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光一
「……………………」 |
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鳴島
「マスター、
32歳の、そう……32歳の誕生日、
おめでとうございますぅ!」 |
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清香
「おめでとうございます」 |
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光一
「32歳を強調する必要性はあったのかね?
私はなりたくて32歳になったわけではないよ?」 |
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鳴島
「今年も悪あがきしていましたもんね?」 |
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光一
「悪あがきではない。
10進数では32歳だが、
16進数では私は20歳になるんだ!」 |
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清香
「そんな事、お役所で言ったり、
書類に記載しても通用しないかと」 |
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光一
「だから『お役所仕事』というんだ」 |
|
鳴島
「そこはお役所悪くないですよぉ」 |
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清香
「で、今日は何の話をされますか?」 |
|
光一
「お役所仕事……と絡むけれども、
『自立支援医療』について話したいね。
これ、知っていると知らないとでは、
精神疾患治療の際、負担が大きく変わるから。
絶対に知って、利用してほしい制度」 |
|
鳴島
「『自立支援医療』?」 |
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光一
「日本ってさ……色々な権利があったり、
あるいは人を保護する法律・制度があるんだけど、
ほとんどは『申請主義』なんだよね」 |
|
清香
「と言いますと?」 |
|
光一
「例えば『生活保護』にしてもそうだけど……
役所に申請しないと保護が受けられない。
高齢者の様々なケアにしてもそう。
疾病や失業その他に際してもそう。
『申請しない人は、保護が必要ない』
として、切り捨てられる社会なんだね」 |
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鳴島
「あー、そういう意味ですかぁ」 |
|
清香
「自分達を守ってくれる法律・制度があるのに、
それをほとんどの人は知らないですよね」 |
|
光一
「実際、積極的に知らせようともしないよ。
まあ、国や地方公共団体としては、
『税金とかで金は搾りとりたい』けど、
『税金で国民のケアは出来るだけしたくない』
って、社会保障費削減の意図が強いからじゃない」 |
|
鳴島
「あー、それはそうかもですねぇ。
『〜支援制度』とかそういうのって、
あんまり周知されないですよねぇ」 |
|
光一
「で、その意味においては、
『精神疾患』の患者は、まさに
『申請主義』で保護を受けられない、
そういうケースが多いので、この話をしておきたい」 |
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清香
「で、今回の話はどういう話になりますか?」 |
|
光一
「まず、『精神疾患』の治療を受けている人って、
大体は以下の点に該当するんじゃないかな?」 |
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鳴島
「該当する点?」 |
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光一
「例えば…………精神疾患の人達は、
『1.収入が無い、または極端に少ない』」 |
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清香
「あ、それはそうですよね」 |
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鳴島
「マスターみたいに休職していたり、
他には失職したり…………
あるいは非正規労働でどうにか生きてるって人、
多いはずですよねぇ」 |
|
光一
「それは容易に想像がつくよね?
精神疾患のために働けない状態。
あるいは連続して勤務できない状態。
そういう人が多いから、
収入が少ない人が多いはずなんだ。
私だって貯金を取り崩して生活しているし」 |
|
鳴島
「ですよねぇ…………
で、【1】とした事は、他にも?」 |
|
光一
「『2.通院・治療費が膨大な額になる』」 |
|
鳴島
「あ……言われてみれば、
それも当てはまりますよね。
医者に行くのはタダじゃないですからねぇ」 |
|
清香
「薬を貰わなくてはいけない。
診察を受けなくてはいけない……
他にもグループ療法やリハビリなど、
色々治療を受けますもんね」 |
|
光一
「例えば私みたいに、週4回のグループ療法を受けると、
通常は1週間6000〜7000円程度。
隔週での診察・投薬で3000円程度。
1ヶ月当たり3〜4万円はかかるはずなんだ」 |
|
鳴島
「収入が減っているのに、
毎月3〜4万円も治療費がかかるなんて……」 |
|
清香
「それも大変ですよね。
負担しきれなくて、治療できないとか……
そういう事も起きそうですよね」 |
|
光一
「休職状態じゃなく、普通に働きながらだって、
週2回とか通っていれば、毎月1万円以上は、
精神疾患の治療のみで支出があるよね?
これ、かなり苦しいと思うんだ」 |
|
鳴島
「収入が減りがちなのに、
治療費が膨大になるって…………」 |
|
光一
「そんなわけで日本は『申請主義』と言うのさ。
つまり、こうして『精神疾患』に苦しんでいて、
『治療費』で二重に苦しんでいるのに、
基本的にはそのまま放置でしょ?」 |
|
鳴島
「あ……確かに」 |
|
清香
「言い方を変えれば、申請さえすれば、
医療費の補助を受けられるって事ですか?」 |
|
光一
「補助……というか減免措置が受けられる」 |
|
鳴島
「減免?」 |
|
光一
「例えば私はそうではないけど、
『生活保護費受給者』は基本的には
医療費は無償になる。
どうしてかは分かるよね?」 |
|
鳴島
「それは収入が著しく低いからですよね?」 |
|
光一
「そうだね。
憲法にはその点の根拠について記載がある。
【日本国憲法第25条】
『すべて国民は、健康で文化的な
最低限度の生活を営む権利を有する』
『2.国は、すべての生活部門について、
社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進
に努めなければならない』
だから、そうなっているんだね。
経済的な困窮で医療を受けられない。
それはあってはならないわけだね」 |
|
清香
「『健康で文化的な最低限度の生活』とあるので、
現在で言えば……誰でも普通はする生活環境、
携帯・パソコン・ネットが利用できる。テレビが見れる。
これは最低限のラインと考えられるので、
その辺りの生活までは保障されるわけですよね。
第一、そうでないと就職活動も、
あるいは職業訓練も出来ませんよね?」 |
|
鳴島
「『生活保護受給者』には食料・衣類だけ与えろーとか、
『支給費』をもっと減額しろーって言うのは、
そういう点からおかしいわけですよね」 |
|
光一
「その通り。そして、『生活保護費受給者』の生活は、
『健康で文化的な最低限度の生活』の基準なので、
それをもっと『低位にしろ』と言う事は、
跳ね返って…………
『最低賃金の抑制・切り下げ』議論に繋がる。
そうすると、どんどん生活水準を下げていくスパイラルになる。
そういう意味で弱者をいじめるような今の論調、
おかしいと思うのだよね」 |
|
清香
「不正受給なんて、全体の0.25パーセントとか
その程度の数ですもんね」 |
|
光一
「この世のあらゆる制度に、
完全無欠なものなんて無いからね。
全体として有意義な制度なのに、その極少部分を見て、
『制度全体を変えろ!』とか…………
『生活保護費受給者は悪い』って考える事は、
自分達の首を絞めかねないと…………
気づけない人も多いんだよね」 |
|
鳴島
「ですねぇ…………」 |
|
光一
「だからこそ、収入の低い人にとって、
まさにその事で『病院に行けない』のは、
あってはならないことなんだ。
だから、医療費に関しては様々な助成制度がある」 |
|
鳴島
「と、話が少し逸れ始めましたが、
精神疾患の治療に際して、
『自立支援医療』ってどういうものです?」 |
|
光一
「簡潔に言ってしまえば、
【A】一ヶ月あたりの治療費の上限設定
【B】治療費自体の減免(3割負担を1割負担に)
この2点になるね」 |
|
清香
「その2点と今までの話で、
観点として挙げるなら…………
【あ】精神疾患患者は低収入になりやすい
【い】通院・治療費が膨大になりやすい
【う】なので治療費の上限を設ける
…………って事ですね」 |
|
光一
「そう言う事」 |
|
鳴島
「具体的にはどのくらいになるんですかぁ?」 |
|
光一
「これはこの後、
『自立支援医療』の申請方法について話すけど、
収入(課税状況)によっても変わるんだ。
私の場合で具体例をあげようか」 |
|
鳴島
「はいー」 |
|
光一
「私の場合、
1回あたりの治療費・投薬費用は、
3割負担ではなく、1割負担。
1ヶ月当たりの自己負担上限額は1万円。
それを越えた場合は無償になる」 |
|
清香
「先ほどのマスターの話と合わせると、
かなりの事ですよね?」 |
|
鳴島
「マスターが普通に精神疾患の治療のため、
週4回のグループ療法と、
隔週のドクター診察・投薬で…………
通常なら3〜4万円って言ってましたっけ?」 |
|
清香
「それが1万円までで抑えられるなら、
2〜3万円は助かりますよね?」 |
|
光一
「まあ、そもそも1回あたりの費用が1割負担だ。
だから月当たりの自己負担は1万円行かなくて済むね」 |
|
清香
「だとすると、利用しない手はないですよね?」 |
|
光一
「そう。精神疾患の人を支援する制度がある。
利用しない方がもったいないよ。
制度は利用するためにあるんだから。
ちなみに私は最初知らなかったんだ…………」 |
|
鳴島
「えっ!?」 |
|
光一
「まだ休職する前、仕事していた時。週1回のグループ療法と、
月1回のドクター診察・投薬の頃だけどね?
その頃は月当たり……8000円位かかってたね」 |
|
鳴島
「大きい額ですよねぇ…………」 |
|
光一
「ネット仲間の月村さんが教えてくれたんだよ。
それまで、そんな制度の存在自体知らなかった」 |
|
清香
「あー、だからこそ『申請主義』。
知らない人は、放置される……ですね」 |
|
光一
「今でも3時間弱のグループ療法で
私は610円払っているんだけど…………
同じように来ている人が1830円払っていて、
この人は大変じゃないのかなあ……
と、そう思う事もよくあるよ」 |
|
鳴島
「うーん……確かにそうですねぇ」 |
|
光一
「ちなみに、厚生労働省のホームページで、
『自立支援医療』の手続き・内容は見る事が出来る。
参照してほしい。
【厚生労働省:福祉・介護:自立支援医療】
【自立支援医療(精神通院医療)】(pdf)」 |
|
清香
「これによると…………
収入の状況によって、
月当たりの自己負担上限額が、
0円〜2万円まであるんですね。
マスターは中間所得層2に該当ですかね?
月当たり1万円が上限ですから」 |
|
光一
「そういう事になるね。
で、自己負担額は1割になる」 |
|
鳴島
「内容はそういうものだとして…………
手続きはどうしたらいいんですかね?」 |
|
光一
「各地方公共団体で異なる部分も若干あるかな。
基本的には同じなんだけど。
自分が住んでいる市町村のホームページから、
『自立支援医療』について探すか、
直接役所に行って、確認すると良いね」 |
|
清香
「で、全体公約数的には…………
どういう手続きになりますか?」 |
|
光一
「1.『自立支援医療費(精神通院)支給認定申請書』
を手に入れる事。市町村の役所で手に入る」 |
|
鳴島
「はい。……役所の大体どこにありますかね?」 |
|
光一
「基本的には【福祉課】とかだね。
【障害福祉課】とか……保険関係の課に行って、
聞いてみればすぐに分かるよ」 |
|
清香
「それで次にどうしますか?」 |
|
光一
「『自立支援医療費(精神通院)支給認定申請書』には、
受診者氏名……つまり自分の名前、
性別・生年月日、住所、電話番号、
それと【保険証】の記号・番号を記載、
保険の種類……健保とか国保とかも記載するね。
後は……………………」 |
|
鳴島
「あとは?」 |
|
光一
「その書類の真中から下段にかけて、
【受診を希望する指定自立支援医療機関】
ってあるので…………
自分が受診する精神科・心療内科の名前、
その所在地(市町村)、電話番号を記載する。
後は、利用する薬局も同様に記載する」 |
|
清香
「どこの医療機関でも利用できるわけじゃないんですか?」 |
|
光一
「そうだよ。この書類に、
『自分が利用する医療機関・薬局を指定』する。
逆に言うと、
そこでしか『自立支援医療』は受けられない。
指定した以外の医療機関を受診した時は、
当然3割負担で、上限額設定も無いからね」 |
|
鳴島
「なるほど」 |
|
光一
「これは精神疾患に関わる医療機関なので、
それ以外の医療機関は指定できない。
例えばおそらく……歯医者とかは含まれないね」 |
|
清香
「つまり、今通っているクリニック・薬局か、
あるいはこれから通うつもりの医療機関、
それを記載する事になるわけですね」 |
|
光一
「そう。まず、書類をそこまで書くのが第一段階。
あ、ちなみに受診する医療機関を変更した時は、
役所に変更の申請をする必要があるからね」 |
|
鳴島
「次はどうしますかぁ?」 |
|
光一
「次は…………
2.医師の診断書を手に入れる。
これは、通院しているクリニックで申請する」 |
|
清香
「以上ですかね?」 |
|
光一
「ちなみにこれらの手続き、時間がかかるので、
一応注意しておいてね。
医師の診断書は医療機関によっては、
2週間近くかかる場合もあるしね」 |
|
鳴島
「後はそうすると…………
市町村の役所の障害福祉課などに、
『自立支援医療費(精神通院)支給認定申請書』
『医師の診断書』
を持っていけばいいんですかね?」 |
|
光一
「後は、収入によって、
月当たりの自己負担上限額が変わると言ったね?
というわけで、まだ必要な書類がある」 |
|
清香
「というと?」 |
|
光一
「3.世帯の所得が確認できる資料
これも必要になるね」 |
|
鳴島
「あれ? でも役所で申請するんだから、
役所の方で調べてくれれば良いんじゃないですかぁ?」 |
|
光一
「当該市町村に引っ越したばかりだと、
課税・収入データを把握していない事があるから、
その時は【課税証明書】が必要になるね」 |
|
鳴島
「そうでない場合は?
市町村がデータを把握している場合はどうです?」 |
|
光一
「前年度の1月までに、
当該市町村に住民票を移していれば、
【市町村民税等調査同意書】を出されるので、
それにOKのサインをすれば良い事になる」 |
|
清香
「つまり、役所側で課税状況を調べていいか、
同意書を出されるってことですね」 |
|
光一
「うん。他には、
4.健康保険証(写し)
……せいぜい他には印鑑を持っていくくらいだね。
これで、必要書類は全て出した事になる」 |
|
鳴島
「なるほど!!
そうしたらすぐに『自立支援医療』を受けられる?」 |
|
光一
「そうとは限らない。申請すると、
【自立支援医療 自己負担上限額管理票】
って表に書かれた
【自立支援受給者証】って手帳
が手元に届くんだけど…………
大体2ヶ月くらいかかるんだよ」 |
|
鳴島
「あ……意外とかかるんですね。
その間はどうするんですかぁ?」 |
|
光一
「『自立支援医療費(精神通院)支給認定申請書』
これの控えを貰えるから、
それを見せれば1割で受診出来たり……
あるいは【自立支援受給者証】が届いたら、
申請後、手帳交付までの期間の診療代について、
払い戻してもらえたり…………
これは、受診している医療機関で確認だね」 |
|
清香
「ちなみに、有効期間はどのくらいですか?」 |
|
光一
「1年間だね。なので、
【自立支援受給者証】の有効期限が切れないよう、
9ヶ月後……切れる3ヶ月前には、
更新手続きをする必要があるね」 |
|
鳴島
「更新には、また診断書とか必要ですか?」 |
|
光一
「いや、更新は役所内で簡単に終わる。
『自立支援医療費(精神通院)支給認定申請書』
これをまた書けばいい。
その際、【新規】ではなく【再認定】になるので、
医師の診断書は必要ない。
すると、また2ヶ月くらいで
新しい【自立支援受給者証】が手元に届く」 |
|
清香
「2年目はそうやって更新として、
3年目以降もそうなんですか?」 |
|
光一
「いや、【自立支援受給者証】の更新は1回きり。
3回目はまた新規申請だね。診断書などを用意して、
最初申請した時のようにする必要があるね」 |
|
鳴島
「なるほど…………
そんな制度があったんですねぇ」 |
|
光一
「そうしたら、指定した医療機関・薬局に行く際、
その【自立支援受給者証】を持っていくと、
1割負担・月上限額設定有りで受診できる」 |
|
清香
「で、今日の話をもう一度振り返ると……」 |
|
光一
「1.精神疾患治療をしている人について。
2.往々にして収入が不安定。
3.通院・投薬費が膨大になりやすい。
4.しかもそれが長期間になりがち。
5.『自立支援医療』を受ける事が出来る。
6.【自立支援受給者証】を役所での手続きで交付。
7.1年で更新が必要。
8.指定した医療機関・薬局は1割負担で受診できる。
9.自己負担の月当たり上限額が設定される。
10.よって、治療費を大幅に圧縮できる。
なので、精神科・心療内科に通っている人は、
そういう制度があるので、ぜひ利用してもらいたいね」 |
|
鳴島
「そうですねぇ」 |
|
光一
「さて……今日が『精神疾患シリーズ』14回目だったけど、
次回更新からは通常営業に戻そうと思ってる」 |
|
清香
「そうなんですか」 |
|
光一
「大体書きたい事も書いたしね。
できれば年内に、これらのテキスト14本の他、
いくつかの話を別に書いて、
『精神疾患関係』のコンテンツを
サイト内に立ちあげるつもり。
その時間も作りたいので、
この日記は通常営業に戻す事にするよ」 |
|
清香
「ちなみに、今日以前の13回については、
うつ病:『(その1、その2、その3)』
不安障害:『(その1)(その2)(その3)(その4)』
依存症:『(その1)(その2)』、
強迫性障害:『(その1)』、
栄養療法:『(その1)(その2)』
精神疾患:『(その1)』でした」 |
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鳴島
「はーい♪ 通常営業、7月以来ですねぇ」 |
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光一
「そういえば、綾香君のイラストを、
ももこさんに貰っているんだよねえ。
今日から、TOPイラストにさせてもらっている」 |
『ナウシカな鳴島綾香イラスト』
(清水ももこ様より)
|
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光一
「ナウシカ風の綾香君のイラストです!!
巨乳、素敵、素敵、巨乳!!」 |
|
鳴島
「セクハラですよっ!!」 |
|
清香
「私なんて……セクハラされるだけの……
胸すらないけどね」 |
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鳴島
「うわっ!?
清香がやさぐれてる!?」 |