよね?』」 |
|
鳴島
「あ、言われればそうですねぇ。
確かに言葉に置き換える作業は、
話す……という事を必ずしも伴わないですね」 |
|
清香
「じゃあ、結論を先に述べたところで、
具体的にはどうします?」 |
|
光一
「まあ、順を追って具体例を挙げよう。
実際に訴えてみる。つまり…………
【1.相手に伝える事で問題解決する】
これが建設的で効果的であるなら、
そうする事がもちろん良い事だ」 |
|
清香
「それで状況が変わる。改善する。
それなら、そうすれば良いですよね。
『不安対象』が無くなる可能性がありますから」 |
|
光一
「しかし、例えば上司に訴えても意味が無い。
そういうケースは往々にしてあるわけだね?
場合によっては、その事がきっかけで、
会社から追われるかもしれない」 |
|
清香
「その意味では本当に、
社会って不合理ですよね」 |
|
光一
「しかし、その不合理な社会で、
私達は生きて行かなくてはならない」 |
|
鳴島
「そうですねぇ」 |
|
光一
「そこで例えば…………
【2.同僚と愚痴を言い合ってみる】
なんてのも一つの手段かもしれないね」 |
|
鳴島
「あー、なるほど!」 |
|
光一
「力関係で同じ人と話をしてみるのだね。
例えば取引先担当者や上司に対して持っている、
彼らへの『不満・不安』を打ち明けてみたらどうか?」 |
|
清香
「意外と共感してくれるかもですね」 |
|
光一
「そこが重要なんだ。つまりね……
『あ、自分の不安って、
自分だけのものじゃないんだ!
みんなも同じ様に思ってるんだ』
って、こう思えるだけで、少しは気が楽になる」 |
|
鳴島
「それは言えますねぇ」 |
|
光一
「つまりね…………
『不安対象を一般化』するんだよ。
『全体として問題があって、
他の人もそう思っている』とする事で、
気持ちが安らぐんだ」 |
|
清香
「なるほど」 |
|
光一
「そのために、自分の中で、
『何が不安か? 明確化する』
『漠然としたものではなく、言語化する』
これが必要だよね?
それを互いに話すためにはね?
そうでないと、感情的なトークになって、
建設的ではなくなるんだ。ただの愚痴にしない事ね」 |
|
鳴島
「『自分固有の問題ではない』
『一般的な問題なんだ』
って思う事が重要なんですね」 |
|
光一
「別に同僚に話す必要も無いけどね。
友達や家族に話しても良いだろう。
力関係でこちらが損をこうむらない……
そういう状況は重要だね。
社会は力関係の不条理があるからね」 |
|
清香
「なるほど…………」 |
|
光一
「もう1つの具体的な方法は……
【3.『言語化日記』をつけることだね】
これは、かなり有効な手段だ。
これが、『話す事ばかりが言語化ではない』
の具体例になるわけだね」 |
|
鳴島
「日記……ですかぁ?」 |
|
光一
「大人で日記をつける習慣のある人、
かなり少ないのではないかね?
まあ、子供でも少ないとは思うが」 |
|
清香
「ブログなんていうのはどうです?
している人、多いですよね?」 |
|
光一
「うーん、そこにはオススメ出来ない要素がある」 |
|
鳴島
「何故ですかぁ?
自分の不安に共感してくれる人も、
そこにはいるかもですよぉ?」 |
|
光一
「まず、ブログなどは……誰が見てるか分からない。
会社の人に見つかったらどうする?
また、共感的な人が集まるとは限らない」 |
|
清香
「あっ…………」 |
|
光一
「それに所詮、匿名性の世界だ。
人は面と向かっていない場合、
相手に対して無責任で、
非常に攻撃的な言葉を叩きつける、
そういう事があり得るよね?」 |
|
鳴島
「ネット世界で傷つけられる、
そういう可能性もありますねぇ」 |
|
光一
「そう。なので、直接話す相手は、
やはり現実に向き合った人の方が良い。
それに誰が見ているか分からないネットには、
あんまり『言語化』しない方が良いと思う」 |
|
鳴島
「なるほど」 |
|
光一
「よって、ノート等を買ってきて、
それに『不安』に思った事を書いていくんだ」 |
|
清香
「ノートに向き合って、
冷静に『不安』の対象を見つめて、
『不安の言語化』をするんですね」 |
|
光一
「『今日、こういう事があって不安だ』
『明日、こういう不安を抱えている』
って日記につづっていくのだね。これ、頭を使うよー」 |
|
鳴島
「そうすると、どういう効果があるんですか?」 |
|
光一
「翌日・翌々日などに見返してみる。
そうすると、
意外とその『不安』が大したものでなかった。
そんな事が意外に多く見つけられる」 |
|
清香
「つまり、『不安』が解消できる?」 |
|
光一
「漠然と不安を抱えている時と異なり、
冷静に向き合える時間が出来る事。
また、日々の記録がつけられた事で、
それらに向き合って、
『ストレスコーピング』が出来るのだね」 |
|
鳴島
「なるほど」 |
|
光一
「ちなみに、仕事が終わって自宅に戻ると、
多くの人は、疲れて……だらーっとしてしまうと思う」 |
|
鳴島
「確かに…………」 |
|
光一
「なので仕事帰りに、ファミレスやカフェなど、
そういう所に定期的に寄ってみてはどうか?」 |
|
鳴島
「何故ですかぁ?」 |
|
光一
「ああいう所はまず、テーブルが大きいね。
ノートを広げて、一人黙々と日記を書けるよね?」 |
|
清香
「でも、周囲に他の人もいますよね?」 |
|
光一
「だからこそだ。それがいい」 |
|
鳴島
「どうしてですぅ?」 |
|
光一
「職場と自宅の往復を繰り返していると、
自宅は休む場所……ダラーっとしてしまう。
周囲に人がいると、適度な緊張感があるだろ?」 |
|
清香
「それはそうですね。
ファミレスのテーブルで突っ伏して寝てたり、
横にはならないですね」 |
|
光一
「だからこそ、冷静にノートに向き合って、
その日の出来事を記録できる。
『不安』を『漠然』としたものから、
『明確な形』のものに出来るわけだ。
最初は『怒り』『不満』の文章ばかりかもしれないね。
でも、それで良い。むしろ、良い。
後で読み返すと、色々冷静に分析できるはずだ」 |
|
鳴島
「あ、なるほど。
それは一理あるかもですねぇ」 |
|
光一
「そうして『言語化日記』をつけている内に、
『不安』をどうやって『形』にするか?
どうやって『漠然としたもの』を『明確』に出来るか?
『書式(テンプレート)』を自分で作れるようになる」 |
|
清香
「今日の不安は、コレだ、今日はアレだ……と?」 |
|
光一
「そう。そうすると、仕事その他の時間でも、
自分が抱えている『不安』をその場で、
段々と心の中で『言語化』出来るようになる。
そうすると、それに対する対処、
心構えが出来るようになる」 |
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鳴島
「つまり、常に物事を明確化出来るようになっていくので、
ストレスの度合いが低下していくわけですね?」 |
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光一
「そう。だからこそ、
『言語化日記』をつけて欲しいわけだ。
大事な事は結局…………
『自分の気持ちを出せる場所』
これを作るという事だね」 |
|
清香
「と、これが以前の『言語化』に対する、
補足……というか、具体的な話ですね?」 |
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光一
「そう言う事。
今日はその辺りで、
なんとか頑張っていこう……という話」 |
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鳴島
「はい、分かりましたー♪」 |
|
光一
「というわけで、
『言語化日記』、ぜひつけていってみよう」 |
|
鳴島
「はーい♪」 |